32:学友
ベヒューテンの後、次々と挨拶やお祝いに来てくれる人々。
転生仲間も大挙してお祝いを言いに来てくれる。
「それにしても、本当にティリアフラウとの結婚迄こぎ着けるとは思わなかったわ~」
と半分あきれた表情のアイル=スターク伯爵令嬢。
「エーヴィヒルートを地で行くんじゃないか、って少し期待してた!」
かつて攻略対象者だった、ロバート=トーム侯爵令息はニヤニヤしている。
「え~、ティリアフラウが悪役令嬢じゃないんだから、有り得ないでしょ」
イリーナ=ホインツ伯爵令嬢は嬉しそうに笑っている。
「悪役令嬢とは程遠い、お人好し令嬢だもんね!」
ねーっ、とイリーナと笑っているのはウェイン=ホッフノゥ侯爵令息。かつての攻略対象者で前世ではイリーナの彼氏だった。二人は今世でも想い合っている。
「いや~、でもエーヴィヒのあのティリアフラウに対しての執着はさ、あのエーヴィヒにも通じるモノが有るだろ」
オズワルド=リーヴァ侯爵令息。彼もかつての攻略対象者。
「ちょっとティリアフラウにちょっかい出しただけで、人を殺しかねない視線で射抜いてくるからな!」
ガウェイン=フォンケィン侯爵令息はピストルを撃つ仕草をする。彼もかつての攻略対象者。
「どんだけ、好きなんだ!みたいな」
キリエ=ファランゲン男爵令嬢は閉じた扇子をくるくる回している。
「どんだけ~!」
クリスティン=ラッハン男爵令嬢がツッコミを入れる。
「IKKOさんかよ!」
ケイン=アインルー伯爵令息もツッコミをいれる。
「IKKOさん、大好きなのよ」
クリスティンが応じる。
「解る!あの人、悪口言わないし!情に厚いタイプ!」
コリン=フィシィッティカイト伯爵令息が強く納得している。
お酒が入り仲間がいるから気が弛んでしまったのか、子息・令嬢トークからかけ離れた話口調と前世話が混ざる。ここで生まれ育っても、やっぱり前世の記憶や情報が身にしみている。
少し離れた所で様子を伺っている仲間が居る。
「ほら、こっちに来て話しなよ」
コリンやイリーナ、ウェインが引っ張ったり押したりして連れてくる。連絡が取れなくなっていた仲間達だ。
「暫く連絡が取れなくなっていたから、心配していたけど、元気そうで本当に良かったよね!」
キリエが安心したーと話す。
「ソレイユとシュナイダーは家業を継いで、ステファンは伯爵位を継いだって聞いたから、体調崩してないか心配してたんだぞ」
オズワルドがソレイユ=ファイン伯爵令息とシュナイダー=デメトリアス伯爵令息の頭をグシャグシャ撫で回す。相変わらずだ。オズワルドのいつもの行動なのに、何故か…ステファン=ミッド伯爵はそれを見て困惑している。
「貴方達も結婚したって聞いたけど、どうよ、新婚生活は?」
サーシャ=エレイン侯爵令嬢とセレスティーヌ=キュア伯爵令嬢にアイルが聞く。
「心配していたけれど、杞憂だった様ね。良かったわ、皆、元気そうで。エーヴィヒと私の為に、来てくれてありがとう」
私はすぐ近くにいたセレスティーヌの手を握った。…手がかなり震えている。
「恐れ入ります、ティリアフラウ様。先程、ミッド伯爵、デメトリアス伯爵令息、ファイン伯爵令息、キュア伯爵令嬢とで話をしていたのですが。私共は学園在学中に、ここにいる皆様と親しくして頂いていたのでしょうか?こんなに打ち解けていらっしゃる貴方様がたの中に私共がお邪魔するのは場違いな気がするのです。この度の婚姻式もご招待頂いて恐悦至極ですわ。ですが皆様から何度か頂いたお手紙も、この度のご招待も、何故、頂戴したのか判らないのです」
私はセレスティーヌの震える手を離した。
「この様なお祝いの席に、同窓生とはいえ、私の様な末端の伯爵位の者にまで目を掛けて下さり、お声掛け下さり、わたくしには勿体ない御対応を誠にありがとうございます。この度はエーヴィヒ様との御婚約おめでとうございます」
震えたままでセレスティーヌは言う。
ステファン、シュナイダー、ソレイユは最敬礼と共に仰々しく祝いの言葉を述べる。
…そうか。公爵令嬢の私が、伯爵令嬢の手を取ったから恐怖で震えたのか。
サーシャの話も信じがたいものだったが、他の四人のこのかしこまった対応はおふざけでは無いだろう。五人の中で一番爵位が高いのはサーシャだから、彼女が代表として上位の私に声を掛けた…という事になる。
他の仲間も余りの話に衝撃を受けている。
私を強く抱きしめる感触を感じた、エーヴィヒだ。
「サーシャ=エレイン侯爵令嬢、セレスティーヌ=キュア伯爵令嬢、ステファン=ミッド伯爵、シュナイダー=デメトリアス伯爵令息、ソレイユ=ファイン伯爵令息。この度は多忙の中、私とティリアフラウ公爵令嬢の婚約式への参列感謝する。すまない。我が友人達も、同窓生の貴公等が参列したのがとても嬉しかった様だ。酒が入っている事も有、喜びに身も心も任せてしまった様だ。許されよ」
「そんな…わたくし共も、望外の喜びでございます」
…ベヒューテンのメモの内容は、この事だったの?でもベヒューテンは私達が転生者だとは知らない。
それでも…余りにも衝撃的で、頭が白くなってしまった。




