31:メモ
朝からびっくりしたが…エーヴィヒからのサプライズだと思う事にした…心臓に悪いサプライズ。来るなら来ると前もって言って欲しい。私だってエーヴィヒが来てくれるなら、準備をしたのに。
…結局、エーヴィヒを許している自分に脱力した。
今回の侵入は陛下と父上が…とエーヴィヒは言っていた。陛下のあのいたずらっ子の表情を思い出す…やっぱり親子だ。父上とはどなたを指しているのだろう…。
それにしてもエーヴィヒの魔法を関知出来なかったなんて、私が鈍感になったのか?
…もう、考えるのは止めよう。その内に答えは出る筈だ。
この世界にも教会が有る。勿論、キリスト教や仏教等の前世に有ったどの宗教とも異なるが。でもどの宗教も神様や聖女、聖人を崇拝している。それはこの世界も同じ。
前世の世界でいう所の日本の結納式とは全く違い、この世界の婚約式は結婚式の様相だ。王家の結婚は前世と同じ様に行われるが、公爵家以下は婚約式を華々しく執り行い、結婚式は近しい親族を招いての厳かな式となる。
婚約式ではエーヴィヒの熱烈過ぎるキスを受け、腰が砕けてしまうという、かなり恥ずかしい思いをした。エーヴィヒはいたずらっ子の様な表情をした後、涼しい顔で私を支えてくれ、壇上から下がる時はお姫様だっこをしてくれた。…もう、してくれた、じゃないわね。エーヴィヒのせいなんだから!あぁぁぁ、恥ずかしい。
ガーデンパーティでは転生仲間が皆、揃っていた。懸念していた連絡が取れなくなっていた仲間も来てくれていた。
私達の席にベヒューテンが挨拶に来てくれた。
「わぁティリア、綺麗!婚約おめでとう。エーヴィヒ、余りティリアをいぢめない様に!」
見事な薔薇の花束を贈ってくれた。
「綺麗ね、ありがとう、ベヒューテン」
「何を言っているんだ?愛しいティリアに沢山の愛をそそいでいるんだ」
エーヴィヒはムスっとした。
「えぇ~?さっきの熱烈なキスはいぢめじゃなかったの?あ、ティリアは俺のだ!って牽制か。もぅ、誰もがエーヴィヒのモノだって解っているのに、やだなぁ」
男の嫉妬や執着って格好悪いよね?とニヤニヤしながら私の頬にキスをしようとしている。
「ベヒューテン、そう言いながらティリアにキスしようとするな」
「えぇ~頬なんて挨拶じゃない。ねぇ?減るもんじゃないのにね」
ベヒューテンは隠していた物を、私の右手にそっと渡す。
「駄目だ、ティリアが減る!お前がキスしたら確実に、減る!」
「失礼な。じゃ、エーヴィヒにキスする?ちゅばっと」
「折角だが俺もいらん。お前の特殊能力・祝福は知っているし、くれるのは有り難いが、キスというのが、どうにも納得出来ない。それにティリアは俺が幸せにするから、大丈夫だ。前置きは少しイラついたが、ありがとう」
二人の遣り取りを見ながら、テーブルクロスが影になる様に膝上で渡された物をそっと見る。
「どういたしまして。その後、特に体調はおかしくないね?何か有ったら直ぐに教えて?隅々まで看てあげるから~」
いつでも大歓迎~、とベヒューテンはいつも以上にハイテンションだ。エーヴィヒは俺の周りはこんな奴ばっかだ…と少しげんなりしている。そこにベヒューテンはエーヴィヒに何かを伝えたみたいだ。エーヴィヒは一瞬だけ鋭い表情になり、頷いた。
「じゃ、またね」
ベヒューテンは投げキスをして去っていく。
それはメモ書きだった。
―ご学友の様子に気を付けて―




