40.日記九年目
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「どこ行くの...?」
突然外へ行こうとした俺を軟が止めた。でももう行くしかない。
「ちょっと。」
もうそう言うしかなく、理由を曖昧にしたまま俺はホテルの廊下を駆け抜けた。そのまま外に出て、あの場所へ...
俺は見ていた。俺が軟から連れ戻されたとき、確かに三人の人がいた。そしてドアがあって...
俺はそれを目の前にする。石でできているこの壁、軟はこの壁の中にあるある石を押し込みながらドアを閉じた...。ここだったか?
バクバクの鳴り響く心臓を抑え込みながら、ドアを開こうとした。確かに、開いた。
「え?何?」
そこには女性と男性が一人ずついた。ふたりとも椅子に座っている。俺は何も言うことなく、その場所へ向かう。椅子があって、それをどかせば...。
四角い形をした違和感のある床だ。ここも押し込みながら、軟はドア(というのかはわからないが)を閉めたのだ。これが、入口なのだ。これが、昨日まで過ごしていた場所へつながる入口なのだ。
ドアを開ける。高い。ここから飛び降りるのは少し勇気が必要だった。ただ、しっかり降りればけがなんてしないだろう。後ろの二人が止めにかかっている気がしている。もう行くしかない。俺は足をおろして、飛び降りたのだった。
俺がいた部屋にはカッコウはいなかった。トイレかどこかだろうか。昨日のことだ。流石に別の人が過ごしているということはないだろう。俺は静かに部屋を出て、ミュウさんの部屋へ行った。
コンコンコン。三回のノックをするとミュウさんは「はい」と言う。「は」が「い」より結構高かった。ドアを開けると急な来客に動揺を隠せない様子だった。
「え?え...?な、なんで...」
きっと突然俺がいなくなってここの人たちは混乱していたのだろう。俺はミュウさんの動揺など気にせず、「とりあえず入れてもらえませんか」と小声で言いながら部屋に押し入った。
特にミュウさんは迷惑という顔もしておらず(迷惑させていないとは言っていない、ただ迷惑そうでないというだけだ)、俺が帰ってきたことが特別嬉しいわけでもなさそうだった。それはそうだ、俺はここで生活していたと言っても一週間ちょっとだ。
「急にどうしたの...?」
「聞きたいことがあるんです。」
遺言にあった『祭り』についてだ。
...ミュウさんは、本当に祭りのことをしっかり知っているのだろうか?
今頃軟たちも混乱しているだろうに。




