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1回戦 Sランク冒険者ゲーム4

「お、おい! 根岸と岡村は何か言い返せよ!」


 石原が取り巻きABに向かってそう言うと、取り巻きABは顔を見合わせた。


「えっと……とりあえず、他のクラスメート達がどこに行きたいか聞いてみてもいいんじゃないか?」


 取り巻きAが石原にそう提言した。正直に言うと、取り巻きABはどっちが根岸でどっちが岡村だったか忘れてしまっていた。


「俺もそう思うッス」


 取り巻きBはそう同意した。この2人が石原に逆らうところを見るのは初めてだったが、奴隷にされた挙げ句に殺されたという経験がよっぽど辛かったのかもしれない。

 子分達に裏切られた石原は不機嫌そうにムッツリと黙り込んだ。


 今がチャンスだと思い、石原は無視して話を進めることにする。


「ザイリック。冒険者になるには、冒険者ギルドで登録しないといけないんだよな?」


 俺はそう確認した。


「はいー」

「じゃあ、冒険者ギルドがある国の一覧表を出してくれ」


 残り時間を表示していたウィンドウ画面が大きくなり、数十ヶ国が表示された。


「さて、ここからどうやって絞り込んでいくか……。みんな、意見があったらどんどん言ってくれ」


 俺は石原と取り巻きAB以外のクラスメート達に向かってそう言った。


「ザイリック。それぞれの国の、ここ7日間の最低気温と最高気温を表示してくれ。温度の単位は摂氏で頼む」


 早速、青山がそう言うと、リストにそれらの項目がエクセルのように追加された。青山は予選でアルカモナ帝国に転移した直後に、もし大雪が降ってたらヤバいんじゃないかと気付いた、と言っていたから、それが気になったのだろう。

 最低気温がマイナス20度で最高気温がマイナス5度の国や、最高気温が64度で最低気温が33度の国もあった……。危ないところだった。聞いておいてよかったな。


「現時点での人口と面積も追加してくれ。面積の単位は平方キロメートルで」


 前髪眼鏡くんが眼鏡のズレを直しながらそう言った。

 ざっとリストを見ると、人口が1番多い国でも100万人に満たなかった。1番面積が大きい国でも、日本の面積の約半分の19万平方キロメートルだった。どうやらアジャイル星には小さな国が乱立しているようだ。それにしても、1つ1つの国の面積が小さすぎるような気がするが。陸地が少ないのだろうか?


「冒険者ギルドの登録者人数も追加して欲しい。あ、すでに死んでいる冒険者は除外した人数で頼む」


 小説家くんが左手首の包帯を右手で押さえながらそう言った。

 おお、初めて小説家くんが役に立つ発言をしたぞ。確かに、冒険者ギルドの規模を知るのは重要だな、と俺は思った。


「冒険者のランクごとの人数も表示してくれ」


 小説家くんの意見を参考にして、俺はそう言った。

 すると、ある国にSランク冒険者が6人も集中していて、それ以外の7人はバラバラの国にいることが判明した。


「えっと、世界地図を表示することってできますか?」


 佐古くんが遠慮がちにそう訊いた。一瞬で、今までの画面とは別の画面にアジャイル星の世界地図が表示された。どうやらメルカトル図法の地図らしいが、メルカトル図法には北極や南極に近づくほど実際の面積よりも大きく表示されてしまうという重大な欠点がある。


「佐古くん、グッジョブ。いい発想だ。ザイリック、どうせなら地球儀も出してもらえるか?」


 俺がそう言うと、俺の目の前に直径が150センチくらいの地球儀が出現した。実物ではなく、背後の景色が透過している、ホログラムのようなものだった。その中には、見慣れた日本列島の姿もあった……。


「これじゃないよね……」


 独り言子ちゃんが、自分の右手に嵌めたキツネのハンドパペット(手袋のようなヌイグルミ)に向かってそう呟いた。キツネがうんうんと頷く――って、この子はいったい、何をやっているんだろう? この子は予選開始前にも、自分の右手でキツネの形を作って、それに向かって話しかけていたけど、あのときより悪化してるじゃねえか!


「間違えた! 地球儀じゃなくて……何て言うんだ? アジャイル星儀(せいぎ)か? アジャイル星儀を出して欲しかったんだ」


 俺がそう訂正すると、地球儀が消え、地球儀のアジャイル星バージョンが出現した。陸地は山脈の形などが立体的に表現されていた。アジャイル星儀に触れることはできないが、その表面のあたりに手を置いて動かすと、アジャイル星儀も回った。


 こうして見ると、大陸や島の形は地球とは全く違うが、陸地の面積は地球と大差ないように見えた。そして、大陸の大部分が灰色に染まっていた。


「ザイリック、この灰色はどういう意味なの?」


 心愛がそう訊いた。


「人類未踏の地域や、魔族や魔物に支配されている地域や、滅亡した国があった地域などが、灰色で表示されていますー」

「魔族? そんな奴がいるの?」

「いますー」

「魔族って何?」

「世界によってその意味は違いますが、アジャイル星での『魔族』は、人間と同等以上の知性を持った魔物、という意味ですー」


 冒険者になれと言われた時点で、魔物がいるのは覚悟していたけど、魔族までいるのか。どうやらアジャイル星は、かなり物騒な星のようだな。


「もしかして、魔王とかもいるのか?」


 嫌な予感がして、俺はそう訊いた。


「はいー。魔王を自称している魔族は21人いますー」


 そんなにたくさんいるのかよ! 普通、魔王って1人だけじゃないか? ……いや、よく考えると、「王」を自称する人間はアジャイル星にも何十人もいるのだろうし、「魔王」を自称する魔族が複数人いてもおかしくはないのか。

 でも、魔王の数え方の単位って「人」でいいんだろうか? 魔王は結局、魔物の一種なのに、「人」はおかしくないか? と思ったが、今はどうでもいいや。


「その自称魔王の拠点場所もアジャイル星儀に表示してくれ」


 俺はそう頼んだ。その位置を確認すると、見事にバラバラの位置だった。そりゃあそうか。人間の「王」の拠点場所だってバラバラだしな。複数の魔王が同じ場所を拠点にしているわけがないか。


「魔族は人間と戦争しているのか?」


 前髪眼鏡くんがいつものように眼鏡のズレを直しながらそう訊いた。


「していますー」

「じゃあ、現時点で人間と魔族の戦場となっている地域を赤く表示してくれ」

「人間同士が戦争している場所もあったら、そこは黄色で表示して」


 前髪眼鏡くんの言葉に、腹黒地味子ちゃんがそう付け加えた。

 この話の流れで人間同士の戦争に着目するとは、腹黒地味子ちゃんらしかった。


「もしかして、アジャイル星は滅亡しかけているのか?」


 アジャイル星儀を見て、俺はそう訊いた。漠然と想像していた以上に、赤色で表示された地域の面積が大きかったのだ。


「滅亡しかけているかは主観によるため、お答えできませんー」


 ぬあああ! これだから魔法生命体は!


「1年ごとのアジャイル星全体の人口の推移を100年分、棒グラフにして表示してくれ」


 前髪眼鏡くんが眼鏡のズレを直しながらそう言った。


 そのグラフを見て、俺は愕然とした。


 99年前は10億人を超えていた世界人口が、10年前の時点では約2億人にまで減っていた。そして現在の人口は、たったの5000万人弱にまで減っていた。


 僅か100年の間に、人口が95パーセント以上も減ってしまっていたのだ。

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