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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あれ

作者: ミチ

たおわらりいづき

「たおわらりいづき」って、知ってるかい。

 いやぁ、知らなくてもいい。なんせ覚えにくい名前だ。忘れたって仕方がない。なに、単なる田舎の言い伝えみたいなものなんだけどね。

 既視感ってのがあるだろう。今風に言や、デジャヴってやつかい。ここらじゃ、あの奇妙な感覚に遭うと「あれが近い」って言うんだ。

 あれっつうのは......ほら、さっき教えたあれだよ。

 村民は、あれが近いとなると、すぐに村のお堂の清水で目と背中を清めるんだそうだ。なんでも、それをほっとくとあれに憑かれるとか。

 最初は日によく既視感に遭うという程度だけれど、段々既視感のたびに、何か黒いもんが目の端に映るようになってくるらしくてな。ふっと目をやると消えるが、既視感に遭えばまた視界の隅にいるんだとよ。

 そんでそれをさらにほっとくと、その黒いもんが立って、日に日にこちらに近づいてくるっつう話でな。それがよ、よく見りゃ人なんだと。でもってそいつがまぁ恐ろしい形相をしてるもんで、村のもんはその名前もめったに口に出したがらない。

 こいつがその、......あー、あれだ。

 ぼろ切れ同然の灰色の服。そこから飛び出した、骨と皮だけの四肢。ところどころひび割れた、死人みてえな肌。喉には掻きむしられた跡があって、血がにじんでる。そんでな、ぼさぼさの頭で隠れがちだけどよ、こいつ、目鼻口が縫われてんだよ。それもかっぴらいた状態で。そいつが、既視感に遭うたびに一歩ずつ、一歩ずつ、こっちにやってくる。

 その内既視感は分刻みになってな。最後にゃ視界が穴みたいなそいつの目でいっぱいになって、その既視感のなかに、喉を掻きむしって死ぬ自分が見えてくるんだよ。


 怖がらせちまったかな。すまんね。

 まぁ心配いらないさ。実はこの言い伝えの続きにこれの対処もあってな。それによるとこいつは、より自分に意識が向いてるやつへ執着するらしい。要は、自分の近くに、こいつのことをより考えてるやつがいれば、そっちに移るってこった。

 ……あんたは何回こいつのことを考えたかな。こいつの顔と名前を、何回思い浮かべたかな。

 どうした。顔色が悪いな。既視感にでも遭ったかい。


 ほら、今、目の端に。

 あはは。

きづいたらおわり

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