街道
今日2回目の投稿でっす!
翌朝ボクが目覚めると、既にクマさんは起きていた。
「お、ゆっきー起きたか?」
クマさんは屈託のない笑顔をこちらに向ける。
「クマさん、ちゃんと休んだの…?」
ボクはむにゃむにゃとしながら、クマさんに問いかける。
「少しは休んだから大丈夫やで」
「んー、そうなの…」
まだはっきりとしない頭でボクはどれくらい経ったのだろうと空を仰ぐ。
雲ひとつない快晴という訳では無いが、程よい晴れの空だった。
太陽の位置はよく見えないが、まだ午前中だろうと予想する。
ぐーっと身体を伸ばして、身体の調子を確かめる。
やや筋肉痛は残っているが、まぁ良好と言える体調だった。
「そうしてると狸というより、猫っぽいなあ」
「いや、狸はイヌ科なんで」
反射的にそう答えると、ボクは立ち上がる。
「ふぁ…もう移動する?」
「そうやな、ゆっきーが大丈夫そうなら行こか」
「ん、大丈夫」
火の後始末を終えたクマさんはボクに背を向けると、ある方向を示した。
「街道があったのはあっちや」
「まずは街道に合流して、それからどうするか…」
「足跡の方向を辿れば、恐らく人が多い方向はわかると思うけどな」
「うーん、スパイって凄い」
というか、ボクが何もできなさすぎるのかもしれない。
そう考えて難しい顔をしていると、クマさんに声をかけられる。
「行かんの?」
「あ、行きます行きます、ちょっと待って」
ボクはささっと身だしなみを整えると、クマさんに続いて歩きだす。
「こっち来てから軽く周辺は探索したけど、街道まではこっからやと2,30分くらいやな」
「そこそこ歩くね…」
基本もやしっ子なボクには長く感じる距離だ。
足手まといにならないようにしなくちゃ、と気合を入れる。
幸いにも森そのものは歩き慣れている。里の周辺とは流石に様子は違うけれど。
◯
どれくらいの距離を歩いただろうか、少し疲れたなと感じてきた頃に、クマさんが足を止めた。
「あったで、これや」
「お、着いたの?」
見るとそこは横幅1メートルくらいだろうか、確かに踏み均された道があった。
「なるほど、確かに道だね」
「うん、この感じやと…人がいそうなのはこっちやな」
足跡の多い方向を指差し、クマさんは歩きだす。
「ここは森の中でもそれほど深い場所じゃないみたいやな、それなりに足跡が多い」
「そんなことまでわかるの?」
「まーそういうのが仕事やからなあ」
クマさんは軽く言ってのけるが、ボクにはそこまでの予想はできなかった。
やや悔しさを感じるものの、ここはクマさんの技術に頼ることにする。
そう考えた時、ふと閃いた。
「…演算、開始」
─起動プロセスを実行、オールグリーン
黒兎に襲われていたときのように、一気に自分の周囲の情報が増える。
「人の多い方向は」
─推定、足跡の数、向き、道の形状などを踏まえると、個体名クマウサギの示した方角と同様の結論となります
「…なるほど」
『演算開始』がキーワードなのだろうと当たりを付けてみたが、どうやら正解だったようだ。
これでボクもクマさんの役に立つことができる、と思わず笑顔になる。
「何やってるん?」
「あーっと、能力?の使い方がちょっとわかったかも」
「ほー、どんな感じなん?」
「えっとね…」
クマさんに説明しつつ、道を歩く。
「色々可能性がありそうやな、俺の動きも予測できるん?」
「待ってね…ああ、拳銃はそこにあったんだ、見た目じゃ全然わからないけど…」
「お、凄いな、そんなことまでわかるんか」
「かなり正確な情報が得られるね…あ、今ナイフの位置に手を動かそうとしたでしょ」
「うおお、バレとる!」
クマさんはやや大げさに驚くと、感心したように頷いた。
「もしまた襲われるようなことがあったら、ゆっきーはサポートに回ってくれると助かるな」
「そうだね、ボクは直接的な戦闘能力はないし…」
そのうちボクも武器とか持ったほうがいいのだろうか?治安の程度はわからないが、なんとなく必要な気がした。
そうしてしばらく演算状態を維持していたのだが、
─演算負荷が30%を超えました、演算を続けますか?
頭の中で声が響く、言われてみると確かに少し頭が重くなったような感じがした。
ずっとこの状態でいるのは難しいようだ。
「演算停止」
─演算を停止します
周囲の情報量はぐっと減ったが、頭は軽くなった。
肝心なときに使えないのは困るので、今は頭を休ませておいたほうがいいだろう。
そうやって検証をしているうちに、そこそこ時間が経ったらしい、クマさんがボクに問いかける。
「ゆっきー、村っぽいのが見えたけど、どうする?」
「あ、ほんとだ」
「俺が様子見てくるか?」
「んーちょっと待って、作戦会議しよう」
「うい」
ボク達は道を少し逸れて、村に対してのアプローチを考えるのだった。
ちょっとずつペースを早めていきたいところ…!