46.事実確認3
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「飯尾さん、ごめんなさい。」
何のために遺書を隠したのか、と聞く前に、俺は謝罪をした。理由は単純だった。
光の届かない場所。それは確実に倉庫を表していた。なぜだか倉庫には電気がない。それは飯尾さんの仕業だったのだ。
...そして、俺は倉庫で明訓さんの遺書を見つけた。紛れもなく、その内容をこの目で見てしまったのだ。謝罪した原因はこれだろうか。俺は内容を見て愕然としたのだ。
『俊彰(飯尾の下の名前)へ
私は、この島の自然破壊運動の犯人です。』
自然破壊運動。それを聞いて、俺は思い出した。ミュウさんが言っていた。
―「大体八歳...の頃だったかな。いや、九歳かな。まあどっちでもいいけど、その頃はまだ人が栄えてたんだ。ただある時、誰がやったかはわかってないんだけど、環境を破壊するテロが始まった。」
これのことだろうか...もしそうだとすると、飯尾さんの父である明訓さんが、同じ場所で暮らしたはずの秋元さんの居場所を奪ったことになる。それだけじゃない。この島でかつて過ごしていた人達。その人達全員の住居、人間関係、すべてを奪ったことになるのだ。その罪は重いだろう。
そしてその事実を、俺は掘り起こしてしまったのだ。
『残念ですが私には財産は残っていません。
ただ一つ、この場所の上に、青く澄んだ綺麗な海を残してあります。背中には壁が立っています。あの海は、私が唯一残したこの島の遺産なのです。
もちろん、このことの罪が重いことはわかっています。ただ、私がこんなことをした理由を聞かれても、答えるすべはありません。
やがてあなたたちを追う者がこの島に来るかもしれません。
その時は逃げれば良いのです。あなた達に罪はありません。
そして、一度決めて信念を、途中で変えても良いのです。
私が言えることは、それだけです。』
「これを見て思った。もう自分たちがこの島を追われるのも時間の問題なんだって。」
結婚してはいけない。それはもしかしたら子孫が生まれることを恐れたからなのではないだろうか。そう思った。
「でもなんでだろうな。テロなんてする意味あったのか?」
何となく頷く。ただ、もう明訓さんはここにはいない。真相を本人から聞くことはできない。
「ただ俺からも一個質問いいか?」
悲しみという感情を恐れたのか、単に疑問を持ったのか、俺にはわからなかった。でもその後の『質問』がこの事に関するものだったため、後者であることがわかった。
「何で、遺言の謎を解こうとしたんだ?」
...これはこの後、俺が話そうとしていたことだった。俺は...
「俺の目的は真実を知ることじゃなくて、秀和さんを捜すことだったんです。」
「秀和さん『という』」とも言わずにただ名前を出した、ということはすなわち相手が秀和さんを知っていることを意味していた。それが飯尾さんには伝わったようだった。少しびっくりしたような顔をして、顔をしかめて、それでも俺の返答を待っているようだ。
「まず不思議に思ったのは、俺の部屋だけほかより妙に狭かったことです。」
一番最初の違和感だった。確かに秋元さんの部屋の半分くらいしかなかったのだ。
「最初は、急に一緒に生活することになったから仕方なく余ってた部屋に入れてくれたのかなとか思ってました。でも、やっぱり違和感しかなかったんです。」
その違和感を確信に変えたものは、今回の遺言を解く過程にあった。
「さっき説明したように、出てきた言葉は『なしたたみ□した』です。この『□』に入るものがなにか、わからなかったんです。俺の名前を指すのなら、明訓さんは俺が来ることを最初から知っていたことになります。」
自然だろうと思ったのは、『なしたたみのした』だった。接続語を入れれば名詞と名詞がつながって自然な言葉になるだろう。
「もし『□』に入るのが『の』なら、六年目は十三日のズレがあったので...なにかを十三個前にやるっていう操作をするとnになるってことになります。」
考えられるのは二パターン、□はaか、何もなし(子音がないということなので一文字目はあいうえおのどれか)だった。ただ、子音がaはおかしかった。つまり何もなし。
「なので、『そこにいる人』の一文字目は『お』だったんです。」
そのことが分かったが、俺はその事実を受け止めたくなかった。理由はない。ただそれはすなわち、りんの知らないところに秀和の『いる場所』があったことになる。
「あの部屋の壁の向こう。そこに、秀和さんがいるのではないですか?」
...もちろん、初めから勘づいていたことだった。
しばらく、沈黙が続いた。
何となく分かってましたよね。




