53.事実確認5
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「おはよー」
八月二十八日。もう時間がないにも関わらず側巻さんはすごく余裕があるとでも言うふうにのんびりしている。いや、そんなふうに見えるだけで内心ものすごく焦っていると思う。何故か?結局、金属探知機で探しても爆弾は見つからなかったからだ。
爆弾が見つからない。その原因はなにか。考えてみて側巻さんが言ったのは、爆弾自体金属探知機に反応しないんじゃないか、という仮説である。
「何見てるんですか?」
...あと、焦っていると思う理由としてもう一つあげられるのは、声をかけても返事があっただけで、側巻さんがこっちを向くことはなかったからだ。桐間さんも杉近さんも、例外ではない。
「爆弾の事、もっとちゃんと調べてみようと思ったんだ。」
時刻は午後二時。何故この時間に来たかといえば、長引いて昼ご飯のときに帰れず、りんに怪しまれるのを避けたかったからだ。
デスクトップパソコンが三つあって、三人の隣にはそれぞれメモ帳が置いてあった。
『時限爆弾の作り方』
側巻さんのそのメモの下には、目覚ましがどうとか色々書いてある。...もし、仮にだが側巻さんたちが爆破予告の容疑者になったとして、警察だったりがこれを見たらなんというだろうか。まあ、流石にないか。
いつもなら、ここで空いている席に迷わず座って、それからすることに迷うのだ。自分も爆弾について調べるか、素直にするべきことを聞くか。多分今聞いたら、前者のことをするよう言われるだろう。
...ただ今回は違う。珍しく、僕は僕でやるべきことを持ってきたのだから。あれから一週間経ってやっとここに来たのは、杉近さんがやっと事務所に来るようになったからである。
迷わず空いている席に座るというのはいつもと同じだった。しかし、それからの行動、発言はこの場の空気を大きく覆すものだった。
「そうなんですか...一つ、話したいことがあるんです。」
この前も、全く同じような表現を使った気がする。実際、話したいことではなくて話さなければならないことなのかもしれない。ただ、これを話したところで何かが解決するのかと言ったら、それはわからなかった。
「何?」
桐間さんが言ったのと同時に、杉近さんと側巻さんがこっちを向いた。桐間さんが発言したにも関わらず、桐間さんが頭を動かしたのは一番遅かった。
「...杉近さん、もしかしてインテリトスグループの生活の手助けしてるんじゃないですか?」
自分でインテリトスグループという表現はやめたほうが良いと思いつつ使ってしまったのは、そうしないと伝わらないと思ったからだ。だって、あの人達の生活なんて言って伝わるだろうか?いや、カイと生活していた人たちといえば...まあいい。
「...どういうことですか?」
杉近さんがこういう前に、桐間さんが「え...?」と小さな声で言った気がする。杉近さんは笑顔ではなく、不機嫌になっているわけでもなく、ただただ眉間にしわを寄せて不思議に思っているような表情だった。座ったまま、パソコンのキーボードを打つ手を止めて僕に尋ねる。
「まず一つ目。杉近さんが重量運搬船という言葉を出したときに、違和感を感じたんです。」
正確に言えば言葉を出したより少しあとだろう。ただ、一ヶ月分の食料と言われて不思議に思ったのだから、この発言は間違ってはいないだろう。
重量運搬船というのは千トンというレベルの物を運ぶ品である。この島で食事をする人。多くてもここにいる三人、そして僕たち四人、カイと一緒に過ごした人八人。...ここには、秀和さんも含む。だから全部で十五人になる。流石に、十五人で一ヶ月で千トンも行くわけがないのだ。
「にも関わらずなぜ重量物運搬船を用いるのか。僕は過去にそれくらいの重さのものを運んでいたんじゃないかと思いました。それなら...なにか建造物のための材料とかですかね?」
「待ってください、だからって何でインテリトスと協力していたことになるんですか?」
なんとなくだが、僕には杉近さんが船を扱っているように感じた。だから、昔もそうだとすれば、杉近さんが『あの場所』を創るよう船に言ったんじゃないか。そう思った。
...あと、船という存在は、秀和さんを彷彿とさせたのだ。
「それで、二つ目です。側巻さんからの報告書です。」
少し舌足らずな文章になってしまったがまあいい。
「側巻さん、報告書を杉近さんにわたしに行く時間って、だいたい決まってるんじゃないですか?」
爆破予告のあの報告書を拾ってしまったあのときはまだ午前だった。
「ああ、まあ...だいたい昼過ぎくらいじゃない...?」
やっぱり。あの時も昼過ぎに報告書をホテルに置きに行ったのなら、そこから杉近さんがそれを見るまで。一晩間があったことになる。さて、その妙な間に、何があったのだろう?
「...あのときは一ヶ月の初め。もしかして、夜中に杉近さんは僕たちにバレないようインテリトスに食料を置きに行って、報告書を見る暇がなかったんじゃないですか?」
結構、理にかなっていると思う。この日に杉近さんが食料をわたしに行かなければ、僕が報告書を見てしまうこともなく、今この状況にもなっていなかったかもしれない。一種の、神のいたずらというやつだろうか。
杉近さんはすっかり眉間のしわが解けていた。喪失感なのかなんなのかわからないが、少しうつむいて、それでも体だけはこっちを向いていた。
「あと三つ目。...一週間前、杉近さんを見ました。」
下に行った目線が突然こっちに飛んでくる。一週間前は爆弾探しをまだ行っていたと思う。時間が帰って、昼ご飯を食べにホテルに戻ろうとしたときだった。
...杉近さんが、はしごを使って海から上がってきたのだった。
やっぱり杉近さん...。




