17.情報削除
お読みいただきありがとうございます。
「一緒に行動する必要ある?」
「私もそう思ってるよ。でも...あとで見つからなくなってわーってなるの嫌だし」
なるほどね。まともに考えたらそうなるだろう。でもこんな視界が開けてる場所で、迷子になることなどあり得るだろうか?
「あれ、鳥澤、今まででどんくらい探したの?」
「えっとーこんくらい」
僕はずっと広げていた島の地図をりんに見せた。
「え、これまだ半分もやってないじゃん。」
「そりゃそうだよ。ていうかそれどころかまだ四分の一も終わってないし。地図描きながらやってるんだから、あと3日はかかるよ。」
えーと言うりんだが、別に乗り気でないようには見えなかった。探さなければならないという使命感からだろう。
お昼を食べ終わってから、僕とりんはカイたちを探しに行くことにした。ていうか、それ以外やることがほとんどないのだ。持ってきたメジャーで簡単な測量をしながらやっているので(島の全体図を描いてどこを捜索したかを確かめるためだ)、結構な時間がかかっている。ちなみにこのメジャーは、軟があの事務所やらから持ってきてくれた。それをりんには「軟が持ってきていた」と説明している。ちなみに今日は八月十一日。
「これ、今あの大きい壁の方の中探してるから、これ終わったら外も探さないとだね。ま、その前に反対側の海の方探してみようか。」
探すと言っても、ほぼなにもないので歩いているだけだ。それでも、ちゃんと違和感がないかとか、確かめている。
現在午後2時。遭難せずに帰りたいので5時くらいになったら引き返そう。続きは明日だ。
「もしどこ探してもわかんなかったら、露頭から見てなんかあるのかもね。実際カイは下に連れて行かれたし。」
りんに『露頭』などという言葉は似合わない。そんな思いをよそに、僕もなんとなく疑問が浮かび上がっていた。それはりんの言葉を借りるが、『本当に地上から見てわかるのか?』ということだ。カイがいるのはおそらく地下、つまりそれにつながる入口も水平方向にある地下にある可能性が高い。
ただ、地下にずっと住んでいたら陽の光も浴びたくなるはずだ。もしかしたら地上からもつながっているかもしれない。
「もし地上からつながってるとしたら、見つかりづらいように森の方にあるかも...。」
そう僕が不安気に言うと、りんは
「別にいいじゃん、ここにはいないっていう証明になるんだから」
やっぱりりんはいつもとは違う。改めてそう思った。
ただ、足の感触を確かめながら歩く。それだけではなにもないという証明にはならない気がするのだが...まあ、今僕たちにできることはそれしかないのだから、仕方がない。
結構歩いて、いよいよバテてきた午後4時頃。案外測量もはやく進み、3日かかると言っていたのに壁の内側の半分くらいが終わっていた。慣れからだろう。5時くらいになったら帰ろうなどといったが、もう結構終わってしまったので、そろそろ引き返そうみたいな雰囲気になっていた。
「...そういえば、この島変な形してるよね。」
その時、りんがふと僕の地図を見て言ったのだ。そしてその時、僕は気づいてしまった。
「ねえ...?スマホに地図あるんじゃないの...?」
一体どうして気づかなかったのか...その理由が僕にはわからない。確かにりんのスマホには地図アプリがあったはずだ。いや、普通のスマホでも検索エンジンで調べれば地図情報はヒットするし、普通にこの島の情報を手に入れることができたはずだ。
「あ!たしかに!」
気づいてなかったのか...いや、まあ気づいていなかったのだろう。こういう人なんだから。りんはポケットからスマホを取り出して、『マップ』というアプリを探し出して開いた。そして今いる場所をズームしていく...あれ?
「なんでだろう。この前まで道とかいろいろ表示されてたのに...」
道情報があった、とはいっても壁あたりのほんの少しのところだ。でも、壁の存在さえも、地図から削除されていた。
いや、よく考えれば初めからおかしかったのだ。だいたいこんな島の中にぽつんと立って経営されているホテル、ザンゲツの情報自体、地図には示されていなかった。あれくらしか建物がないんだから、地図に乗っていてもまったく不思議ではない。
にも関わらず載っていなかった。それは何を示しているのか?
そういえば軟は、あのホテルはただ客を泊めるだけではなく、インテリトスグループに復習するのが目的だと言っていた気がする。もしかしたら、ホテルの存在自体を知られたくなかった...?
だとしたら、偶然東京から見て偶然ホテルを見つけてしまった僕らを見たときは、杉近さんはびっくりしたことだろう。もしかしたらインテリとスグループのやつらか、そう思われていたかもしれない。
更に僕の想像は悪い方向へと行く。もしかしたら軟にあの人達が協力を求めたのも、インテリとスグループの情報を引き出すため...?
どうしよう。この事を軟に一刻も早く伝えないと...。いや、全部妄想なんだ。変な風に軟に伝えたら事件の行き先に関わるかもしれない。
「たしかに島は長方形...だね」
今考えるべきではないことを一応言葉にしたものの、疑問は残ったままだ。
「りん、一回戻らない...?」
りんは不思議な顔をしながらゆっくり頷いた。そういう雰囲気だったからすんなり受け入れてくれたのだ。
僕たちはホテルのある方向に目線を向けて、足を動かし始めた。
...さて、今本当にするべきことは、なんだろうか?
鳥澤ってなんか一人でごちゃごちゃ考えますよね。
あ、あと、これからはごちゃごちゃした不定期投稿ではなくて、2日に一回地道にあげられればいいなーなんて思っています。