悪夢
場面転換が続いて短めに…むむむ
夢を見ていた。
Vtuberとして活動している夢だった。
周りには友達がいて、一緒にわいわいとゲームをやっていた。
配信はそれなりに盛況で、参加型にしたこともあってリスナーとも交流できていた。
ボクはそれを楽しんでいる。
楽しんでいる、そのはずだ。
だが声が聞こえる。
『虚構の存在に過ぎないのに』
責めるでもなく、糾弾するわけでもなく、ただ事実を述べている、といった感情のこもっていない声。
ボクは何のことか分からず困惑していた。
気づけば周りにいた友達もおらず、何の音も聞こえない。
誰?何を言っているの?ボクはここにいる!
でも、なぜだかその言葉はボクの心を深くえぐった。
ボクは必死に声を出そうとするが、何も発することができない。
ならば、と体を動かそうとしてもまるで金縛りにあったように、自由に動けない。
そして徐々に霞がかかったように意識が薄れていった─
◯
「……き…、ゆっきー!」
はっとして目を開けると、クマさんがボクの体を揺すっていた。
どうやら寝てしまっていたようだ。
「どうしたん?めっちゃうなされとったで」
「んん、何か悪い夢を見てた気がする…内容は思い出せないけど…」
「そっか…もう大丈夫なん?」
「うん、心配かけてごめんね」
胸の奥にもやもやとした何かが残っている気がするが、クマさんにこれ以上心配をかけまいと笑顔を作る。
チクリ、とおでこの裏側が疼いた気がした。
「とりあえず飯作ったし、食わん?」
ボクが寝ている間に用意したのだろう、見るとたき火で木の枝を通した黒兎が焼かれていた。
「クマさん、サバイバル経験でもあるの?」
「スパイやと色々やるからなあ、道具がなくてもこれくらいは余裕よ」
「うーん、ボクも里の仕事、もっとよく見ておけば良かったかも…」
クマさんには助けられてばかりだな、と少し落ち込む。
でも会っていなければ黒兎に殺されていたかもしれないと思うと、クマさんとの出会いは僥倖だったといえる。
これから役にたてばいいんだ、と自分を慰める。
その場面が来るかどうかは不明ではあったが…
「…とりあえず食べながら情報交換でもしよっか」
「せやな、俺もわからんことだらけやし」
関西弁って難しい…