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電子世界のVtuber  作者: 片倉優樹
第一章
1/9

現実と虚構の狭間で

 頭痛がして目が覚めた。

そう言えば昨日は飲みすぎたなぁ、などと思いながら体を起こす。

ただ二日酔いにしては頭痛のする位置が変だなと感じた。

何故かおでこの裏側、前頭部分が痛いのだ。

ズキズキと痛みを主張してくる頭に顔をしかめながら、ボクは目を開ける。


「…どこ、ここ」


 自分の記憶にはない場所だった。

かつては深酒が原因で記憶を無くし、見知らぬ場所で目覚めたこともあったが、これはそういうものとは違うように感じた。


なぜなら、


「丘の上?それにこの風景は…?」


 見覚えのない風景が自分を混乱に落とし込む。


「待って、確か昨日は飲酒雑談配信をして、それからえーと…」


 そこから先は思い出せなかった。

恐らく配信を閉じた後ベッドで横になったのだと思うのだが、記憶が定かではない。


「何が、起きてるんだろう?ええと…」


 穏やかな風景とは逆に、恐慌に陥りかけているボクをまだ正気に繋ぎ止めているが頭痛というのも皮肉な話である。


「とにかく、ここがどこなのか把握しないと」


 丘の上から見下ろせる範囲内には人の気配はなかった。ただ草原が続いているだけである。

頭痛と困惑、千鳥足というほどではないが、ふらふらと危なっかしい歩調で歩き始める。


「とりあえず落ち着こう…ボクがどうなっているのか理解するのが先決だよね」


 独り言をぶつぶつと呟きながら歩みを進める。目的地などある訳はなかったが、動いていないと不安に押しつぶされそうになりそうな自分がいた。


「ボクは片倉優樹、豆狸Vtuberだ。皆からはゆっきーって呼ばれてる。うん、そう、ちゃんと自分のことは覚えてる」


 一時的な記憶喪失?昨日、一昨日とその日あった出来事を思い出していく。


「昨日は雑談配信をしたよね、その前はゲーム、後はコラボがあったかな」


 Vtuberになる前、親に教えられたことをふと思い出す。

それは「森で迷子になったときは、とにかく混乱しないこと」そんな内容だっただろうか。

ボクは豆狸…日本の妖怪だ。里は山奥に隠されており、人間が立ち入ることはない。

自然に包まれた美しい里だった。日本にはいくつか妖怪の里があるらしいけど、ボクは見たことがない。


 とりとめのないことを考えながら、努めて不自然な現状から目をそらす。この状況下で恐慌に陥らないための自己防衛かもしれなかった。


 足元の草を踏み潰しながら、家にいたのに靴は履いているんだな、などと場違いなことを考える。

不可思議なことはいくつもあるのだが、それらを検証していくには心の余裕がなかった。

ただひたすらに草原を歩いていく。


「ボクは…」


 その先は続かなかった、頭の中はぐるぐるとしているが、辛うじて正気を保っているこの状態は本当に綱渡りだ。余計なことは考えないほうがいい。


「とにかく、誰かいないか探そう」


 そう決心すると、少し落ち着いてきた気がした。

いつの間にか頭痛は収まっていた。



自分が主役の物語を読みたいと言われたので書いてみました!

コメントやご指摘、ご感想大歓迎です!

よろしくお願いします!

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