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帰還  作者: ろぜ C-ruby
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48 side:ベヒューテン 1

 僕はオタク気質だ。

 好きなモノはとことん入れ込んでしまうし、語りも長くなる。だから学生時代は散々気持ち悪いと(けな)され、いじめにも遭っていた。

 僕がオタクだと知るまでは男女関係無く散々言い寄って来た癖に。知ると掌を返し、親の仇の様に貶してくる。好きな対象が芸能人か他かの差で、なんで世の中の人達は僕達オタクを毛嫌いするのか?訳が解らない。

 確かに一般的なイメージ通りのオタクも居るには居るが、殆どのオタクは見た目も普通の人だ。それに僕達オタクは収集癖が有り、好きなモノはとことん好きなので、有る意味、僕達が経済を回している部分もあるのだ。そこは認めて欲しい気持ちもある。

 人に幻滅しながらも、大学は親の薦めで工学部を卒業。興味本位で医学もかじってみた。その後、紆余曲折有り、ゲーム制作会社のチーフプロデューサーになった。

 初めてプロデュースした作品は女性向け…所謂(いわゆる)、乙女ゲームだった。内容も表は王道路線だったから、それなりに売れた。

 シナリオは勿論、僕のオリジナル。悪役令嬢のティリアフラウは僕の理想の女性像を、本編では名前しか出て来ないエーヴィヒは僕を反映させた。…キモオタの自己満足なのは解ってる。

 ティリアフラウとエーヴィヒの話を作ったが、内容が内容なので隠しルートとしてプログラムした。最近のプレイヤーは僕の様なオタクみたいにゲームコマンドなんて知らないだろうから、攻略対象者全員クリア後のタイトル画面で、あの有名なゲームコマンド入力を解放条件とした。流石に乙女ゲームで大昔のシューティングゲームのコマンドを入れるなんて考え付かないだろう?

 …なんて思っていたら、ネット上で解放している人をチラホラ見かけた。隠しルートへの評価は悪くは無く、本編より好きだという意見が多く、とても嬉しかった事も覚えている。

 このゲームを発売して直ぐ、初めてのファンレターが届いた。浜坂 幸さんという方からだ。

 浜坂さんはあのゲームに対してとても懐かしさや愛しさを感じると記していた。まるで実際にあの世界で過ごした事が有る様な錯覚がする…と。普通こういう文章を読んだら「キモイ」と言う人も居るだろう。だけど僕にとっては最高の誉め言葉だった。

 浜坂さんはその後も何度もファンレターをくれた。

 彼女は僕とそんなに歳が離れてはいない。シングルマザーだと書かれていた。仕事と子育てに追われている事や、息子さんがゲームキャラにまで嫉妬深くて大変だと書かれていた。彼女は文章でしか登場しないエーヴィヒにとても惹かれている様だったが、隠しルートはまだ解放していない…存在自体も知らない様子だった。

 非売品や販売前のゲームグッズと共に浜坂さんへお礼の手紙を送った。このゲームのグッズは資料集以外にキャラクターを使用しないようにデザインした為、普段使いしても問題無い商品ばかりだ。彼女は喜んでくれるだろうか?

 後日、伊勢丹を通して浜坂さんから丁寧なお礼状と菓子折が届いた。以前ファンレターに伊勢丹が好きで大切な相手への贈り物は必ず伊勢丹で購入していると書かれていたのを思い出した。とても喜んでくれた様で心底、嬉しかった。

 そして気付いた。僕は浜坂さんを女性として好きになっている事に。自分でも有り得ない事だと、散々打ち消していたが、気付けば彼女からのファンレターを読み返したり、次回作についても、彼女ならどう評価をしてくれるか?等を考える様になっていた。

 ティリアフラウと浜坂さんを同一視する様になり、そんな自分をやっぱりキモイと思った。



 ある日、とある医療機器メーカーよりスカウトされた。

 医学について興味を持つ変わった奴がいる…お世話になった教授から僕の話を聞いたらしい。

 その頃の僕は、色々行き詰まっていた。新しい環境を求めていた為、興味が有るだけで知識も何も無い僕なんかで役に立てるなら…と転職を決めた。

 ゲーム会社社長は入社時より僕をよく見てくれており、可愛がってくれていた。僕の行き詰まりをも心底心配してくれていて、転職についても、僕が楽になるならと許可してくれた。しかも何か有った際は力になってくれるとも。…もう遠い空の上にいる社長の事を今でも感謝の気持ちと共に思い出す。

 転職した会社で医療機器についてとても手厚い新人研修が有った。医療機器の事を余り解らなくとも、この会社でならやっていけそうだ、と錯覚してしまう位の解りやすい素晴らしい研修だった。

 配属されて直ぐ、新しい医療機器のコンペが有った。新人でも構わないというので、応募した。

 僕は、昏睡状態や回復の見込みの無い人向けの、せめて夢の中では幸せを…と願いを込めた医療機器はどうか?と提案した。昏睡状態の人々の脳内がどうなっているのかは未だ解明はされていないが、その状態になってまで医療行為を続けるのは、我々が気付いていないだけで、患者さんに大きな負担が掛かっている可能性を考えたからだ。医療機器なので、介護・介助者の負担になる様な作りも駄目だ。デザインとしては頭部、両手両足に器具をつける。それによって脳波や脈等も常時が確認とれる。小型の為、場所もとらない。ソフトはこちらで用意した物を患者さんに合わせて設定する。ざっくりと…そんな企画を出した。

 数日後、部長に呼ばれ社長室へ向かった。何故か僕の企画が通ってしまっていた…。

 医療機器について全くのド素人である僕がプロジェクトリーダーなんて、たいそうな役割を頂いてしまった為に、ここでも悩みは尽きなかったが、浜坂さんの事を思い出して開発を続けていった。彼女を思うだけで不思議と僕は頑張れた。

 …医療機器の開発は本当に複雑なプロセスが有った。サブリーダーに付いてくれた先輩―一年 照(ひととせ あきら)―が対外的な事も全て対応してくれた。僕にとっては大切な先輩で、戦友で、心から信頼できる唯一の友となった。

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