10.カイ
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なんか寒いな…あれ、布団がない……
身を起こして床を眺めて、俺は自分のいる場所が異常であることを認識した。
天井が極端に高くて青い。白い縞模様があって…あれ、あれって海か?
床はコンクリートみたいに固くて灰色。海底…?海底にガラス張りのドームがあるような、そんなやつだろうか。
俺、菱本海斗は前の方へ進んだ。
数歩歩くと、真正面が海になっていた。海の壁って言う感じだろうか。
ドブっ。手を伸ばすと海の中に入っていった。何だ、これ。
ふと、ついさっきのことを思い出した。誰かに引っ張られて落ちてしまった時、確か秀和さんも一緒だったよな。
「秀和さーん!」
そう叫んでも返事はない。妙に自分が落ち着いていることに気づくのと同時に、途端に恐怖心が現れた。
「なんだあれ?」
後ろを見ると洞窟っぽいのが目に飛び込んできた。
あんな真っ暗闇に入っていくのか…。そうしなければならないことを察した。
「誰かいませんかー」
やっとの思いで二度目の声を発したが、自分でもわかるようにかなり弱々しい。
そして、自分の中で引っかかっていたことに気がついた。そもそもこの島に来ることを提案したのはりんだったよな。こんな変な島知ってたんならあいつならもうちょっと変なことについて話すだろうし、おかしい。あと、秀和さんは確かに俺が落ちそうになったとき支えてくれたのだが、なんだか支えるというか…そう、俺につかまっている、という感じだった。正直言うと、助けるつもりなどなかったのだろうかと思えてくる。
とはいいつつ、変な想像をすると余計に怖くなる。だから、その洞窟に、無心という無心で入っていったのだった。
それにしても、さっきのは何だったんだろう。海の壁に手が飲み込まれていった…。そんな感触が、まだ残っていた。俺が言うことでもないかもしれないが、そんな技術聞いたことがない。こんなの、夢の中でしか…
あれ?なんか向こうに壁があるな。え?
とにかく走った。もしかして、閉じ込められた…?
目の前の壁を見上げる。
…鍵が、かかっていた。
壁に見えたのは引き戸で、取手の部分に南京錠がかかっていた。
この先に、部屋でもあるのだろうか。
じゃらん。あれ?ポケットになんか入ってんな。
これは…鍵?
俺が気を失ってる間、誰かが入れたんだろう。もしかして…
開けないほうがいいのかもしれないが、恐る恐る鍵穴に、その鍵を差し入れた。
そこにあったものは…
目を覚ましたら突然あんな場所にいるなんて怖いですね...