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いつわり郷  作者: 融点
食べ物
49/65

49.見回り

お読みいただきありがとうございます。

 そうだったんだ...。

 側巻さんたちが追っていたのは実際カイと一緒にいた人物についてだ。その人達が実際かつての被害者であるなら、追う必要もない気もしてきてしまう。

 ...ていうか、結局カイを下に引きずり下ろしたのは誰だったんだ?今までカイが話したことから察するに秀和さんを連れ戻す(?)ために、海の中に引きずりこまれたんだと思う。なぜか。そういえば秀和さんのスマホは地上に返された。だから壊れずにすんだ。もしかして、後で電話できるよう、安全確認ができるよう、自然に帰ってこれるようにそうしたんじゃないかと思うからだ。実際、それは秀和さんのスマホだったので、それがなくなったところで僕たちのスマホはあったので大丈夫だったが。あれ...?

 じゃあ、なんで秀和さんから、部屋の写真が送られてきたんだ...?そもそも、スマホがないならメッセージ事態秀和さんに届くわけがない。なんで今まで気づかなかったんだろう。とりあえずスマホはホテルの部屋においてあるけど...。まあとりあえずいいか。

 とにかく、カイを引きずり込んだのはもしかしたら秀和さんの顔をあまり知らない人なのかもしれない。...いや、そんなこともないか。ただ一回カイがその人を見て、返したら、怪しまれるかもしれないと思ったのだろう。

「ただ軟、俺からも聞きたいことがあるんだ。軟と一緒にいたあの人達、誰なんだ?」

 ...いつか聞かれると思っていた。やっぱり話さなければならないか。インテリトスという集団を追っているということを。ただ、インテリトスとカイと一緒にいた人が同じかといえば、確信は持てない。

「島を、守ってる人たちなんだよ。」

 なぜ、僕がそんな人達と一緒にいるか。それは些細なことだった。しかし、やっぱり今でも疑問に思うのは、何で僕が一緒に活動することになったかだ。もしかしたらその疑問はずっと解けないままかもしれない。

 ―自然破壊という言葉を出すと、なぜだか、いや当たり前の反応か。カイは結構驚いていたように見えた。

 

 僕は一通りの会話が終わると再び部屋に戻った。そろそろ、りんの宿題も終わる頃だろうか。

 あれ、廊下の向こう側に杉近さんが...。僕を認識するとそのまま近づいてきて言った。

「すみません、ちょっと部屋の様子見させていただいてもよろしいですか...?」

 どうしたのだろう?いつもそんなことないのに。

「いいですよ」

 杉近さんはそのまま鳥澤たちのいる部屋へ向かう。目線で何となく分かった。

 こんこん、と鳥澤らのいる部屋のドアをノックする。特に返事はなかった。ノックをしたのが僕だとなんとなくわかったからだろう。

 返事がないので開けていいということだろう、と思ったので躊躇なくドアノブを手前に引くと、完全に背を向けて、ふたりともあぐらをかいていた。まだ終わってなかったのか...。ていうか、いくらホテルとはいえ警戒心がなさすぎるのではないだろうか。ノックの音だけで人が識別できるわけないのに...。いや、それなら僕も同類か。

「杉近さんがちょっと部屋、見せてほしいんだって」

 ちらりと僕は振り返ったが、そこには杉近さんはいなかった。杉近さんは僕の左側で待っていた。そりゃそうか。許可されていないのに見るのは...オーナーだし、あれか。うん。

「わかった...。」

 鳥澤が答えたが、やっぱり僕と同じように疑問をいだいているようだった。杉近さん、なにかあったのだろうか。

「杉近さん、大丈夫らしいです」

 そう左を向いて言うと、「ありがとうございます」と、僕の背後から回り込んで部屋の中に入っていった。

 特にものを物色することもなく、窓へ一直線で歩いていった。ただちらちらと金庫の方を見ていた気がする。窓を開けたと思うとだんだん暗くなってきた外を覗いてうんうんと頷いて...そのまま「ありがとうございます」と二回目だが今度は鳥澤らに言って、スタスタと部屋を出ていった...。

 まあ、いっか。

「レポート、終わった?」

 そう聞いてみたものの、流石に終わっているとは思えなかった。シンプルに、まだやっているのだから。

「絵、描いてるんだ」

 りんは答えた。さっきまでの機嫌が嘘みたいだ。レポート用紙を覗くと、ムーファースの事がびっしりとまとめられていて、空いたスペースに...何だろ、この絵。「これ、何?」とストレートに聞くと、こう返ってきた。

「タオルだよ。ほら、この会社って縫製工場でしょ?」

 と少し饒舌になっていたものの...いや、タオルってわかるか...?

 まあいいか。否定するほどでもないし。長方形がちょっと歪んだだけの単純な絵だったけど、勘の良い人ならわかるか。

 するとどこからか鳥澤が色鉛筆を持ってきた。そこから茶色を取り出したかと思うとりんに渡した。がしがしともさらさらとも言えないような塗り方だったものの、これでレポート課題が終わるならそれでいいか。

夏なのでまだちょっと明るいんでしょうね。

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