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帰還  作者: ろぜ C-ruby
37/73

37:言質

 エリン公爵にそのまま直談判したエーヴィヒは、父親達の方が上手(うわて)だった事を知る…。

 聞いていた婚姻式予定日は、あくまで予定日で、早める事も遅めにする事も出来る様に調整されていたのだ。

 通常、婚約式後、半年から一年で婚姻式を行う事が殆どだ。

 しかし私達の場合、そもそも承認調印式から二ヶ月で婚約式を行うという猛スピードだった挙げ句、婚姻式も最短三ヶ月、元々の予定日が十ヶ月、私達が恋人期間延長を望めば一年と計画されていた。

 エリン公爵はエーヴィヒに相談された事がとても嬉しそう。

 エーヴィヒは、またげんなりしている。希望が通ったのにこの様子なのは、見透かされていたのが悔しいのだろう。

「ティリアフラウ、いいのかい?また息子の暴走だろう?」

 エリン公爵はエーヴィヒの事をよく解っている。

「準備をして下さる方々の負担にならないのであれば」

「それは大丈夫だよ。()()()()()()()()()()()()()()()からね」

 意外な言葉が飛び出した。

「解った。じゃあ、今日から三ヶ月後に。関係各所も日程の微調整が有るだろうから、追って詳細連絡をする。それでいいかな、エーヴィヒ?」

「はい、ご配慮ありがとうございます」


「恋人期間も、あと少しで終わりなのね、エーヴィヒ」

 エリン公爵と話した後、またお姫様だっこされた私は、先程の木陰ではなくエーヴィヒの自室に連れて行かれた。

「ティリアは結婚するの、嫌なのか?」

 ベッドに降ろされ、唸る様な低い声で言われ、エーヴィヒの腕の檻に囚われた。

「そうじゃないわ。貴方と一緒に暮らせるのよ?とても楽しみだわ。もう、エーヴィヒってば何でそうネガティヴなの?」

 私はエーヴィヒの頬に右手を伸ばす。

「いつも自信たっぷりなのに。困った人ね」

 エーヴィヒはその掌に頬を寄せる。

「君に対してはいつだって自信が無い。これで良かったのか、君に嫌われないか…と思う時が有る。前世といい、今世といい恋愛経験が皆無だから、余計に」

 掌にエーヴィヒはキスをくれる。

「貴方は素敵よ、エーヴィヒ。私はいつも貴方でいっぱいなのに。…私、普段から貴方を不安にさせる様な事をしてた?今も不安にさせている?」

「いや、俺が勝手に不安になって自信を無くしているだけだ。ティリアは何も悪くは無い」

「どうしたら、貴方の不安を無くせる?結婚したら、私に対して不安は無くなる?」

 そうは言ったが、自分にだけ弱味を見せてくれるのは、とても嬉しい事だ。それだけエーヴィヒに信用・信頼されている事だと思うから。

「判らない。君はまるで鳥の様だからな。捕まえて籠に閉じ込めたくなる。しかし閉じ込めてしまえば、俺の愛する君がいなくなりそうだ」

「だから、さっきの束縛の話が出たのね?」

 エーヴィヒは激しく動揺し、体を揺らした。

「いつも私に触れてくれるのは、私が貴方から逃げてしまうと思ってるからなのね?そこへケインの話が出た」

「…情けない、男だろう?」

「さっきの話。私、うやむやにしてしまった事が有るのだけど、聞いてくれる?」

 固まったまま憔悴した顔をするエーヴィヒ。もぅ、馬鹿ね…。

「エーヴィヒ。貴方はそんなに私を想って考えてくれているのね。人によっては、貴方の行動や言動を重いと嫌がる人もいると思うわ」

 エーヴィヒは息をのむ。顔色が青くなっていく。

「でも、私はそういう人を求めていたの。前世からずっと。私だけを見て、愛してくれ、求めてくれる。そんな人を。エーヴィヒとは学園入学の時に再会して、一目惚れしちゃったけれど。こんな理想の人、いないわ」

 そう、以前も記したがエーヴィヒは私の理想の男性なのだ。

 エーヴィヒの顔色が戻っていく。

「私の愛情表現が少なかったのね、ごめんなさい。私も前世を含めて恋愛経験が殆ど無いし、貴方が沢山くれるから、とても満たされていたの。だからもし、また不安になったり足りなかったら私に聞いて欲しいの。エーヴィヒ…お願いを、きいてくれる?」

 強く抱き締められる。

「君の願いなら幾らでも叶えるよ。…そうだった。君は嫌な事は嫌だとハッキリいう人だった。この俺でいいんだな?」

「ええ」

「…言質は取ったぞ」

 低い声で耳元で囁く。黒エーヴィヒが降臨している。

「ええ。困った人ね。…でも、少し怒ってもいるのよ」

「君が、俺に?」

 驚いている。何に対して怒ってるのか見当がつかない様だ。

「だって、そうでしょ?今まで散々色々な事を私にしてるのに、エーヴィヒに許して来たのが、どういう事か、解っていなかったって事でしょう?」

 言葉にしてなくても、エーヴィヒを受け入れた事を、身体も預けた事も愛情表現だ。

「う…」

「私だって、貴方がいなくなるんじゃないかって、不安なのに」

「そ、そうだな。悪かった」

「だから、罰として今日は残りの時間、甘えちゃいます」

「ティリア!」

 私はエーヴィヒの髪を撫でる。

「愛してるわ、エーヴィヒ」

此処までお読み頂き、ありがとうございます。

このお話も、あと少しとなりました。

(エーヴィヒの暴走が無ければ、もっと短かった筈でした…)

あと少しのお付き合い、どうぞ宜しくお願いします。

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