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帰還  作者: ろぜ C-ruby
59/73

59 side:エーヴィヒ 3

 穏やかに日々は過ぎた。

 転生仲間にも、特に目立ったトラブルは発生せず、日々は充実していた。

 俺も大事に大事にティリアに接して来た。

 時々それぞれに余計な横槍も入ったが…まぁ、人生はそんなモノだろう。

 俺が余りにティリアに対して大事に接してしまったが故に、彼女は俺を淡泊な性格だと思っている様だ。…本当に淡泊なら、いきなりキスしたり抱き締めたりはしないだろう。そんな勘違いをしている所も、可愛い。

 俺の学園での生活も後わずかとなった。

 そろそろ約束の期日も近づいて来ている。ティリアは俺をどう思っているのか、気になって来ていた。

 ティリアを逃がさない様にして来たつもりだ。しかしこれからの一年、俺は王城での騎士団員としての勤務。ティリアは未だ一年学園生活が待っている。この間にティリアの気持ちが変わるかもしれないと、何故か不安を強く感じていたのだ。

 もっとティリアの心を縛り付けていたい…。ティリアを感じていたい…。そんな思いで心も身体もティリアを欲し、強く疼いていた。

「あの、エーヴィヒ…少し時間を貰ってもいいかしら?」

 部室で二人きりになった時に、ティリアがもじもじしながら隣に来た。

「どうした?俺の時間は君の為に有るんだから、気にしなくていい」

 彼女の肩をそっと抱いて引き寄せる。瞳の奥をじっと見ると、不安な色に染まっていた。安心させる為にティリアの額にキスをする。

「あ、あの…後少しでエーヴィヒは卒業でしょ?私はまだ一年ここに居なくてはいけないのだけれど…」

 珍しく言い淀んでいる。

「ああ、そうだね」

「わ、私の方が年下だから、エーヴィヒと一緒に卒業出来ないのは、当たり前なのだけれど、その…あぁぁ」

 ティリアが混乱し始めた。彼女は一生懸命考えたり考え過ぎたりしていると、時々こういった事が起こる。また色々俺の事で考えてくれていたのだろうか?…自惚れか?

「ティリア、俺はちゃんとここにいるから。大丈夫だ。ゆっくりでいいよ」

 彼女の頭をゆっくり撫でながら、彼女の言葉を待つ。何度か撫でていると彼女の表情が落ち着いてきた。撫でながら、そのまま腕の中に閉じ込めてしまう。

「あのね、私とエーヴィヒは離れてしまうけれど…私は、これからも貴方を好きでいても、いい?」

 衝撃的な言葉だった。俺は彼女を鳥の様だと思って逃がさない様にして来たつもりだ。だが彼女のこの言葉は、俺が彼女の側からいなくなる可能性を彼女はずっと感じていたという事だ。それだけでは無い。ティリアは俺の(もの)だと彼女自身が望み、認めた事にもなる。

「ティリア…俺が君をこの腕から離すと思っていたのか?それこそ有り得ない。俺はこれまでも、これからも君を愛していくし、以前も言ったが、俺の心に決めた(ひと)は君だけだ」

 あぁ…喜びで胸が溢れて苦しい。だが努めて冷静に対応する。

「エーヴィヒ…私、これからも貴方の側にいてもいいのね?嬉しい」

 ティリアは瞳に涙を浮かべて喜んでいる。その目にキスをする。彼女が俺との事で喜ぶのが、嬉しい。愛しい。

「ティリアとの将来も考えているのに…そんなに俺は君を不安にさせる様な事をしていたのか?」

 彼女の髪を一房掴み、キスをする。

「いいえ。勝手に私が不安になっているだけ。…王城には綺麗な方々が沢山いらっしゃるでしょう?しかもエーヴィヒは騎士団入り…他の女性が放っておかないわ。そう思ったら…苦しくて」

 ティリアの口の端にキスをする。

「そんな変な事を言う口は、こうやって…塞いでしまおう。…安心して。俺の身も心も反応するのはティリアだけだから」

 言葉の意味が解ったのか、ティリアは茹でタコの様に真っ赤になった。仕方ないだろう、真実なんだから。隠していても仕方無いし、ティリアにも知っていて貰わなくては。

「着任して仕事に慣れるまでの暫くの間は、君に逢えないかもしれない。だが忘れないでくれ。俺は君の(もの)だし、君は俺の(もの)だという事を」

 ティリアの瞳の奥をじっと見つめて、彼女の心に深く刺さる様に言う。

「グルック公爵に正式に君との交際の許可を頂きに近々伺おうと思っている。君もそのつもりでいてくれ。いいね?」

「はい」

「泣き顔の君も、可愛いな…。ティリア、大好きだ、愛している」

 ティリアにキスをする。腕の中で泣いているティリアに欲望が高まった。俺も健康的な身体を持つ男だ。好きな女のこんな姿をみたら、めちゃくちゃにしてしまいたいと欲望が高まる。しかし彼女は公爵令嬢で、俺は公爵令息だ。簡単に身体を繋ぐ事は出来ない。

 …正直に言うと、このまま彼女をさらい、監禁して俺に溺れさせて孕ませてしまいたいとも思っている。あの隠しルートのエーヴィヒの様に。

 だがそんな事をしても彼女は喜ばないし、悲しむのが目に見えている…まだ俺の劣情を彼女に見せる訳にはいかないのだ。



 無事、グルック公爵から交際の許可を得、婚姻への道が開けた。まさか本当にあの口約束を公爵が守ってくださるとは思わなかった。

 …この一年間、余りティリアに逢えなかった。

 劣情は募るばかりだったが、勤務内容がハードだったせいか、どうにか発散出来ていた。

 レクス陛下が国政の改革を起こし、次年度から男女問わず優秀な者は王城勤務となった。転生仲間は全員選ばれた。勿論、ティリアフラウもだ。

 ティリアは王家に最も近い公爵令嬢…王弟の娘だ。しかも陛下に溺愛されている。陛下のお気に入りだからか、彼女は専用の執務室を王城内に持たされた。…その分、仕事量も多い様だが。

 騎士団に入隊して、自分で稼げる様になってから、俺はティリアに逢える日は必ず何かしらプレゼントを用意していた。この世界では男から女へ指輪を贈っていいのは家族か夫、もしくは相手の家族の許可が有る場合のみとなっており、俺の今の立ち位置では未だ指輪は贈れない。その為、最初はネックレスやピアス等の宝飾品を贈っていた。ティリアは最初は喜んでくれたが、次第に困惑する様になった。彼女に似合う物をと贈った物が、まぁ、高額商品だった事もあるだろうが。元々自分の物は自分で買うという考え方の彼女だ。俺からだとはいえ、申し訳ないと思う気持ちも有るのかもしれない。

 ある時、ティリアから余り気を遣わないで欲しいと言われたが、俺にとっては彼女を構成するもの全てに関わっていたいという昏い思いを出さない様に、当たり障りの無い様に、しかしきっぱりと断った。

 今ではティリアの好きな菓子だの、好みそうなリボン等を贈っている。…これなら気兼ねなく受け取ってくれるからだ。先日は贈った紅茶を俺の為に出してくれた。好きな紅茶だと言っていたのに、ティリアは何でこんなに可愛いのか。



 …機械に繋がれている夢をみた。

 俺はあの転落事故では死んではおらず、医療機器に入れられていた。その機械のせいでゲームの世界に連れて行かれ、俺はエーヴィヒになったのだと。

 現実世界にはティリアがいない?そんな馬鹿な話が有るか!彼女はちゃんと俺の側にいる。彼女は俺のものだ、他の誰にも渡さないし、渡せない。

 彼女と俺を繋いでいるのは、この医療機器だけ。現実での彼女が何処の誰で、どんな人なのかは判らない。しかしティリアはティリアだ。俺は現実世界に戻ったとしても、必ずどんな手を使ってでも彼女を見つけてみせる。…しかし俺がこのまま回復せずに死んでしまったら?

 彼女が死んでしまったら…?俺は…生きていけない。

 あぁ.あれだけ実親を恋愛脳だと貶して来たのに。俺もすっかり恋愛脳だ。しかもティリアにこんなに溺れている。

 ティリア、ティリア。

 俺の腕の中に…。



 夢から醒め、まだ深夜だったがティリアに逢いたくてグルック邸まで行った。

 逢える筈も無いのに彼女の部屋のバルコニーまで秘術を使って侵入した。思えばこの時に初めて秘術を使った気がする。

 眠る彼女の姿を見てやっと心が落ち着いた。

 あぁ…このままでは、俺が、保たない…。

 朝を迎えてから直ぐに、両親にティリアと婚約したい旨や、自分の生い立ちについて知っている事を話した。知る筈の無い出生の真実を知る俺に両親は驚愕していた。知っているものは仕方無い。

 両親は直ぐにグルック公爵に連絡をとって早急に対応してくれるとの事だった。秘密を共有している者の娘が相手なら、先ず問題無いだろうと俺は思っていた。

 早朝訓練直後、登城中のティリアの姿を見た時、彼女が消える幻影を見た。男としても仕事を持つ者としても有り得ない失態を犯した俺だが、彼女は呆れたりせずに俺を受け止めてくれた。

 彼女の柔らかさ。あたたかさ。

 彼女の執務室で休み、一緒に昼食を摂った。それだけで俺は幸せを感じていた。

 今夜、ティリアはグルック公爵から()()()()()の生い立ちについて話を聞かされるだろう。彼女は知っている事とはいえ、どんな夜を過ごすのだろうか。少しでも俺の事を考えてくれていたら、嬉しい。

 翌日、早朝にティリアは真っ直ぐにエリン邸の俺の元に来てくれた。そのお陰で両公爵から婚約が許可された。

 彼女は俺を思って泣いてくれたのだろう。両目がとても腫れていた。あのゲームのコアなファンである彼女なら既に知っている事の筈なのに、それでも俺を思って泣いてくれたのが、とても嬉しい…。

 そのまま彼女を自室に連れて行く。例え性行為を行わなかったとしても、これで彼女は完全に対外的には俺の(もの)だ。今までとは違う。

 ずっと我慢していた深いキスを初めてティリアにしたのだが、彼女は途中で気絶してしまった。この様子だと多分、昨夜は余り眠れず、今日は感情の振り幅が酷くて疲れ果てたのだろう。本当になんて愛しいのだろう。

 …ティリアには悪いが、気絶している間も彼女にキスを沢山贈り、彼女の同意も無いのに決して見えない所にも俺の所有の証を付けた。彼女の匂い、彼女の味…。こんな俺を知ったら、君はどんな反応をするのか?彼女を堪能しているとか弱い声と共に身体を震わせた。あぁ、ティリアは本当に可愛い。

 愛しくて顔中にキスをしているとティリアは目覚めた。

 この後、意外な事にティリアは隠しルートには行っていない事と、十回もクリアしている事が判明した。

 以前、ティリアからあのゲームは予約購入したと聞いていたのを思い出した。転生する直前、既に発売してから数年は経っていた。どれだけ好きなんだ…。しかも予約購入って…。

 彼女が好きなモノをとても大切にしている事は知ってはいたが、愛するモノに対してはとことん想いを寄せ続ける事を知り、俺は胸が熱くなった。

 婚約指輪を贈った後、余りのティリアの可愛さに俺の理性が吹き飛び、最後まではしなかったが、ほぼそれに近い事を散々彼女に施した。…後悔はしていない。

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