表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還  作者: ろぜ C-ruby
8/73

8:衛兵

 身体がしんどかろうが重かろうが仕事は仕事。自分がこの仕事を選び、相手から託されたなら、責任が有る。

 登城し、執務室へと向かう。

 私はいつも、近道だしこの活気が好きだし、何より訓練所が見えるので王城の裏から入っている。きちんと許可を取ってこんな登城方法をとってる文官は私くらいだろう。

 すれ違う人達と挨拶を交わす。最初は公爵令嬢だからと怖がったり煙たがっていた人達だが、今ではすっかり打ち解けてくれ、有益な情報もくれる。…有り難い。

 丁度、騎士団は早朝訓練を終えた所だった様だ。

 エーヴィヒが私に気付き、駆け寄ってくれる。そのまま強く抱き締めてくれ、柱の影に入る。何も聞かず、言わずに、私が欲しかったものを直ぐにくれて嬉しいが、そんなに物欲しそうな顔をしていたのだろうか?エーヴィヒにスリスリされて心臓が跳ねて慌てる。

「ティリア、約束したばかりなのに、ごめん。汗臭いし砂っぽいが、許して」

 抱き締められただけで嬉しくてドキドキしてるのに、耳元で囁かれた事によって自分の心臓の音が強く聞こえてくる。

「エーヴィヒ、勤務中でしょ。嬉しいけど恥ずかしいわ。…何かあったの?」

「…ティリアが消えそうに見えて、怖かった。ティリアが足りない。もっとティリアが欲しい。ティリアを感じさせて」

 耳元で不安げに囁き、耳、頭のてっぺんやおでこ、頬にそれぞれ少しずつ熱を帯びたキスをくれる。

「え、それって…、!」

 生真面目な彼から、らしくない職務放棄ともとれる言葉と、びっくり発言をされて、戸惑い、鼓動が早くなる。

 何度も私の名前を呼ぶエーヴィヒ。…震えている。顔も真っ青だ。

 取り敢えず私の執務室で休む様に宥めた。


 私の執務室は重要書類が有る為、衛兵の巡回パトロールのルートに組み込まれている。巡回途中の兵が私達の姿を見て、直ぐに近寄って真っ青な顔のエーヴィヒを支えてくれた。ひとりは騎士団への連絡に走ってくれる。

 執務室内の三人掛けソファにエーヴィヒを座らせて、落ち着かせる。

「ティリア、すまない。取り乱した…」

「私はいいのよ、でも…」

「お前達も、ありがとう。恥ずかしい所を見せてしまったな。すまない。お前達も忙しいのに、対応してくれて感謝する」

 エーヴィヒは直ぐ対応してくれた衛兵二人に、青い顔で真っ直ぐ見つめて感謝と謝罪を伝える。 

「いえ、エーヴィヒ様のお役に立てたなら良かったです!」

「騎士団長より『本日は先日の代休にする、働き過ぎだ。今日明日は休め』と言付(ことつ)かっております。…エーヴィヒ様、僭越ながら私からも。大事な時期とは聞いてはおりますが、呉々もご自愛なさってください」

 エーヴィヒを心配する二人の衛兵。

「…あぁそうだな。ありがとう」

 青い顔ながらも微笑む。衛兵二人はエーヴィヒの笑顔に驚いたが、心底嬉しそうな顔をして、直ぐに退出していった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ