異世界転生したらチート魔法使いになりました!?
【0話】
キラキラと輝くステージで軽快に踊るアイドル。
ダンスも歌も完璧にこなす彼女にファンの熱狂は頂点に達する。
ステージが一体になり、今日もまた彼女の伝説が増える。
「完璧…」
私はそんな彼女をサポートするための存在いわばプロデューサーだ。
彼女の歌とダンスのレッスン、スケジュール管理、メンタルケア。
どれも私の仕事だ。
最初は泣き虫だった彼女が今は日本一のアイドルになったことが何よりも誇らしい。
このまま永遠に彼女の名前が世間を轟かせ、私はそれを1番近くで見れる。
ただそれだけを望んでいた。
しかしそれは叶わぬ夢となった。
ライブもあと一曲となり終盤迎える。
ステージでは彼女が完璧な歌とダンスで魅了している。
一つの照明が消える。
私以外、他のスタッフもファンも彼女もそれには気づいていない。
彼女を真上から照らす照明が消え、指示を出そうと照明スタッフのところに駆けつけようと視線を逸らそうとすると、隣の照明も消えることに気づく。
「もしかして…」
最悪のケースが頭をよぎった。
不自然に消える証明に私以外のスタッフも気づいた。
だが、すぐに照明スタッフのもとに行ってしまう。
次の瞬間。
ガゴッと鈍い音と共に照明が天井から落ちた。
私は走った。
接続不良による事故で伝説を終わらせては行けない。
彼女を殺しはしないと。
「危ないっ!」
「茜さん!?きゃっ…!」
ステージで最後のパートを歌っている彼女を推して無理やり突き放す。
それと同時にバンッと何かが爆発するような音と共に私の体に鈍い痛みが走る。
会場全体が騒然と鳴る。
そして数秒後。
誰かが叫び、会場内はパニックとなった。
「うそ…嘘!茜さん!茜さん!!」
泣いているアイドルの声がする。
「誰か救急車を呼んでください!茜さんしっかりしてください…茜さん…」
耳鳴りがし、だんだんと体温が下がっていく。
誰かが応急処置を施してくれているようだが、傷はそれを遥かに超えるほど酷い。
きっと腰から下はもう機能しない。
運が悪ければ既に体から離れているだろう。
「あ…あ…」
もう一度彼女と話がしたい。
でも声の出し方がよくわからない。
耳もよく聞こえない。
「まだ生きてる…茜さん…茜さん…!」
彼女は私の手を握る。
微かに感じる体温。
暖かい…それと同時に冷たく濡れる。
彼女が泣いている。
花のように笑う彼女が私のせいで泣いている。
プロデューサー失敗だ。
最後の最後に彼女を笑わせてあげられなかった。
でも最後に伝えたかった。
潰れた喉を使い掠れた声で、
「………………………………………ありがとう…」
死ぬんだ。
もう彼女が何を言っているのかすらわからない。
目が重い。
体温も感じられない。
ただ目の前にあるのは楽になる選択だけ。
重くなる瞳を閉じる。
私の人生が終わった瞬間だった。