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いつわり郷  作者: 融点
人影と鋭
18/65

18.今田

お読みいただきありがとうございます。

夕方、また軟からメールが送られてきた。

『本文:

 メールありがとう!

 そうだね。秀和さんのことも探さないと。今こっちでみんなで島の中を探してるんだ。あんまり意味ないかもだけど、とりあえずできることはやってみるよ。

 あと、とりあえずそっちの人は別にそこまで怖い人ってわけでもないみたいだね。よかったよ。一刻も早く助けに行くから!』

 明らかに文章量が少なくなっている...そんなことはどうでもいいのだが、ただ島中を探し回っている軟たちがこの場所まで助けにこれるとは正直思えない。やっぱり自分の力で逃げ出さないと...一応適当な返信をしといた。

 八月十一日。俺は昨日から、なにか手がかりを探し求めている。意外と移動だったりは制限されていないので、結構自由にいろんな部屋に立ち入っている。

 そして今日初めて立ち入ったのが、倉庫だ。

 倉庫も、鍵などはかかっておらず、普通に立ち入れる。ただそんな中でもあんまりワイワイしていると流石に怪しまれるので、できるだけ音を立てないように部屋の中を物色していた。

「何してるの...?」

 ...とはいっても、結局怪しまれるのがオチだ。しょうがない。この部屋はどういうわけか電気がなく、扉を開けていないと真っ暗で俺の事が丸見えなのだ。

 今回声をかけてきたのは、頑固でもないが飯尾さんとはどこかちがう威圧感のある表情を時々浮かべる、今田さんである。あの西島さんを一番信頼している人だ。どうしよう、適当な言い訳をしないと...。

「倉庫にはどんなものがあるのかなって思って来てみたんですけど真っ暗で。懐中電灯偶然持ってたんでそれ持ってきたんですけど、転んでどこかへ行ってしまって...」

 なかなか自然な言い訳だったと思う。扉を開けている理由も通るし、見てみればわかるこのものの散らかり具合にも合致する。

 しかし、ちょっとだけ今田さんは不思議な顔をした。

「そっか。一緒に探すよ。」

 あーうん。ちょっとありがた迷惑...いや、自然に自然に。怪しまれないように。

 俺は必死に懐中電灯を探すふりをして、何かこの集団についての説明だったりを書いたものがないか探していた。そして沈黙が続くかと思いきや、意外とそんなことはなかった。

「文生が言ってたよ。なんか海斗なら本当に遺言の謎解いてくれそうだって」

 文生...その名前を思い出すのに少しだけ時間がかかった。文生っていうのは、多分今田さんが一番信頼している西島さんのことだろう今田さんは地味な笑顔を絶やさず、床の方を眺めている。

 まあ、冗談だろうなと思ったので、適当に苦笑いをしておいた。確か...

『変わらぬものの頭、祭り年の差ずつ後へ』

 ...こういう遺言の言葉は、もっとシンプルな内容だと勝手に思っていたから、俺はずっと違和感を覚えていた。そういえば、祭りって何のことだろうか?

「ああ、えっと...なんか、この集団生活が始まった日を祝うっていうありきたりなやつだよ。でも、最近はちょっといろいろあってできない年もあって...」

 できない年もあった、ていうことは祭りの年の差ずつっていうのは、それの間隔ということだろうか?

「あ!懐中電灯あったよ!」

 え...?持ってきてないんだけどな...?と思っていたら、今田さんが取り出したのは、明らかに俺のではない緑色の小さい懐中電灯だった。ほんとにあったんだ...。一応もらっておいたほうが自然だろうか?

「本当ですか?ありがとうございます」

 メールで打ったら絵文字もないそっけない文章になるだろう。実際そんな事一ミリも思っていなかったのだから仕方がない。

 んじゃ、と言って今田さんはこの場所を去った。懐中電灯もあるし、扉を締めてもう一度倉庫を物色してみようか。

 あれ?この懐中電灯、灯りがつかないな。もしかして電池切れか?...仕方がない、今日は諦めようか。

外にある倉庫とかは電気通ってないのかなーみたいに思いますけど、室内にあって電気通ってないってどういう...

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