30:侵入者
婚約式当日。
とてもピカピカで爽やかな朝を迎えた。
しかし、少し困った事が起きていた。
エーヴィヒが私の隣で眠っているのだ!
昨夜は確かに私一人で眠った筈だし、屋外への窓もキチンと施錠をしていた。
当の本人は、ティリア愛してる、なんて寝言でまで愛を囁いてくれている。…どうしてくれようか…。この状況を誰かに見られたら困る。
「エーヴィヒ、起きて」
必死に起こす。
「んぁ…ティリア、おはよう」
エーヴィヒの腕の中に閉じ込められ、顔中にキスの雨が降ってくる。私はエーヴィヒの上に乗っかっている体勢だ。
「おはよう、じゃないでしょ?貴方、いつ、どうやって入って来たの?」
「ん?普通に、こうやって」
寝ぼけた様子で、指先で円を描いて魔法を発動させる。
「不法侵入じゃない」
「これは、陛下と父上が教えて…ん、んん!」
「陛下と、どなたですって?」
エーヴィヒの瞳が、視線がハッキリした。ちゃんと起きた様だ。
「どうしたティリア。嫌だったか?俺が側にいるの」
小首を傾げ、言いながら私の髪を撫でる。一房掴んで髪にキスをする。
「い、嫌じゃないわ。でもTPOをわきまえて欲しいの。貴方が今、ここに居る事を知られたらマズいでしょう?」
エーヴィヒの甘い視線と私を撫でる手の動きにドキドキしながら、負けない様に反論する。
「今更だろう?俺が君の横で寝るのは、当たり前だ」
エーヴィヒに押し倒され、額にキスを受ける。
「…ちょっと待って。今までも私が知らないだけで、エーヴィヒは私の隣で寝ていたって事かしら?」
「さぁ?どう思う?」
蠱惑的に微笑むエーヴィヒ。絶対にしていた…気がする。
「とはいえ、俺もそろそろ自邸に戻らないとな。このまま君をとかしてしまいたいが…それは後の楽しみにするよ」
珍しく直ぐにエーヴィヒが引いてくれる。
「また後で。…あぁ、別れがたい」
エーヴィヒは少し昏い熱のある瞳をして、深いキスをくれた。私の腰が砕ける。
「あ…エーヴィヒ、答えていないわ」
とかされた頭を正気に戻しながら、強めに言う。
「ティリア、愛してる。婚約式でまた可愛いがるから、いい子で待っていて」
この時点で移動魔法の展開は完了していた、素早い。
「え、ちょっと、待って」
エーヴィヒの姿が消えた…
単独での移動魔法…それって、秘術じゃないの?




