12.鳥澤とりん
お読みいただきありがとうございます。
突然軟が部屋を飛び出して、突然帰ってきた時、時刻はすでに4時を回っていた。空は再び晴れ、自然がいきいきとしているように感じた。
その時ちょうど、またりんがいなかった(散歩してくると行って出ていった)。
「何があったの...?」
とりあえず立ち上がった僕、鳥澤朝樹は軟にそう尋ねた。やがて軟は口を開き、こう言い放った。
「...この島は、そのうち爆破されるらしいよ。」
そんなことはわかってる。そう言おうとしたがやめておいた。感情的になると冷静さを失うかもだから...。僕は立ち尽くしてしまい、しばらく言葉を発することができなかった。気まずそうな雰囲気が流れる。軟も全く同じことを思っていたようで、しばらく下を向いていた。が、僕にはどうしても、質問しなければならない事があった。
「どこ行ってたの?」
そう。あの時軟は爆破予告という妙な事実を知り、すぐさま部屋を出ていってしまった。僕は呆然としてしまっていたが、一体どこへ行っていたのか?誰かと会っていたのか?なにか隠していることがあるのか?それが一番納得できない疑問だ。
「...じゃあ、全部話すよ。」
そう言って軟は畳の上に座り、これまでのことを話してくれた。十分くらい、だろうか。結局りんが帰ってくることはなかった。散歩と言っても、どこまで行っているのだろう。
そして、思わず唖然としてしまった。この島にかつては人がたくさん住んでいたこと、自然破壊が行われていたこと、そして何より、軟が爆破予告の問題の解決に協力することになったこと。新しい事実が多すぎて少なくとも寝そうにはならなかった。
「なんで今まで言わなかったのさ...」
「言うなって、言われてるからだよ。そりゃ、突然島に来た来客にこんなことが知られたら困るでしょ。でも、こんなに怪しまれるような行動したんだから、言わなきゃ余計怪しまれるかなって...」
納得の理由だった。そして、納得するしかなかった。この事実を知ってしまった以上、この事を受け入れるしか道は残されていないのだ。そして、りんたちには...
「りんには、絶対言わないでね。カイにも...」
カイのいる場所に、そのインテリトスグループがいるかもしれない。だから一刻も早く、その場所を突き止めてほしい。
「うん。絶対言わない...」
よいしょ、よいしょ...やっと屋上が見えてきた...。
階段の一段一段が大きいから疲れるなぁ...。そんなことを思いながら、あたし岡崎莉里は足を動かし続ける。
なんでこんな事をしてるか?別に理由はない。なんとなくこのホテルの屋上に行ってみたいと思ったから。それだけのこと...
「うわっ!」
足元に大きなトカゲが!うっかり踏んづけるところだった...。あと少し、あと少し...
この階段は石でできていて、力士が登るみたいに一段が格段に大きい。だから手すりを掴みながら登らないとバランスを崩して落ちそうになる。
鳥澤は今頃なにしてるかな...いや、意外とただボーっとしてたりして。ていうか軟どこ行ったんだ?部屋に戻ったら突然いなくなってて...鳥澤もびっくりしてたし、なんか隠してるんじゃないか?
まあいっか。そんなことよりもうすぐ屋上につきそうだ。
「ついた〜!」
さっき空は晴れたから、やっぱり眺めは最高!
だいぶ高いところまで来たんだな〜.....こっち側はあんなにでかい壁が立ってたのに、ここまでくればちっぽけなもんだ。
風は今日は全然吹いていない。でもそんなに暑くないし、このホテルに泊まれてよかったー。
海の波はエメラルドグリーンみたいな色をしていて、波が打ち付けるところに波の花が見える。こんなきれいな風景、見たことない。雨が通り過ぎて、周りの濡れたところがきらきら輝いているように見える。
なんか、ここで眠れそうだなぁ...
あたしはそこにあったベンチに腰を下ろし、そして寝そべった。最近はなんだか頭がごちゃごちゃしていたから、ゆっくり眠って頭の中整理しよう。そんなふうに思った。
意外と早く眠りに落ちて、気づいたら3時間くらいが経過していた。
鳥澤があたしを探しに来て、叩き起こしたのだ(人聞きの悪いと思われるかもしれないが、別に鳥澤は気にしないだろう)。
―輝く月が、綺麗だった。
少し間が空いてしまい申し訳ありません(汗)。
登場人物それぞれの視点から、物語を描いていきたいと思います。