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私と彼の物語。  作者: 月夜
1/1

これは私と彼の悲しくて、痛くて、苦して、優しい、そんな音楽を紡ぐ物語

誰だって考えたことがあると思います。なんのために生きてるのか…自分は必要とされているのか…

同じ苦しみを持つ人が少しでも、少しでも、明日も頑張ろうと思えるような、そんな小説を書きたいと思います。

"花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。"

誰がそんなこと言ったんだっけ?正直に言おう…



当たり前じゃないか!



失礼、取り乱してしまった。

花は散るために咲き誇る訳ではないし、人は死ぬために生きる訳ではないはずだ。

じゃあ…私はなんのために生きてるんだろうね



「おはよう、奏」


「おはよう律花」


「かなでー、宿題見せてよ」


「えーまた?自分でやりなよ」


「賢くて優しくて可愛い奏様!見せてください!」


「今日だけだからね」


「ありがと〜!!神様だ」


「はい、はい、そんなこと言ってないでさっさとやりな」


「奏、先生が手伝って欲しいことあるからって言ってたよ」


「んー今行く」

代わり映えのしない毎日、仲良くしてくれる友達、頼れる優等生の私。なにも不満なんてないはずだ。だけどさ、この年頃じゃん、多感な時期じゃん。色々不安になっちゃうじゃん。

勉強のこと、人間関係のこと、将来のこと。

どれも全部、全部ちゃんとしなきゃって…ちゃんとできなきゃ、自分に価値がないと思われなきゃ、その時点で使い捨てのティッシュのようにポイってされてさ、私の代わりを据えるんでしょ。わかってるよ、今の時代は取り替えのできる人間なんていっぱいいるもんね。私がいてもいなくてもさ、世界は変わらずに回ってしまうんだって、大人になればなるほど知ってしまったんだよ。こんなこと知ってしまうくらいなら、子供のままでよかったよ…



「か…で、…なで」

「奏ってば!」


「え?ど、どうしたのさ。そんな大きな声出して」


「さっきから何回も呼んでんのに、ボーッとしてたじゃん!」


「あ、あぁ、ごめん、それでどーしたの?」


「だから、隣のクラスに転校生きたじゃん。その子が奏のこと、呼んでるよって。ほらドアのとこにあるあの子」


「あんた、何したのよ。あの子何考えてるかわかんないからって気味悪がられてんのに」


「呪われんじゃない?」


「笑やめなよー」


「あの子が私のこと呼んでるの?ちょっと行ってくるね」

真っ黒な髪に吸い込まれていきそうなほどの漆黒の瞳、ありえないくらい白い肌…まぁ、確かにちょっと、気味悪いわね。


「ねぇ、私のこと呼んだの君?」

深い沼のような瞳がこちらを向いた。


「ウン、アノ、ニガイドウサンオンガクツクレルッテキイタンダケド…」


「なんて?ごめんもうちょいおっきな声出してくれる?」

ボソボソ喋られんの嫌いなんだよ…腹から声出せよとか思ってたらさ


「二階堂さんって!!音楽作れるんだよね!!音楽やってたんだよね!!」


ニカイドウサンッテオンガクツクレルンダヨネ?オンガクヤッテタンダヨネ?

「…………………は?!」

「ちょ、あ、え、は、ちょい場所変えよ」


「うん」


みんなが見てたじゃん…バレた?いやそんなことないよな。私の声がおっきかったからみんなが振り向いただけ、転校生の声が大きかったからじゃないはず…


「ここなら大丈夫なはず、それで?どこで聞いたのそれ」


とりあえず屋上なら、誰も来ないはず、誰も聞こえないはず


「あ、ごめん。突然名乗りもせずに変なこと言って

俺、右京音羽って言うんだ。そ、それでね二階堂さん音楽活動してたよね。俺、ずっと好きファンだったんだ。"えすぶれしーぼ"さんの音楽が。二階堂さんだよね。えすぷれしーぼとして曲作って歌ってたの。」


こいつは何を言っている。なんで、なんで、なんで、知っているんだ…は、は、早くなんか答えないと。疑われてしまう…


「えすぷれしーぼ??何それ?ボカロPか何か?私そう言うの疎いからよくわかんないや」


「二階堂さん、惚けないでよ。俺わかるよ、言葉のアクセントの付け方、抑揚の付け方、声の音色、息継ぎの仕方、全てが君をえすぷれしーぼだって言ってるんだ、ねぇ、君でしょ?あの音楽を作ってたの、君でしょ?あの歌詞を書いてたの、」




「はぁー、そうだよ。音楽つくってた、歌詞書いてた、歌ってたよ。けど全部過去の話。もう、曲も歌詞も書かないし、歌わない。」

だって、私が作ってもさ…


「なんで、なんで、どうして、活動やめたの?俺もっと聞きたかった。君の音楽…それで」


「やめて、もうえすぷれしーぼとして音楽はやらない。私の音楽を評価してくれるのは嬉しいけど、もう嫌なんだよ、音楽をするのは。だからやらない」

彼は私に何を求めている?私の過去も、今もなんも知らないくせに…。音楽なんてもの、やっても、何にもならないじゃん。時間の無駄だよ。


「あ、あのさえすぷれしーぼとしては音楽やらないってことはそれ以外としてならしてくれるの?」


「は?」

こいつは何を言っている…?何が目的だ、私にこんな話をして何がしたい。


「はっきり言って、何が目的?」

あー胸糞悪い、早く私の有意義なお昼休みに戻りたい。


「俺、音楽で飯食えるようになりたいんだ。だから俺と、一緒に音楽作って欲しいんだ」


…………は?こいつは何言ってんだ?斜め上の解答すぎて脳がバグりそうだ。こいつ今、なんつった?


「待って、ツッコミどころが多すぎて理解が追っつかないんだけど、えーと、どこからつっこめばいい?えーまず、なんで私?それで次に、なんで音楽なの?でその次に、音楽あんたできんの?」

ほんとこいつ、頭大丈夫か?なんでよりによって音楽なんだ。

他のことならなんでも手伝ってあげた。だって私はなんでもできる優等生キャラだから。けど、なんで、、、


音楽が、音楽は、音楽なんて、そんなことして、そんなことで、何が救える?そんなことで、何ができる?たった13個の音を繋いで、夢や希望みたいな、叶いもしないこと歌詞に書いて…それだけのことで何ができるって言うんだ。


「一つずつ答えると、まず、俺はえすぷれしーぼの音楽を初めて聞いた時、涙が流れたんだ。言葉を失った。それだけなにか胸をつかまれるものが何かはわかんないんだけど、あったんだよ。だから俺はそんな曲を作った二階堂さんと音楽がしたい。


二つ目、なんで音楽か?そんなのあの曲を聴いたからに決まってるじゃないか。俺もあんな音楽やりたい。芸術なんて微塵も理解できないと思ってたのに、あの曲を聴いた時、形容できない気持ちになって、そんで、そんで。言葉にはできないけど俺もああ言うのやりたい


三つ目、音楽は一切やったことない。さっきも言ったように、俺芸術なんて全くわかんなかったから。けど、あんまり一言で纏めたくはないんだけどこれが、運命ってやつなんだと思った。

俺が感動した音楽に出会ったのも、それを作った人が、同じ学校にいたって言うことも、全部、ぜんぶ、そう言うことなんだと思う。だから、俺と音楽してくれ」


「無理、ごめんね。ほんとに音楽はもうやりたくないんだ、そんなキラキラしたものばっかりじゃないよ、音楽なんて。さらに考えてみなよ、どれだけの人が音楽で食べて行きたいと思っていて、そのうちどれだけの人がそうなれるか…ほんの一握りだよ。努力だけではどーにもならないものだってあるんだよ。才能がいる、芸術なんていう、採点基準のないものは特にだよ。どれだけ頑張っても、凡人の努力しても、天才が同じだけ努力したらどうなるかわかるじゃん。そう言うこと、もうおしまいね。

じゃぁ、私は教室戻るから。5時間目も始まるし…じゃあね」


あーほんとに気分が悪い、夢見すぎだっつうの。音楽やったことないやつがそんなこと言ってさ…


『 ♪            


                           』


っ!こいつが歌ってるのか?右京が、この声を出しているのか…?なんて、なんて、悲しい声なんだ…、なんて、なんて、

どれだけの絶望の中にいるんだ…


『 ♫     

                           』



私が初めて作っだ…こいつは、こんな風に歌うのか。言葉が出ない、いや違う、言葉に表せない。胸が、苦しくなるような、刃物のように突き刺さるような、それでいて、誰かに救って欲しいような、そんな弱さがあって…






「二階堂さん?!なんで、

                     泣いてるの?」


へ?誰が泣いてるって?

あぁ、私か。泣かずにはいられない。こんな歌声聞かされたら…こんなにも、感情のこもった音楽を聞かされたら…心を動かされないわけがない…。


「いいよ、」


「へ?」


「だから、いいよって言ってんでしょ。あんたと音楽してあげていいよって言ってんの。」

こんなにも、悲しくて、痛くて、苦しくて、優しい音楽聞かされたら、もう一回信じてもいいかなって思っちゃうじゃん。もう一回やってもいいかなって思っちゃうじゃん。


「二階堂さん!!ありがとう!」


そんな嬉しそうな顔してさ、音楽始めた時の私みたいな顔してるじゃん。


これは、私と彼の物語。誰にも代役はさせてあげない、誰にも奪われやしない、悲しくて、痛くて、苦しくて、優しい、そんな音楽を作る私と彼のここから始まる物語。


きっと私は、やっぱり、音楽をするために生きてるんじゃないかな。そんな風に今日、思たよ。


(to be continue...)

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