最終章#67 同類。共犯者。戦友。全部まとめて愛してる。
推薦希望調査 氏名:綾辻澪
第一希望:屋上
第二希望:体育館
第三希望:校庭
SIDE:時雨
綾辻澪という少女は、まるで美緒ちゃんの分身のようだった。或いは双子。美緒ちゃんへの妄執に囚われている自覚はあるけれど、彼女を見て美緒ちゃんを彷彿するのはしょうがないことだと思う。
一度、疑ったこともある。
彼の父が浮気をして澪ちゃんを産み、その後に美緒ちゃんが生まれたのではないか、と。まぁ流石にありえないと思うけれど。
ならばこそ、彼女が美緒ちゃんとよく似た少女であることは運命なのだろう。
『愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない』
かの文豪の言葉は、彼女にこそあてはまる。
美緒ちゃんとよく似た彼女は、しかし、美緒ちゃんと違うところがたくさんあった。美緒ちゃんよりも弱く、脆く、けれどどこまでも彼に尽くす心がある。それこそ、彼と破滅することも厭わぬほどに。
だからこそ、彼女は分かりやすい場所に行くはずだ。
彼と彼女らにとって屋上は印象深い場所だ。体育祭や球技大会での思い出が詰まっているであろう校庭もそれは同じ。土砂降りの雨でも、いや、だからこそ彼女は行く。
或いは――そうでなければ、体育館。
ダンスタイムの最中である体育館で人に紛れる。それでも彼は自分を見つけることができるから。
「違う、のかな……っ?」
体育館。
時の流れのように流麗なBGMと共に、みんながそれっぽいステップを踏んでいる。ロマンチックな劇を彷彿とさせるその会場で、ボクは彼女を見つけられない。
彼しか見つけられないのか。
それともここにいないのか。
前者であることを切に祈る。
だってそれなら――彼と美緒ちゃんの恋が終わってないことが証明される。
あの絶対無敵の愛が、永遠だと信じることができる。
そうすれば――
「そうしたら、どうなるんだろう」
証明に躍起になって、彼や彼女らを巻き込んで。
でも永遠の愛があると証明したとして、それをボクが掴めないことは既に分かっていることで。
なら、この先に何がある?
「滑稽だなぁ、ボクは」
本物の愛がないのなら。
永遠の愛がないのなら。
愛が絶対無敵じゃないなら。
一体、救いはどこにあるんだろうか。
『愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である』
ねぇキミは、彼女たちを見つけられたの?
◇
推薦希望調査 氏名:百瀬澪
第一希望:第一会議室
第二希望:
第三希望:
SIDE:友斗
出発したはずのその部屋に俺は戻ってきた。
我ながら、バカなことを考えているな、と思う。この部屋にいないから捜しにいったのにここにいるなんて、どう考えてもおかしいじゃないか。
たとえば屋上とか校庭で、俺とずぶ濡れになることを望むかもしれない。文化祭の日はまさにそうだったし、あの後一緒に行ったホテルでの記憶ごと上書きしたいと願ってもおかしくない。
或いは逆に、木を隠すなら森と言うように体育館で人に紛れて、さぁ私を見つけてみろ、とやるかもしれない。そっちの方が強欲で傲慢なあいつらしいじゃないか。
なのに、ほんの僅かな疑念が生じる余地すらなく、ペンが走った。
その時点では一切の確信はなく、それでも退く気にはなれないからと部屋を飛び出した。
雫と大河を見つけて戻ってきた今。
扉の前に立ち、ああなるほどな、と感じた。
よくゲームで『怪しい気配がする』だとか『扉の向こうから強い気配が』とかボス戦前に出るのを見て、なんと都合がいい、と冷笑していた。しかしいざ扉の前に立って気配を感じてみると、ゲームの主人公たちに申し訳ない思いが湧き上がる。
澪の気配がする。
扉を開くと、出発したときと何一つ変わらない第一会議室が広がっていた。
三人分の衣装と化粧道具。テーブルの上に残された伝言。入江先輩は何も言わずに時雨さんの後を追ったから、正真正銘、もぬけの殻だった。
そう、誰もいない。
澪もいなかった。
「間違えたのか……?」
まぁそりゃそうだよな。
幾らなんでも、ここまで大胆な答えを用意してくるはずがない。だってそれじゃあ、捜せっていう雫たちの課題の目的に沿っていないのだから。
「――とか言ったら満足するのか? この性悪女」
間違ってる?
アホか。そんなこと億が一にもありえない。澪はここにいる。もうそこに疑いの余地はない。
だとすれば後はどこにいるかだが――ハッ、そんなもん、問題にもならねぇな。
澪のことを何でも知ってるわけじゃない。
知らないことだらけだし、分からなくなっていくことだって山ほどある。
嘘や秘密を着飾ってこそいい女だと言うのなら、俺史上最強のいい女が嘘や秘密を使いこなさないわけがない。手足より巧みに使うだろう。
それでもな、澪。
俺がどんなにかっこつけても三人が仮面の下を覗いてくれるように、俺は澪を素っ裸にしてやれるんだぜ。何しろ裸の付き合いは長いからな。
「ここだな」
迷うことなく、部屋の隅の掃除ロッカーの前に立った。
第一会議室の掃除ロッカーは、普通の教室よりも少しだけ大きくなっている。ほうきが大きめのものだからだ。
普通の教室の掃除ロッカーには流石に某ツンデレヒロインじゃないと隠れられないだろうが、ここの掃除ロッカーであれば澪は十二分に隠れられるだろう。
果たして、掃除ロッカーを開くと、
「性悪女はないんじゃないの、王子様?」
「お前はお姫様っていうより魔女なんだよな。やり口といい、日頃の行いといい」
「また殴り合いする?」
「言っとくけど、この前は殴り返さなかっただけで次は本気でやるからな」
「それで勝てると思ってんの? 私だよ?」
「…………何とも言えないのがすげぇ悔しいわ」
そこには澪が、見つけて当然でしょ、とでも言いたげな顔で入っていた。
何と傲慢。何と強欲。
これでこそ俺の大好きな女の子だ。
「っていうか、なんで濡れてるの?」
「なんでって……澪は他の二人が隠れてる場所、知らないのか?」
「ん、知らないよ。どこだったの?」
「雫は三年F組で、大河はプールだな」
「ああ、なるほどね。それでずぶ濡れなんだ」
「そういうこと」
澪は掃除ロッカーに入ったまま、くすくすと笑う。
そっと手を俺の頬に伸ばし、濡れた後れ毛を愛おしそうに弄った。
「しれっと私の前に二人のところに行ってるあたり、色々と思うところはあるけどね。この浮気者」
「一人を選ぼうとした日にキレて殴ってきた奴の言葉とは思えねぇ」
「それはそれ、これはこれ。まぁ最後なのはそれはそれでありだし、いいんだけどね」
「あっ、そう……」
つくづく振り回してくる女すぎる。
いや、振り回してすら来ないか。追いつけないなら知らないとでも言うほどに思うがままに動く。それがこいつなのだ。
「っていうか、この隠れ方をしてる時点で澪は大河のことが実はめっちゃ好きだろ」
「は? 別にそんなことないしちょっと可愛いし色んな意味でいじめたいし言い争うのは楽しいなって思ってるだけで別に全然好きじゃないちょっとしか好きじゃないし」
「句読点一切挟まず言い切ったよ……しかもそれ、絶対好きって意味じゃん」
「っ……うっさいなぁ。いいでしょ別に。なに、嫉妬してるの?」
「どうだろうな。ちょっとだけ嫉妬してるかもしれん」
はっきりと告げると、澪は呆気に取られたようにぱちぱちと瞬いた。
「ふ、ふぅん……嫉妬してるんだ?」
「ちょっとな。でも、気持ちのいい嫉妬っていうか……悪くない方向のヤキモチだな、とは思ってる」
「ということは、気持ちがよくなくて悪い方向の嫉妬を知っている、と」
「そういうの、揚げ足取りって言うんだぞ」
「誘導尋問とか犯人しか知らない事実を口にしたことによる推理って言ってほしいけど?」
「どっちもあんまり歓迎されないからな、それ」
軽口を返すけれど、澪は俺を逃がす様子がない。
あー、はいはい、自白するまで許してくれない感じね。これは誘導尋問ではなく長期取り調べによる自白の誘導では?
俺は観念したように溜息を吐いてから白状する。
「そうだな、悪い方向の嫉妬も知ってる」
「たとえば?」
「…………夏に告られてるのを見たときとか」
「ふぅぅぅぅん?」
「おいやめろその顔」
澪が蠱惑的な笑みを浮かべた。
ぺろりと舌なめずりするのが妙に色っぽくて、血がぞわぞわする。
「他にはないの?」
「は? 他に?」
「そ。たとえば――『可愛い女子ランキング』とか」
「ぶふぅぅぅっ……!? それ、知ってたのか?!」
「白雪ちゃんからこっそりと」
『可愛い女子ランキング』。
如月の要望に応え、晴彦が校内の男子ほぼ全員が揃ってるグループトークで投票を募り、定期的に作っているランキングだ。
最近は気にしていなかったが……そう言えばこの前、今年最後のランキングが出たって言ってたな。
「さぁ問題です。今年最後のランキングの1位は誰でしょう?」
「………………澪、じゃねぇの?」
「正解。どう、嫉妬しない?」
澪が試すように俺を見つめてくる。
くっそぅ、卑怯すぎるだろそれ。こんなの正直に言うしかなくなるじゃねぇか。
「……残念だったな澪。一周遅れてるぞ」
「え?」
「春にそのランキングの存在を知ったときからモヤってた。俺のセフレが高い順位だ、って思ったら、優越感とか嫉妬とかがぐちゃぐちゃになってたよ。ぼっちだとは思ってたけど、まさかそこまで人気があるとは思ってなかったからな」
「~~っ、へ、へぇ」
ぷいっと顔を背けた澪は、そのまま掃除ロッカーを飛び出した。
室内灯に照らされて、くるくると可憐に回る。
――ああ、奇麗だ
鮮烈に思った。
「つーか……話逸れすぎたな」
「ほんとね。誰かさんのせいで」
「それを言い始めたら、誰かさんのせいでこんなおかしなゲームが始まってるんだけどな」
俺が言うと、澪の表情が僅かに歪んだ。
「おかしなゲーム、ね。どうして私のせいだと思うの?」
「こんな迂遠なやり方をするのは俺と同類の澪だけだから。ま、ゲームの内容自体は時雨さんが考えたんだろうけど……澪は時雨さんをけしかけた。いや、けしかけられたからけしかけ返した、って感じか」
三人とのかくれんぼは雫が考えたことらしい。が、その雫はゲームの内容については知らなかった。そもそも雫は時雨さんとそれほど話すタイプじゃないし、別の方法を選ぶだろう。大河にも同じことが言える。
ならば残るは澪だけだ。
「同類、か」
「違うか?」
「どんなところが同類だと思うの?」
「性悪なところ」
「女の場合は愛嬌って呼ぶけどね」
「シスコンなところ」
「妹を愛さない存在の方が意味分からないよね」
「面倒くさいところ」
「私別に面倒くさくないし」
「間違えてばっかりなところ」
「それもこれも、友斗がこれだけ好きにさせたせいだと思うんだけど?」
「……その台詞、そのまま熨斗つけて返してやるよ」
こういうところが、どこまでも同類だった。
二人で顔を見合わせ、ふっ、と破顔する。
くつくつ笑った後に、ふぅと一呼吸した澪が言った。
「まぁ友斗の言う通りなんだけどね。……霧崎先輩曰く、友斗が私たちを好きなのは美緒ちゃんへの未練が理由なんじゃないか、って」
「それでこんな方法を?」
「そ。元々友斗に私たちを見つけさせようとは思ってたからね。霧崎先輩にはちゃんと友斗が私たちを見つけるところを見せて、分かってもらおうと思ったんだよ。《《永遠の愛なんてない》》、ってことを」
「なるほどな」
言葉で伝わるはずはない。
時雨さんは言葉を紡ぐ道に進む。だからこそ余計に俺たちの言葉は届かない。それでも届けたいと思うなら、こんなやり方をするしかない、ってことか。
「やっぱり澪は澪だよな、本当に」
「褒めてる? 貶してる?」
「貶した部分もまとめて愛してるって言ってる」
「……いい口説き文句じゃん」
「だろ」
言うと、澪は肩を竦めた。
それから窓際に向かって歩を進め、雨降る外を見つめてから今一度こちらに向き直る。
「テスト……最後の最後で、負けたの、むっちゃ悔しいんだよね」
脈絡のないその一言は、しかし、どうしようもなく澪らしい。学年末テストは俺が1位、澪が2位の座に収まったのだった。
「歌の練習が始まってからなら言い訳もできたけど……そうじゃないし。いつも通りの全力でやって、負けた」
「そうだな。俺も全力でやって、勝った」
「だから――決めた」
澪は手で銃を作って、その銃口を俺に向けた。
「私は永劫に友斗の戦友でい続ける」
「戦友……?」
「そ。私も“そっち側”に行く。友斗だけじゃ伝えられないものを伝えて、友斗じゃ届けられないものを嫌味たらしく私が届けてやる、ってこと」
それはつまり――澪も創作の世界に来る、ということで。
どこまでも唐突なその告白を、俺は何故だか自然と受け入れていた。
「ま、どんな形になるのかは未定だけどね。私って割と何でもできる秀才だし」
「イラスト以外って条件がつくだろうけどな」
「うっさい」
ばーん、と澪がトリガーを引く。
俺がわざとらしく撃たれたフリをすると、はっ、と澪が小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「演技が大根どころか小根」
「わざわざノってくれた俺に対してその言い方はあんまりじゃない?!
「それはそれ、これはこれ」
「そういうところが性悪なんだよなぁ」
愛嬌ではなく、紛れもなく性悪だと思う。
俺は苦笑し、それから澪に手を差し出した。
「まぁそういうことなら……公私ともに戦友でいてくれ」
「ん、そのつもり。友斗がぼやぼやしてたらあの二人は私が独り占めするから」
「そうならないように、努力するよ」
差し出した手を銃にして、ばーん、とトリガーを引く。
澪はふっと魔女のように笑うと、胸を抑えながら言った。
「今宵、私はあなたにハートを撃ち抜かれてしまったようです。どうか私と踊っていただけませんか?」
「――っ、それは責任を取らなくてはいけませんね。お手をどうぞ」
なるほど、これは確かに小馬鹿にされるのもしょうがない。
そう思えるぐらいの名演だった。
銃を手に戻して差し出しなおせば、澪がその手を取る。
「~~♪~~♪」
「ちょ、それ、別にこういうときの歌じゃねぇだろ」
「いいじゃん別に。ほら、続けるよ」
「ったく……」
澪が口ずさみ始めた歌の名は『WHITE RUNNER』。
純白を駆ける彼女のための歌だ。
澪に合わせて、でたらめなステップを踏む。
タップダンスとか、ジャケットプレイとか、何となくそれっぽいことを澪がこなして、俺はそれについていく。逆に俺がそれっぽい動きをしてみせれば、澪も負けじとついてくる。そうやって、結果的に並走して見えるくらいが、多分ちょうどいい。
「――っと」
歌が終わりそうな頃。
気を抜いた瞬間、澪が俺の足を踏んだ。気まぐれなその動作に驚いた俺は、後ろにバランスを崩してしまう。
「ってぇ……」
「どうよ。押し倒してみたけど」
「どうよ、じゃねぇよ。会議室の床に薄めとはいえカーペットが敷かれてることに初めて今感謝したわ」
澪も当然バランスを崩し、というか半ば確信犯な様子で俺の体に覆いかぶさった。
こうやって押し倒された経験はないわけじゃない。
たとえば――そう、裏切りが始まったあの夜とか。
「興奮してる?」
「……するだろ、そりゃ」
「シちゃう?」
「シない。この後ライブだろうが」
「ま、ね。……じゃあその代わりに、一つ面白いことを教えたげよっか」
「は?」
言って、澪は耳元に口を近づけてくる。
そして、
「実はね――」
全てを揺るがしうることを口にした。
あの人のどうしようもない最低さを暴露され、は? と頭が混乱する。
「……マジなのか、それ」
「本人も確かめてはないんだって。その後ちゃんとシたらしいから。ただ事情を知って、もしかしたらそうかも、とは思ってたらしい」
「なる、ほどな……」
澪がどうしようもなく歪に、けれどどうしようもなく無邪気に笑っている。
「どうする? バラしたら、折角まとまりかけてたものが全部壊れちゃうかもよ?」
試すようなその言葉に、確かにな、と胸のうちで首肯する。
《《これ》》はあまりにも劇毒すぎる。下手をすれば全てを壊しかねない、悪魔のような話だ。
けれど、
「俺たち四人が壊れることはないだろう」
「……ふふっ。私たち四人で守り続けるんだし、当然でしょ」
「俺たちにとっては、どうでもいい事実だしな」
「プレイのスパイス程度にしかならないって思えてる辺り、歪みきってるよね」
「ほんとそれな」
事実かどうか確かめる術はあれど、確かめたところで俺たちが何か変わるわけではない。
だからなんだって話なのだ。
「まぁ、あの人のために黙っとこうぜ。世話になってるんだし」
「ん。あ、でもトラ子辺りはいつか気付くかも。勘がいいし、知りたがりだし」
「俺も雫にうっかりバラしちゃうかもしれないし……そのときはそのときってことで」
毒を食らわば皿まで。
皿どころかおかわりの毒を飲み続けた俺たちは、今更この程度の劇毒で狼狽するわけがなくて。せいぜい餃子にかけるラー油とか、豚汁に加える七味とか、寿司のワサビとか、その程度にしかならない。
二人でくすくすと笑って、それで、と澪に言う。
「これ、いつ退いてくれんの?」
「んー。考えたんだけどさ。今友斗とキスすればお得だと思うんだよね」
「お得とは?」
「雫とトラ子と間接キスもできて、友斗の唇まで貰える。一口三接吻ってところ?」
「発想がすげぇな……そういうとこ、ほんと好きだわ」
でしょ、と言う澪の顔は、どこか色っぽかった。
獣のようでありながらも乙女チックに唇を濡らし、ん、と目を細める。
「ちょうだい?」
三度目のくせに、初心者みたいに唇を尖らせていた。
――ああ、好きだ
原始的とは大きく外れたところで、強くそう思った。
だから、
――ちゅっ
三度目の正直をした。
「…っ、やば。どうして……?」
「えと、何が?」
「いや、なんか、その…………前より、超気持ちいい」
「――っっ!? ……当たり前だろ。あのときは好き合ってなくて、今は好き合ってるんだ。しかも雫と大河の間接キスのおまけもついてる」
「そっ…か。ねぇ、死んでもキスしてね?」
「……好きでいる限りは、永遠に」
「ん」
澪とのファーストキスは、ほんのり埃の混じった汗の味がした。
『難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき』




