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帰還  作者: ろぜ C-ruby
31/73

31:メモ

 朝からびっくりしたが…エーヴィヒからのサプライズだと思う事にした…心臓に悪いサプライズ。来るなら来ると前もって言って欲しい。私だってエーヴィヒが来てくれるなら、準備をしたのに。

 …結局、エーヴィヒを許している自分に脱力した。

 今回の侵入は陛下と父上が…とエーヴィヒは言っていた。陛下のあのいたずらっ子の表情を思い出す…やっぱり親子だ。父上とはどなたを指しているのだろう…。

 それにしてもエーヴィヒの魔法を関知出来なかったなんて、私が鈍感になったのか?

 …もう、考えるのは止めよう。その内に答えは出る筈だ。



 この世界にも教会が有る。勿論、キリスト教や仏教等の前世に有ったどの宗教とも異なるが。でもどの宗教も神様や聖女、聖人を崇拝している。それはこの世界も同じ。

 前世の世界でいう所の日本の結納式とは全く違い、この世界の婚約式は結婚式の様相だ。王家の結婚は前世と同じ様に行われるが、公爵家以下は婚約式を華々しく執り行い、結婚式は近しい親族を招いての(おごそ)かな式となる。

 婚約式ではエーヴィヒの熱烈過ぎるキスを受け、腰が砕けてしまうという、かなり恥ずかしい思いをした。エーヴィヒはいたずらっ子の様な表情をした後、涼しい顔で私を支えてくれ、壇上から下がる時はお姫様だっこをしてくれた。…もう、してくれた、じゃないわね。エーヴィヒのせいなんだから!あぁぁぁ、恥ずかしい。

 ガーデンパーティでは転生仲間が皆、揃っていた。懸念していた連絡が取れなくなっていた仲間も来てくれていた。

 私達の席にベヒューテンが挨拶に来てくれた。

「わぁティリア、綺麗!婚約おめでとう。エーヴィヒ、余りティリアをいぢめない様に!」

 見事な薔薇の花束を贈ってくれた。

「綺麗ね、ありがとう、ベヒューテン」

「何を言っているんだ?愛しいティリアに沢山の愛をそそいでいるんだ」

 エーヴィヒはムスっとした。

「えぇ~?さっきの熱烈なキスはいぢめじゃなかったの?あ、ティリアは俺のだ!って牽制か。もぅ、誰もがエーヴィヒのモノだって解っているのに、やだなぁ」

 男の嫉妬や執着って格好悪いよね?とニヤニヤしながら私の頬にキスをしようとしている。

「ベヒューテン、そう言いながらティリアにキスしようとするな」

「えぇ~頬なんて挨拶じゃない。ねぇ?減るもんじゃないのにね」

 ベヒューテンは隠していた物を、私の右手にそっと渡す。

「駄目だ、ティリアが減る!お前がキスしたら確実に、減る!」

「失礼な。じゃ、エーヴィヒにキスする?ちゅばっと」

「折角だが俺もいらん。お前の特殊能力・祝福は知っているし、くれるのは有り難いが、キスというのが、どうにも納得出来ない。それにティリアは俺が幸せにするから、大丈夫だ。前置きは少しイラついたが、ありがとう」

 二人の遣り取りを見ながら、テーブルクロスが影になる様に膝上で渡された物をそっと見る。

「どういたしまして。その後、特に体調はおかしくないね?何か有ったら直ぐに教えて?隅々まで看てあげるから~」

 いつでも大歓迎~、とベヒューテンはいつも以上にハイテンションだ。エーヴィヒは俺の周りはこんな奴ばっかだ…と少しげんなりしている。そこにベヒューテンはエーヴィヒに何かを伝えたみたいだ。エーヴィヒは一瞬だけ鋭い表情になり、頷いた。

「じゃ、またね」

 ベヒューテンは投げキスをして去っていく。

 それはメモ書きだった。

 ―ご学友の様子に気を付けて― 


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