31.仲間
お読みいただきありがとうございます。
「...でもやっぱり、同じ場所にいて気づかないなんてことないんだと思うんだよなあ...」
起きたばかりの軟は言う。確かに同じところにいるかも知れないと連呼して希望を持っていたものの、やっぱりそれは疑問に感じる。
「それにふたりとも、そこに住んでる人に会った、って言ってるしね」
いや、秀和さんについては『人はいる』という風にあって直接言及されていたわけではないけど...自分で言っといて細かいところに目がついてしまうが、りんも軟も頷いてくれた。
軟も目が覚めきったのだろう。軟は布団の上で、左手の人差し指と中指の第二関節あたりを顎に当てながら何かを考え始めた。
今更思ったことだが、カイと秀和さんがいなくなってからほとんど布団を片付けていない。いや、何もしていないわけではなく、食事の時だったりは少し端のほうに寄せるようにしている。...だらしない、ほとんどの人に関しては、第一声がそれだろう。ただ僕を含めて今この部屋にいる三人は、その『ほとんどの人』に当てはまらないのだ。いや、こう思うのなら若干僕は当てはまっているのか...?ただ、いづれにしても『だらしない人』には当てはまっているだろう。
二人に関してはそんな事思っている気配もない。唯一部屋で食べる晩ごはんのときは当たり前のように布団をどかすし、寝るときは当たり前のように布団を引きずってくるのだ。カイと秀和さん、あの二人はこの三人を抑圧するくらい『だらしなくない人』だったのだろう。二人がいた頃はこんな有り様にはなっていなかった。
...さて、話を戻そう。
今回に限っては、二人からのメールの返信、そしてカイの電話の内容を完全に信じてはいけない。二人のことを信用していないからというわけではない。もしかしたら向こう側にいる人に口止めとかをされているかもしれないからだ。二人があっちでもう互いを見つけていたことを。
もし嘘の情報が紛れ込んでいるとすると、一、カイの情報が嘘・二、秀和さんの情報が嘘・三、両者の情報が嘘、という三つの場合が考えられる。ただ、そもそも嘘の情報というのはどんなものが考えられるだろうか?まさか、人がいる事自体嘘...?いや待てよ、人がいる事自体嘘なら、二人の共通点『人と会った』は消える。だから二人が一緒にいた可能性も低くなって、嘘の情報が含まれる可能性も低くなる...何となく矛盾する気がする。いやでもこんなケース考えられないとも言い切れないし...。だめだ、よくわからない。
うーん...じゃあふたりとも嘘をついていたらどうだろう。もしかしたらもうカイは秀和さんとあっちで会っていて、意図的に秀和さんがいないなどという情報を渡してきているのかもしれない。やっぱり、その『住みついている人』に脅されている...?強盗が入ってきて、通報したら人質の命の保証はないなどという、そんな感じだろうか。だとすれば、二人の命も危険にさらされていることになる...。
...いや待て、悪い想像をするのはやめよう。それにカイと一度電話を繋いだ時、とてもではないが脅されているようには感じなかった。むしろ、そこに人がいて安心しているという風にも感じさせる。
では、『口止めされている』と『脅されていない』の両方が成立するような状況といえばどのようなものがあるだろう。...まさか、
「カイと秀和さんのどっちかが、そこにいる人ともともと仲間だった...?」
これに関してはしっかりと筋が通っている。しかし、だとすると怪しいのはカイだ。
「カイは別に電話したときは普通に話してた。もしかしてカイが...」
軟が代弁してくれた。ただ一つ、カイはこの島をはじめから知っていたということなのか?
...この島に着いてから、僕たちは森の中をしばらく歩いていた。ただ歩いても歩いても、一向に森の中だった。カイは短気だからだんだん不機嫌になっていた...。しかし、もともと知っていたならここまでたどり着く方法もわかっていたのではないか?...だって、島の裏側まで回れば壁はすっかりなくなっていたのだから。それは秀和さんに対しても言える。
もしかして、絶対にあの『入口』から入らなければいけないわけでもあるというのだろうか。もしそれが存在するならそれは一種の伝統のようなものだろう。僕たちが今まで生きてきた時間。その中にその伝統を知る猶予などあるのだろうか?
だとするともちろん疑われるのは秀和さんだろう。第一、カイに怪しまれる原因があっただけであって、秀和さんに怪しまれない原因があるわけではないのだ。何か他に見落としていることはないか...。
―ちょっと待てよ?
「りん、もしかしてこの島のことって秀和さんから聞いた?」
もしそうだとすると一気に秀和さんが怪しくなる。もし答えがイエスなら、それはこの島のことをはじめから知っていたことに等しいのだから。
「あ」すると軟が声を上げた。
「秀和さん言ってた。『この島には住民以外入ったことがない』って。そんな事りんも言ってなかったっけ」
やっぱり秀和さんだ。りんの方を向くと、恐ろしい顔をして、ゆっくり頷いたのだった。...もっとはやく、思い出してほしかった。
「グループ課題のテーマが『思い出』って聞いた時、お父さんに相談した。それで、この島のこと聞いたんだよ。」
―マネオン・パラスカナイス島って言う島があるんだけど、住人以外誰も入ったことなくて、面白いと思うよ。
「そんな...」
軟が暗めに言う。りんに関してはわからないが、そう、軟と僕は『あっちにいる人』が『インテリトスグループ』なのだと思っている。秀和さんがそうだったなんて...。
「じゃあ、何で僕たちにそれを...?」
この仮説が正しければ、次に一番わからないのはこれだろう。
沈黙が流れる。
書いてた自分が途中から鳥澤が何言ってるのかわからなくなりました。




