母の秘密を求めて 1
王宮は想像の何倍も広大であった。門までたどり着くにも一苦労した。
門番の男性に用件を伝え、担当の方に取り次いでもらうことになっている。
「あの、すみません。私、女官をしていましたシャーロットの娘です。セシリアと言います……」
しばらく待つと、馬車に乗った女性が門の中からやってきた。
「あなた、シャーロットの娘のセシリア?」
「はい」
「どうぞ、馬車に乗ってください。」
その人は、たっぷりとしたボリュームのあるドレスを着ていた。髪は一つにまとめられ、背筋のスッと伸びた姿勢からは、あふれんばかりの気品が漂っていた。ネイビーのドレスカラーもその気品を裏付けしているようだった。
私はその美しさに見惚れた。この方は王族の人、もしや女王陛下ではなかろうか。
「申し遅れました、私はエリスと申します。この宮殿の女官たち皆をまとめる、女官長をしています。どうぞよろしく。」
女官長ーー つまり王族ではないのか。とはいえ、宮殿の女官にはある程度の身分が必要と聞いたことがある。きっとこの方も、相当なご身分なのだろう。
馬車から降りて、いよいよ建物の中に入る。この世の贅を尽くしたかのような空間には度肝を抜かれた。そんな宮殿内を、女官長はスタスタと歩いていく。しばらく奥へ進むと、先ほどまでの豪華絢爛さがやや抑えられた空間にたどり着いた。ここにはいくつかの部屋が連なっている。
「あなたの部屋はここです。」
私はその中でも最も簡素な部屋に通された。ここはどうやら、女官たちの生活する部屋のようだ。
私の部屋は4人部屋で、私以外の3名は現在仕事中のため不在だという。
「荷物を置いたら、私についてきてください。女王陛下にご挨拶へ伺いますから。」
女王陛下という言葉を聞いてはっとした。ここは「宮殿」、王族の方々の居住空間なのか。
同じ空間屋根の下にいらっしゃる。しかもお会いできるなんて……
「こんな私が、女王陛下にお会いしてもよろしいのですか?」
すると女官長は顔色一つ変えず言った。
「ご挨拶をするだけです。普段の業務では関わることはありませんが、念の為です。」
女官長が、私のことを蔑視しているのがよくわかる。特に何も言われてはいないが、先程からひしひしと感じるのだ。説明以外の会話もないし、話すときも私のことを見ているようで見ていない。その割には眉根をひそめて私のことを見つめてくる。
あぁ、自分でもわかっている。ここは私が来るべきところではない。身分が違いすぎる。
できることならノセルの街で農民暮らしを続けたかった。しかし、それでは家が持たない。そんな時に頼れるのは、母が勤めていたこの宮殿だけなのだ。
ベルばあちゃんは高齢だし、マーゴットはまだ若すぎる。新婚ほやほやの兄の嫁・ジェインに行かせるわけにはいかない。だから、この仕事ができるのは私しかいない。そんなことわかっている。でも……
「早くしていただけますか。」
「あっ、すみません。もう大丈夫です。」
女官長に連れられ、私は女王陛下に謁見する。