話し合い
まだ村までは距離がある、ボク達は一旦止まって話し合いをしていた。
「そのまま入ったらあかんの?」
「クマさんは平気かもしれないけど、ボクはほら…」
そう言って耳と尻尾をひくひくと動かす。
「あーでもあれやん、ゆっきー変化できたやろ?」
「それなんだけど…」
ボクは言葉を濁すと、嘆息する。
「できないんだよね。今の姿から変化することが、なんでかはわからないんだけど」
「え?マジか!?」
「うん、困ったことに、ね」
そうなのである。
ボクの変化はデフォルトといえる豆狸モード(約60cm)、人間の男性モード、動物の狸モード(でも毛は青い)、それから現在の姿の半獣モード(約150cm)の4つである。
しかし今は変化しようとしても、半獣モードから変化できないのである。
「それって原因はわかってるん?」
「いや、検討もつかないんだよね…」
「ヤバない?」
「そこまで困るってほどじゃないんだけど、人間の姿になれないのは今困ってるなぁ…」
どんな村なのかもわからないが、人間の姿のほうが無難かなとも思う訳で。
「とりあえずちょっと探ってみる」
「ん?どうするん?」
「能力でうまいこといけないかなーと」
距離的にはまだ数キロはありそうだが、やれそうな気がするのだ。
「演算開始」
─起動プロセスを実行、オールグリーン
「前方にある村限定で、情報が欲しいな」
─是、村の規模は家屋の数から推定するに50名~100名程度と予想されます、これ以上の情報を精査する場合はより多くの演算域を使いますがよろしいですか?
今の時点で頭が熱を持っている気がするので、それには及ばないと頭の中で回答し、ボクは続ける。
「人影はある?」
─是、一般的な人類と、少数の獣人と思われる存在を確認
「獣人…?」
─動物の一部を身体の特徴として持っている種族と仮定
「ふむ…」
これなら獣人と言い張れば大丈夫かもしれない…などと思っていたら、クマさんが声をかけてきた。
「一人でぶつぶつ言ってるけど、何かわかったん?」
「ああ、えっと、あの村には獣人っていう動物の一部を特徴として持っている人もいるみたい」
「ほー、ファンタジーやなぁ」
「いや、Vtuber界隈では結構いるんだけどね…」
「それもそうか」
「っていうか、すーちゃんも獣人みたいなもんじゃん」
「そうやったわ!」
すーちゃんとはクマさんの彼女、黒宮スズのことだ。
黒豹のVtuberである。彼女もどこかにいるのだろうか…?
一人でこんなところに放り出されていたら大変…のような、そうでもないような…
(順応性高いからなぁ…)
意外となんとかなってるかもしれない。それに今は心配しても詮無きことだ。
「とりあえずそのまま行ってみても大丈夫…かも?」
「んじゃあ行ってみるか」
そういうことになった。
果たして本当にうまくいくのかはわからないけど、ボク達にとれる選択肢は多くない。
結局どちらかが、あるいは両方で行くしかないのだ。
そうしてボク達は村に向かって進み始めた。
いくつかの場面をまとめたほうがいいのかどうなのか、悩みつつ小出しにしてしまっているボクがいます…