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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ごゔりんクイーン~最高の魔法を授かったと王太子の婚約者にされたが勘違いだったと婚約破棄を言い渡された侯爵令嬢が魔法使いの女王と言われるまで~

メリークリスマス&ハッピーニューイヤー


23作目です。


よろしくおねがいします。

「侯爵令嬢!聖なる夜であるこのクリスマスパーティーで、せっかくだから王太子である俺は貴様との赤い婚約破棄を選ぶぜ!」


 今日は楽しいクリスマス。そしていつもは卒業パーティーで行われる婚約破棄騒動がスペシャルエディションとして学園クリスマスパーティーにやって参りました。


「あらあらうふふ・・・。これはこれは王太子殿下。このようなめでたき日に衆人環視の元、婚約破棄とは一体どうしたことでしょうか?クリスマスケーキに腐ったあずきでも入っていましたか?」


「うるさい黙れ。貴様のような役立たずとの結婚など将来王国を背負って立つ俺がするのはどう考えてもおかしい。よって貴様ではなく聖女との婚約を新たに結ぶものとする!」


 王太子がそう言ってとある男爵令嬢のもとに歩いていく。


「この国に聖女という役職はなかったと思いますが、ひょっとして聖なる夜だからということですか?」


「そんなわけがなかろう。彼女の持つ聖魔法は傷や病を直す極めて有用な魔法だ。よって男爵令嬢こそ聖女である。貴様の持つ想像魔法などという何の役に立つかわからない魔法と違うのは確定的に明らかであ~る」


「ああ性魔法ですか。今日はセックスナイトですものね。まだ成人前なのに汚らわしい」


 日本で一番セックスが多いのはクリスマスらしいですからね。


「ちげーよ。ホーリーマジックにホーリーナイトだよ。謝れ!世界中のクリスチャンに謝れ!というかそんな日にこんな駄文書いて登場人物に言わせている作者にだけは言われたくね―よ!」


 悪かったな。ほっとけよ><


「それはそうとこの婚約は王家の希望で結ばれたはず。そのためやりたくもない王妃教育を何年もするはめになったのに、随分勝手をされるのですね。それに婚約破棄など国王、王妃両陛下がお許しにならないと思いますわ」


「うるさい!そもそもの話が貴様の『授かりの儀』で、歴史的偉人である大賢者の持つ『創造魔法』を授かったというから結ばれた婚約ではないか。それが蓋を開けてみればどうだ。何の役にも立たない『想像魔法』ではないか!」


 この世界では魔法使いは大変希少で大体10万人に1人その能力が発現すると言われている。そしてそれを調べるのが5歳の誕生日に行われる『授かりの儀』だ。


「仕方ありませんわ。だって当時は漢字を理解していませんでしたもの。天の声さんにいわれたのは『そうぞうまほう』でそのままそれを伝えただけですわ。それを王家を始め周囲が勘違いしちゃっただけよね!べっ別にあんたのためなんかじゃないんだからね!」


 なにか微妙に外したツンデレモドキさんである。


「確かにこちらの落ち度もあったのは認めよう。だが8歳で想像や創造の漢字を習い、大賢者の使った魔法が使えないのがわかった時点で婚約は解消されるべきだったのだ。それを魔法の内容はわからないがとりあえず希少だからと放置した結果が・・・」



 ぶちゅうううううううううううううううううううううううう!!


 いきなり第二王子からキスをされる王太子。


「「「「「きゃああああああああああああああああああああ!」」」」」


 そして響き渡る黄色い声援。本日のメインイベントである。いや長いですね。というか舌入ってますね、これ。


「「おえええええええええええええええええええ」」


 せっかくのレッドカーペットが吐瀉物まみれですよ。そして興奮した顔でその行為を見つめる御令嬢達。


「ごゔじゃぐれ゛い゛じょゔ・・・」


「あらあら、せっかくのイケメンが涙とゲロで大変なことになっておりましてよ。気にせずいつものように蔑んだ涙目で『ごゔりん』とお呼びくださいな」


 王太子が見上げるとドSでドMでBL趣味のとんでもない変態悪役令嬢がそこにはいた。


「こんな・・ことが許され・・・・ると思っている・・のか!」


「嫌ですわ。魔法を解くのはいつだって王子様の口付けです。すぐに魔法も解除されるのですし、実害はないではないですか?」


「ありまくりだ。特に精神的なものは取り返しもつかん!」


 どうも侯爵令嬢はロマンチストで魔法もその影響を受けているようである。王子様の口付けは想像魔法専用のイマジンブレイカーである。その妄想をぶち殺す!


 そして時間を置いて立ち直った王太子達に追い打ちをかける。


「あらあら両殿下ったら・・・嘔吐に加えて戯言とは、折角のクリスマスですが、飲酒は節度を持って頂かないと・・・」


「素面だよ!もううんざりだ!貴様の想像魔法とやらに振り回されるのはもうゴメンだ。貴様の魔法などその妄想が現実化するだけではないか!男同士にキスなどさせて何が楽しいんだ!?」



 *



 侯爵令嬢の想像魔法が実際に使用されたのは彼女が学園に入学した12歳のときであった。王妃教育を受けているため授業の一部は復習だった。このため、窓から外を見ていると婚約者である王太子が歩いていた。そこでついやってしまったド○ルドのように妄想を働かせた結果、とてもすごいものを見てしまったのだ。


 王太子と第二王子が口づけを交わす光景。夢に見ていた美しい絵画キャンバスがそこにはあった。


 そしてその後の行動は早かった。王太子を騎士団長にサバ折りをさせ、婚約者を格闘家に縦四方固をさせ、風邪と聞けば美しき兄弟をガチムチ典医に座薬を入れさせた結果、自らの想像した結果がそのとおりに実行されることを知ったのである。


 こうして王太子を中心にその他イケメンたちを実験台にした結果、侯爵令嬢は学園の女子カーストトップに上り詰め他の女子生徒たちの絶大な支持を受けるに至った。


 ちなみに18禁行為まではさせていないのでケ・ン・ゼ・ンである。



 *



「何を仰るんですか。イケメン同士の恋愛は眼福!これ以上の娯楽など世の中を見回しても何処にもございませんことよ。子爵令嬢、学園のアンケート結果をこれへ!」


 侯爵令嬢が取り巻きの子爵令嬢を呼ぶ。


「かしこまりました。こちらが学園女子の結果です」


 ・王太子×第二王子こそ至高

 ・王太子殿下さえいればご飯三杯はいける

 ・おかずに困らない人生最高

 ・侯爵令嬢様に一生ついていきます

 ・女王様ばんざい

 ・同性間なら浮気にならない。婚約者を提供するからもっとやれ


「以上のような意見が90%を占めております」


「ご理解いただけましたか?王族たるもの民の意見に耳を傾け、その要望を叶えるのがその使命。まさにノブレス・オブリージュですわ!」


 侯爵令嬢がうっとりした顔で民の総意として王太子に告げる。


「世の中が女だけで回っていると思うな。全校生徒の半数以下のアンケートではないか。何がノブレス・オブリージュだ。というかパワハラにセクハラだぞ!」


「いえいえ、こんな事もあろうかと・・・・子爵令嬢!」


「はっ!こちらが男子のアンケート結果でございます」


 ・イケメン死すべし。慈悲はない

 ・イケメン同士がくっつけば女の子の競争率が下がるかな?

 ・すまない。本当にすまないと思うがそのまま犠牲になっていてくれ

 ・騎士団長のサバ折りはお前のものだ

 ・ウホッ!いい男

 ・やらないか


「以上のような意見が90%を占めております」


「男子生徒のアンケートでも王太子×第二王子が支持されていますわね。これはもう逃げられませんことよ」


 満足そうに頷く侯爵令嬢。


「ふざけるな!というか後ろの2つは何なんだ。もうやだ、この学園。だいたい他の男とくっつけたいな婚約破棄に同意しろよ。王妃教育もしなくて良くなるしお前の婚約者だから妄想の対象にされるんだろ!?何なら慰謝料もつけるから。俺は聖女ちゃんと幸せになるから放っておいてくれよ」


 王太子が侯爵令嬢に懇願する。


「それは出来ませんわ。なぜなら・・・」


「なぜなら?」


「殿下の顔が好みだから。BLなら誰でも良いというわけではありませんことよ。殿下の男色を間近で見るために。殿下の男色をもっとも間近で見るために!わたくしは止まらねーからよ!それに男爵令嬢さんは殿下と結婚する気がございまして?」


「いつも俺を支えてくれた聖女ちゃんだ。当然だろう」


 そう言って男爵令嬢さんを呼び寄せる。彼女はゲロの始末に聖魔法で《浄化》を使っていたところだった。ゲロ男の世話までするとはさすが聖女と言われるだけのことはある。


「あっすみません。私は殿下たちを2番目に良い席で見ていたいだけの一般人ですのでお構いなく」


 微笑みながら、あっさり風味の告白の返答。清々しい返答は清く正しい聖女ならではのもの。


「そっ、そんな・・・」


「だいたい婚約破棄など両陛下がお許しになるわけがありませんわ」


「そんなわけなかろう!」


「やはりご存知なかったのですね。ここはきちんと理解して頂かないと・・・」


 侯爵令嬢がそう言うと、いつの間にかやってきた国王と王妃が息子に語りかける。


「息子よ。そんな事があるのだ。公爵令嬢は極めて有能な魔法使いなのだ」


「何処がですか?」


 王太子は信じられないと父王に問いかける。


「その方は知らんのだろうが、実は昨年北の帝国が我が国に侵略のための兵を起こした。しかも指揮官は勇名で知られた皇太子で率いるのは直属の最精鋭部隊。我が国に勝機は少なく滅亡の危機であったのだ」


「そんなことが・・・。しかし実際には戦争は起こりませんでしたよね。それと侯爵令嬢の魔法にどういった関係が?」


「もはや戦争は時間の問題、宣戦布告の使者も来ていた。そんなときに彼女は想像したのだよ。皇太子がマザーファッカーであるということを!」


「え゛?!あそこの皇妃って確かオーガキングが可愛く見えるとか言われるほどの猛者で、息子が勇猛なのは母親の遺伝だろうとか言われている・・・」


 皇妃は身長2m、体重120kg。無駄な脂肪は一切なくその体は巌のごとくと言われている。所謂モデル体型ボディービルである。吹き替え担当は玄○哲章か大○明夫かささきいさ○あたりだろうか?


「そうよ。その結果皇太子は返り討ちにあい、尻穴にハイヒールを突っ込まれた結果切れ痔になり、今では馬にも馬車にも乗れない状況とか?イケメンも武名もああなってはお終いよね」


「回復魔法などを使えばよかったのでは?」


「部位欠損レベルで肛門が抉られたそうよ」


 王妃がさも残念そうな顔でため息をつく。部位欠損は並の回復魔法では直せないのだ。皇太子は近隣でもイケメンとして有名であったので、その姿を惜しむ御婦人も多かったらしい。自国の平和は大事だがイケメンも大事というところだろうか?


「こうして王国の平和は守られたのだ。」


「なんだか嫌な守られ方ですね」


「そういうことで今では王国に喧嘩を売ろうとする国は皆無なのだよ。彼女さえいれば我が国は平和だ」


「それにしてもよく隣国の皇太子なんて想像できますね」


 王太子が疑問に思うのも当然で普通の魔法はそんな遠距離で発動することはないし、想像しようにも会ったこともないはずである。


「そこはほら、私ってばモテモテだったじゃないですか?幼少の(みぎり)より大量の釣書が送られてきておりましたから・・・」


 侯爵令嬢は『そうぞうまほう』を授かったとされたときから、その力を取り込もうと周辺諸国から大量の釣書(ただしイケメンに限る)が送られてきていた。それはつまり周辺国のイケメンはほぼ全て想像魔法の対象になるということである。そりゃ誰も喧嘩を売れない。


「そこまでできるのか・・・。だったら天気を変えたり豊作をもたらしたりもっと有用な使い方を・・・」


「申し訳ございません。どうも私の魔法は人の愛に関することにのみ作用するようでして・・・」


「つっ、使えない・・・」


「あらいやですわ。こんなに王国に貢献しているというのに・・・。そんなことで私は次期王妃になるは決定しておりますの。そんな私を虐げた殿下にはペナルティーが必要ですわね」


 恐ろしい発言を聞いた王太子は真っ青になって自らへの罰を言い出す。


「仕方ない。侯爵令嬢との婚約破棄をした以上、廃嫡を受け入れ王太子の地位は第二王子に譲り、俺は伯爵あたりに臣籍降下して城を出ることに・・・」


 男爵令嬢にも振られている以上真面目な一般貴族で平和に暮らしたいと願う王太子。


「いやいや僕は嫌だからね。僕は隣国の王女が婚約者にいるし文のやり取りだけだけどラブラブだから」


 侯爵令嬢の想像のメインターゲットになりたくないので第二王子も必死である。


「嫌ですわ。王太子殿下。殿下のこと(主に顔)が大好きな私が、私の見えないところに追いやるわけがないじゃないですか。殿下には罰としてこれから108人の男たちの接吻を受けていただきます。煩悩退散!」


「貴様~!作者の無精に乗っかるとは何事か!クリスマスネタに年越しとあけおめまで乗せる気だぞ!」


「まあまあ・・・。細かいことは気にせずに。では全国の男子高校生のみなさ~ん!一列に並んでください。年末とメリクリのビックリドッキリメカ!ポチッとな!!」


 ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!ぶちゅ!・・・・・・・・・


 涙目の王太子と次々にキスを交わす男たちの列が続いていた。ついでに終わり次第第二王子にも・・・。


「「「きゃああああああああああああああああああああああ!!!」」」


 そして女性陣はよだれを垂らしながら見守る者、写真撮影をするもの、更にはその場でデッサンをするものまで現れた。





 こうして注意が王太子達に向いた頃、その悲劇は起きる。物陰から剣を振り上げた男たちが一斉に侯爵令嬢に襲いかかったのだ。


「死ね!この悪魔め!」


「え?」


 侯爵令嬢はとっさのことに反応できないでいた。


「危ない!」


 グサッ!


 とっさに侯爵令嬢をかばったのは婚約者である王太子であった。僅かな隙をつき並んでいた第三王子と口付けを交わし創造魔法を解除していたのだ。


「殿下?・・・殿下ああああああああああああああああ!」


 ゆっくり崩れ落ちる王太子


「きみが・・無事で・・よか・・・った」


 王太子の体に刻まれたのは誰が見ても致命傷だった。


「どうして私なんかを庇ったりしたのですか?」


 涙をためた侯爵令嬢が尋ねる。


「BLから抜け・・出したかったの・・かな?・・君のほうが・・・僕より国の役に・・たつんじゃ・・ないかって(ゴフッ)。それに・・・君の・・ことは・・・・嫌いじゃ・・・なかったよ。・・これまで・・・意地悪・・して・・・ごめんね・・・」


 力が抜けた王太子の手を握りながら侯爵令嬢は顔を上げ、剣を抜いていた10名の男たちを睨みつける。


「許さない!私の大切な人を!消えろ私の前から!そして永劫の苦しみの中で逝け!」


 侯爵令嬢の瞳に黒い炎が宿ると剣を持つ8人の目から光が消え会場の外に歩き出す。


「なっ、何をしたんだ!」


「二人抵抗(レジスト)したか・・・。かつて遭遇したゴブリンキングとの睦み合いを想像した。あの者達は未来永劫、北の森のゴブリン達の苗床です。ゴブリンの出生率も下がってちょうどよいでしょう。さて残りの二人は何回まで抵抗(レジスト)できますかね?私の魔力ならあと100回は魔法を発動できますよ。魔法で体は私の思うままですが意識はしっかり残っているそうですからお楽しみくださいね」


 冷たい目に炎を宿したまま口角を上げる侯爵令嬢。ゴブリンにはオスしかいないため近隣から人間や亜人の女性をさらってきては孕ませて子供を作る厄介な魔物だ。おとなになっても人間の半分ほどの大きさで妊娠期間は3ヶ月と言われる。だが男と交配しても子供は出来ない。そして成長の課程で上位種であるキングやジェネラル、メイジなどと言ったものに変異する者もいるのだ。その性欲は凄まじく尚且男が苗床になった場合妊娠期間がないため文字通り死ぬまで犯され続けることになる。


「ひっ。ゆっ許してください。我々は皇太子殿下に命令されただk・・(ガクリ)」


「やはり帝国でしたか・・・。おまえたちは哀れだ。哀れな犬だ。だが私の最愛に手を出したのだから許されることは絶対にない」


 侯爵令嬢がそう言うと意思なき人形のように残った二人も歩き出す。


「クリスマスパーティーが終わったら年末に向けて大掃除ですわね。執事」


「はい」


「帝国の全ての貴族や有力者の男たちの釣書と肖像画を用意しておきなさい。皇帝だけは外していいわ。一気に国が崩壊しても困りますから、皇帝と最低限(醜男)は残しましょう」


「仰せのままに」


 この場ですべきことは全て終わったと元の表情に戻り王太子の亡骸を見つめる侯爵令嬢。そして・・・




















「リザレクション!」


「え?俺死んだんじゃないの?」


 王太子が目を覚ますと侯爵令嬢が微笑みかける。


「死にましたよ」


「え?じゃあここは死後の世界?」


 王太子が混乱したように問いかける。


「目の前に私という天使がいるので勘違いするのはわかりますが、生き返っただけですよ」


 隣りにいた男爵令嬢が更に言葉を引き継ぐ。


「死後3時間以内であれば私の魔法で蘇生可能なんですよ。というか何のために聖魔法を使う男爵令嬢が登場してたと思っているんですか?」


「そういうメタい発言はヤメてね。というかそれなら死ぬ前にパーフェクトヒールとか使って直してくれよ」


「実は部位欠損を治せる分、リザレクションとハイヒールよりパーフェクトヒールの方がMP消費が多いんですよ。戦闘中には使えないとか制約も多いですけどね。ささやき-えいしょう-いのり-ねんじろ!」


「おい、それって、灰になったりロストしたりするやつだろ」


「大丈夫ですって。ダンジョン外なら1%程度の失敗。2回連続失敗するのは1万回に1回ですよ。その時は諦めましょう?」


 ちょっと首を傾げる男爵令嬢。かわいい。


「何故疑問形?というか俺の扱いひどくない?」


 男爵令嬢の説明が終わると侯爵令嬢が王太子に手を差し伸べ起き上がらせる。


「庇っていただきありがとうございました。蘇生できるとは言え痛いのは嫌ですからね。私の事を嫌っていないこともわかりましたし本当に嬉しかったですわ」


 王太子に向けて心からの笑顔を向ける侯爵令嬢。


「なんか変なことを言った気もするが、これからもよろしくな」


 少し赤くなり目線をそらすように答える王太子。


「はい。こちらこそよろしくお願いしますわね。それはそうとこれからで思い出しましたが、まだ108回の半分が残っておりますわ。頑張ってくださいね。応援しております」


 そう言ってキラキラした目を王太子に向ける侯爵令嬢。


「情け容赦ないな!というか命かけたんだから赦せよ」


「それとこれとは別腹ですわ。伝統行事なので108回は譲れない。それに期待しているのは私だけではありませんし・・・」


 学園の女子生徒は今日も元気です。







 数年後


「王太子妃殿下。年賀状が届いております」


 子爵令嬢改め王太子妃筆頭侍女が年賀状を持ってくる。


「どなたからかしら?えっとなになに・・・


『ごゔりんクイーン様


 あけましておめでとうございます。

 旧年中は何かとお世話になりました。

 お陰様を持ちましてゴブリン族の合計特殊出生率が1を切りました。

 このまま続くとゴブリン減少社会一直線です。

 本年はこれまでの不幸を乗り越え新たな関係を築いていけたら幸いです。


 追伸 これ以上男を送ってくるようなら戦争も辞さない。

 ゴブリン連合会総会長 ゴブリンエンペラー』


 あらあら面倒な男を適当に彼らのもとに送っていただけなのに、なにか起こったらしいみたいですわ」


 王太子妃になった侯爵令嬢はそれまで王太子に言われていた「ごゔりん」に女性とから女王様と崇められていること、それに加えて敵対した帝国の人間や盗賊(男)と片っ端からゴブリンの巣穴に突撃させた結果、『ごゔりんクイーン』と言われるようになっていた。


 合計特殊出生率とは簡単に言うと女性一人から何人の子供だ生まれるかという数であるが男の子の生まれる数は女の子のそれより5%ほど多いので2.05を切ると人口減少に向かうことになる。ゴブリンの場合は男しかいないのでゴブリン1人の一生に対する生まれてくるゴブリンの子供の数になる。


 ゴブリンの苗床になると麻酔効果のようなものが発生しなかなか死ねない。本来男の場合は肉として食われるのだが、彼女の魔法により男も苗床になった結果ホワイトクリスマス状態になっているのである。当然子供が生まれない。


 ちなみに魔法レベルが上った結果、顔を見なくても「ゴブリンキング×帝国貴族」というイメージだけ魔法が発動する。王子様の口付けもキング種には通用しない。これが階級社会の悲哀というものか?権力って重要だよね。


 そんなこんなで年賀状に返事を書く。



『ゴブリン連合会総会長 ゴブリンエンペラー様


 あけましておめでとうございます。

 旧年中はひとかたならぬ御交配にあずかり誠にありがとうございました。

 皆様におかれましては新年を迎え、

 ますますのご繁殖を心よりお祈り申し上げます。


 追伸 ゴブリン×オークもいいよね。

 ごゔりんクイーン』


 イノシシに乗ったゴブリンライダーの絵がついた年賀状がゴブリンエンペラーに届いたのはそれから数日後のことであった。イノシシを家畜化したのが豚であり、二足歩行する豚がオークである。


 この世界のオークも女がいない。2つの種族の絶滅が決定した瞬間であった。





 はるか未来の平和に満ちた時代


 王国の大聖堂には『オークに襲いかかるゴブリン達――レオナルド・デ・カチンコ作』という天井画が残されている。これはかつて存在し人間や亜人たちを苦しめた2つの魔物たちのハッテン場を描いたものとされている。そしてその絵画の空の中心には一人の女性が穏やかな顔でその光景を覗いている姿が描かれている。


 大聖堂を訪れる人々に大司教が問いかける。


「世界で最も偉大な魔法使いは誰だ?」


 大抵はこう答える。


「創造魔法を駆使し世界の理を築いた大賢者様です」


 大司教は次に尋ねる。


「では世界で二番目に偉大な魔法使いは誰だね?」


「世界から多くの魔物を駆逐し、エルフやドワーフ、獣人たちとの恒久的な平和を築き女騎士達をクッコロの運命(さだめ)から救い出した、我らが女王たる愛と想像の魔法使い、『ごゔりんクイーン』です!」


 これは無能の呼ばれた魔法使いの少女が魔法使いの女王と呼ばれるようになった軌跡とその治世の物語である。








 王太子「いやあいつの役職は王太子妃とか王妃だから。国王は俺で女王とかいないからね」


 女王が愛したと言われる伴侶は最後まで小さい男であった。


本年は書き手デビューをしましたが、右も左も分からない中感想などもいただき大変お世話になりました。


来年一発目は8万字程度のハイファン中編を予定しております。


来年もよろしくおねがいしますm(_ _)m


では良いお年を!

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