16.東京で
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窓からはるか遠くを覗くとなんだかそこに電車が走る気がします。いや、実際線路が通っていました。夏らしく晴れ渡っていて、薄いけど濃い青が空を覆います。なんだか目の前に入道雲がある感じがして、手を伸ばしたら掴めそうです。
僕のお兄ちゃんである軟があっちに行ってからしばらく経って、僕は家でだらけています。夏休みも始まったばっかりなので親に何だって言われたりはしていません。
ちなみに僕は軟の弟である天安鋭です。軟の2つ下で今は小4。軟のことはいつもお兄ちゃんとよんでいるので、ここでもそうしますね。お兄ちゃんは来年もう中学生なのであれですけど、僕にとってはまだ先のことなので、お兄ちゃんよりは結構気楽です。まあ、そんなこと言ってたらすぐにその時が来るんでしょうけど。
...なんか暇ですし、ちょっと外に行ってこようと思います。おっと危ない、転ぶところだった。もう、場所が悪いな...僕のせいですけどね。そんなことはどうでも良くて、久しぶり(といっても一ヶ月ぶりくらい)にあの場所へ行ってみようと思います。
玄関の扉を開けて、陽の光が差し込む。僕は古っぽい深緑のママチャリを取り出して、ペダルを踏み込みました。僕の横を家が走り抜け、やってくるのは爽快感です。風の音が暑いのに涼しい夏を演出しています。頭の中ではありとあらゆる日本の夏ソングがBGMとして鳴り響いています。こんな幸せな気分には夏しかなれないと思います。
お兄ちゃんは今頃どうしてるかな。今はお昼だからご飯中でしょうか、なんちゃって。うちの昼食は他の家より1時間くらい早いんで、もうさっき食べてきましたけど。いや、だとすると...。
まあいいです。そんな事を考えている間に目的地に着いてしまいました。扉を開けると、そこには...。
絵面がすごい。一瞬唖然としてしまいましたが、しょうがないので気にしません。いくつかのパソコン画面を覗き込んでも、僕には何がそこにあるのかよくわかりません。
さて、どうしようか...。どっちを選んでも困ることはないはずなのですが、やっぱり悩みます。第一僕は、お兄ちゃんに全部...。
いや、僕がここに来た理由を改めて考えてみると、これ以外はないのです。もうずっと前に、決意していたはず...。
僕は勇気を出して、それに手を当てました。せめて、なにかいい方向に働けば...。
大丈夫.....。
気がつくと、そこはまるで別世界でした。
鋭...?