14.変わらぬもの
お読みいただきありがとうございます。
八月十日。あれからだいたい一週間が経過した。現在午前7時。結構ここでの生活にも慣れてきたし、この場所のつくりを説明しよう。
まず、ここに入るとすぐにリビングがある。半円形の形をしていて、真ん中に10人くらいが座れるであろう円形の机がある。壁にはいくつかの電気が黄色い明かりを灯してあり、木で作られた壁の質感を強調しているように感じる。
と、さっき勢いで縄文人みたいな服装などと言ったが、実際そんなことはなく、単に茶色い服を着ているだけだった。サンダルも履いているし。
そして、そこから右と左に廊下が伸びていて、2つの部屋につながっている。左側はここの長である飯尾さんという人の部屋、そして右側はサイさん(顔は日本人に見えたが、本名だろうか?)という人の部屋につながっている。
右前と左前に扉があり、トイレにつながっている。そして、その扉のもう少し奥で(前ではない)左右に廊下が伸びていて、右側がダンさん(この人も日本人に見えた)という人の部屋、左側がさっきのミュウさんの部屋につながっている。
そして、前にも廊下が伸びていて、そこを進むと右に風呂、左にキッチンがある。ちなみに部屋それぞれにはしっかり扉がついている。そこを抜けるとまた左右に廊下が伸び、右に西島さんという人の部屋があり、左には俺の部屋があった。俺が来る前、誰もこの部屋を使っていなかったのだろうか...?
そしてその奥にまた左右に扉があり、右側に和室、左側に倉庫がある。和室、何に使うのだろうか...?一番奥で左右に廊下が伸び、最後の2つの部屋があり、右側が今田さん、左側が滝沢さんという人の部屋だ。
すべて木造。日を浴びれるところがないじゃないかと思われるかもしれない。唯一浴びることができるところといえば、ここを出て洞窟を抜けて海面(?)の向こう側から日の差し込むところだ。結構水はきれいなので明るい。
ここにいるのは俺を含めて8人。それぞれの人の印象について話そう。
まず飯尾俊彰さん。海賊のキャプテンみたいな感じがしてはじめは怖かったが、意外と笑顔の目立つ人だ。
そして副長(?)のサイさん。女性である。あまり飯尾さんを補佐している感じもない...のだが、飯尾さんの次に年が上らしい。普段は寡黙な人だ。
ダンさん。男性である。サイさんと同じでカタカナの名前らしい。なぜかスタイリッシュに感じるような見た目をしている。サイさんと同じであまり喋らない。
次に秋元実優さんとは、まあまあ仲良くなった。意外と初めに感じたよりかは喋るし、結構明るい。ちなみにここでは一番若い人らしい。
西島文生さんは、多分30代くらいだ。全員から色んな人から好かれるようなクールだがフレンドリーな性格をしている。
今田祥吾さん。西島さんを一番信頼していて、西島さんと一番仲が良いらしい。今は30代で、西島さんと同い年だ。
最後に滝沢祐実さんだ。サイさんと同じくらいの年齢で、サイさんとは仲が良いらしい。ちなみにここでの料理を担当しているという。
これらはミュウさんから聞いた話で、こう考えると全員結構仲がいいように見える。実際そうなのだろう。何の目的で、ここで生活しているかは知らない。ミュウさんを見ていて聞いてはいけないような雰囲気を感じるからだ。
生活に慣れてきた、とはいいつつ、問題は何一つ解決していない。俺はこの場所から、早く逃げ出したいのだ。
俺はベッドから離れ、リビングへ行く。すでに朝食が食卓に並べられていた。ここでの朝食はいつも和食で、魚・米・味噌汁が揃っている。魚は日替わりだ。てっきり珍しい動物の肉とか、そういうのが出てくると思っていのでギャップを感じたが、こっちのほうが自分に馴染んでいてよっぽどいい。
「今日はサバですー。」
全員が椅子に座ると滝沢さんが独特ななまりで言った。そしていただきますと言いながら食べ始める。
どこの椅子に座るかは適当だ。今俺はなんとなく一番洞窟への扉に近いところに座っている。
特に変なルールなどがあるわけでもなく、普通に雑談しながら食べる。15分くらいするとほとんどが食べ終わるのだが、その後も談笑が続き、部屋に戻るのは30分くらい後になる。
いつも通り話していると、西島さんがこんな事を言いだした。
「そういえば海斗、明訓さんの遺言書の話って聞いた?」
飯尾さんがちょっと...っとなにか言いたげだったが、何も知らない俺は呆然とするだけだった。
「飯尾さん、これって言っていいやつですか?」
「まあ、別にいいが...」
すると西島さんはにっこり笑って、こんな話を俺にしだした。
「飯尾さんの祖父、かな。飯尾明訓さんって人がいたんだけど、何年か前に亡くなって。その人が、遺言書にこんな事書いてたんだ。
『変わらぬものの頭、祭り年の差ずつ後へ』
祥吾は遺産のある場所とか言ってるけど...」
「絶対そうだ。それ以外考えられない。」
そう今田さんが言う。
「ま、遺産相続の話には僕はあんまり興味はないですけどねー」
ミュウさんがそう発すると、そこにいた大体の人が頷いたように思えた。
「せっかくだから、解いてよこれ。」
西島さんがそんな冗談をいうと、リビングは笑いに包まれた。でも冗談とは言いつつ、少しこの言葉に俺も興味があるように思えた。
...無論、遺産に興味があるわけではない。
変わらぬものの頭.....