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いつわり郷  作者: 融点
宿題と研究
39/65

39.同姓同名

お読みいただきありがとうございます。

 ドアの仕組みが二つは似ている。もしかしたら同じ人物がつくったものではないか。それは杉近さんなのではないか。

 結局推理はそれくらいのものでしかない。仕組みが似ていると言うだけだし、偶然かもしれない。何も解決しないまま僕はホテルに戻った。

 ホテルに戻り、部屋に戻る。二つの行動をして部屋に入ったとき、鳥澤ら三人がちょうど昼ご飯を食べに行こうとしていた。そういえば杉近さんも昼ご飯の準備をしに戻ったんだ。

 朝ご飯を食べた場所と同じところに行くが、何となく足も重い。それもそのはずで、多分杉近さんは機嫌が悪いのだ。いや、上からだがオーナーという立場だし、それが明らかに態度に出るということもないだろうが、今の状況を知っている、もっと言えばその場に居合わせた僕が目の前にいるのだから杉近さんにどう思われても仕方がない。

 そんな風に思いながらも、案外食べ物はすぐに喉を通り抜けていった。この日はパスタ、誰から見ても洋食ということは明らかである。

 食べている途中ずっと隣に杉近さんがいるわけではないので、ずっと気まずさを感じることもなかった。ただ入ってきたときはもちろん気まずかったし、出ていくときも同じような空気を感じると思う。ていうか、今更なのだが食べている途中も自分たち以外に誰もいないので意外と寂しいし空気が悪い。初めはどこか新鮮な感じもあったが慣れてしまうとそんなこともなかった。ただカイは昨日帰ってきて、この空気に戻るのには少しだが時間がかかるだろう。

 時間が経って、普通に食べて、普通に離して、普通に部屋に戻ってきたのだった。

 さっき戻ってきたときはすぐに出ていってしまったので気づかなかったが、部屋には白い紙が床に雑においてあった。あれ?これって...

「軟、りんの宿題が終わってないんだ。手伝え」

 やっぱり。僕たちは夏休みの宿題と称して『外国の企業』に関してレポートを書かなければいけないのだ。外国の企業...僕がまったく知らないものなのに大雑把なテーマ過ぎないだろうか。

 まあとにかく僕は終わっている。暇(ではないか?)だし手伝おうか。

 もうその企業は決まっているようだ。『Mooofaaace』、珍しい名前だな(初めて聞いた名前なら何でもそう思うのか?)。結構書くことは決まっているみたいだし、手伝うって言っても何を手伝えば...

「あそうだ、軟パソコン持ってただろ、あれ借りれないか?」

 カイって『借りれないか』みたいに命令形以外でお願いできるんだ...。いや、そんなことはどうでもいい。突然学校の先生から授業中名前を呼ばれたときのような緊張感とともに、僕はカバンへ向かう。ノートパソコンをりんに差し出すと受け取って開く。電源がつくのに少し時間がかかった。

 いや、パスワード入れていないんだから待てとパソコンを奪い取って、誰にも見られていない部屋の隅でパスワードを打つ。パスワードは十一桁の数字で、意外と長い。

 「はい」と言って改めて渡すとりんはどこか慣れたような手つきで検索エンジンを開く。このパソコンは画面がタッチできるからスマホと感覚が似ているんだろうな。

 『ムーファース』と検索ボックスに入れて検索結果を待つ、と言ってもとてつもなく短い時間だった。一番上に出てきたサイトを開く、出てきたのは背景が赤い英文のサイトだった(中国の会社ではないのだろうか。いや、外国の人向けに作られたサイトなのだろう)。そしてすぐに新しいタブを開いた。『翻訳』と検索して一番上に出てきた翻訳サイトを開く。するとさっきのムーファースのタブを開いて、一番最初の文字をキーボードの手前のマウス操作ができるところで押さえつけて、びーっと下の方にやって端から端までコピーした。翻訳サイトに貼り付け、翻訳文が出てきた。多分文字数が多すぎて、全部はコピーできていないだろうが。出てきた翻訳文がこうだ。

『最先端の、世界へ羽ばたく縫製工場へ モーファース

 インフラから始まり世界には様々な技術が溢れかえっている。しかしどうだろうか?世の中に必要とされていないものが本当に一つもないと言えるのか?私達を必要としていない人がいるかも知れない。でも変えて見せる。織物の境地へ全員を連れて行く。』

 ムーファースがモーファースになっているが仕方がない。ページの一番初めに一番上の行のやつが書いてあって、その下にちょろちょろっと企業を象徴する文章が綴られている。どちらも文字は白色だ。

「何を書けば?」

 突然個性的な文面が出てきてぽかーんとしていたりんだったが口を開く(ぽかーんとしていれば口を開いているか)。

「この下にも色々あるんじゃない?」

 と鳥澤がページの右側の棒らしき灰色のものを使ってスクロールする。会社の概要、歴史、過去の実績など、様々な情報が載せられていた。トップページしか見ていないがこれだけ情報があれば書くことには困らないだろう。

 一番下には『外国との関わり』という見出しで外国企業との協力関係だったりが記されている。そしてそこに、日本が出てきているのだ。

『私達は外国の企業にも興味を持ち、日々グローバルな視点で物事を展開しています。以下は、私達が過去の関わってきた企業の一覧です。

 延享大学研究チーム 〇〇株式会社 〇〇中学校の皆さん ・・・』

 それ以外にもずーっと映画のスクロールみたいに名前が連なっていた。そしてそれぞれがリンクになっているらしいので、鳥澤はとりあえず最初の『延享大学研究チーム』のところをクリックした。

 すると別のページにとんで、今度は『延享大学 月影研究チーム』というタイトルが出てきた。ちょっと古びた、背景が薄い緑のスマホが普及するちょっと前くらいのそこまでデザイン性があるわけではない...ページだ。多分そこまでいろいろな人に見られることを目的としているわけではないのだろうという先入観が生まれてしまう。

「じゃあ関わりがある企業の一例としてこの研究チームのこと書こうよ」

 カイがどこからかメモを引っ張り出してきて鳥澤の言ったことをメモした。意外とすらすら骨組みが決まってきた。

 僕は何となくそのページをスクロールした。すると...ん?

 思わず唖然としてしまった。だってそこには...

『研究員一覧

 チームリーダー 杉近守』

 同姓同名...?なのか...?

お久しぶりです。

テストが終わって開放感でいっぱいです。

って、杉近さん謎が多い...

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