18:両親
色んな恥ずかしい事をされた。
した本人、エーヴィヒは凄くご機嫌だ。
早朝に訪問し、日が傾き始めている。その間、私はエーヴィヒの私室に連れ込まれ、色んな事をされ、今後の事も話し合った。
…話し合う迄もなく、エーヴィヒは既に色んな事を決めており、将来は騎士として臣下として国を守っていく事、最優先事項として私と添い遂げる事等、話してくれた。
「王の庶子なんて、歴代王にだって、はいて捨てる程いただろう?たまたま母親が隣国の姫だっただけだ。俺には両親や仲間、ティリアがいる。大丈夫だ」
そう微笑むエーヴィヒを、私は抱きしめる。
それよりエーヴィヒのエスコートで階下の応接室に行った時に、エリン公爵夫妻は勿論、両親も談笑していた事や、入室と同時に人払・空間遮断が展開されたのにも心底驚いた。
エーヴィヒは両公爵夫妻に最敬礼と共に御礼を伝えた。
結論、皆、グルだったのだ。
両親やエーヴィヒの話は全て本当の話。
エリン公爵夫妻は、なんと父の書斎の影で、あの話を一緒に聞いていたのだという。
母はエーヴィヒの生い立ちに何度も涙を流したという…あの涙は、娘の私だけでなくエーヴィヒの事も思ってくれた涙だったのだ。
また事前に、私が真っ直ぐエリン公爵邸に向かった場合は両公爵承認と決められていた。両公爵家は覚悟を決めてくれていたのだ、私達の為に。
「だから両親も承知の上、と言ったのね、エーヴィヒ」
「ああ。俺の為に泣き腫らした君の顔…可愛かった。理性が保たなかった」
「エーヴィヒ、まさか!」
エリン公爵が声を荒げる。
「ご安心下さい。手筈通り、俺の私室には連れて行きましたが、キスだけです。抑えるのが大変でしたが」
思わず首元を隠す。それをエリン公爵は見逃さなかった。
「キスだけ…ね」
「結婚式に真っ白のドレスをティリアに着て欲しいのです。彼女には、白が似合う筈ですから」
うっとりと私を見詰めて話すエーヴィヒ。
この世界は恋愛色が濃いが、王侯貴族は処女性を重んじており処女しか白は着れない。偽っても隠せない。だからこそエーヴィヒの実親の話はかなりマズい話でもあるのだ。
「早く、俺だけのモノにしたい…ティリア」
左手の指輪にキスしてくれる。
「エーヴィヒ、恥ずかしいから…。!」
指輪へのキスに隠れて、小指を舐められた。
「すまん、グルック公爵。普段のエーヴィヒはこんなではないのだが。ティリアフラウが関わるとどうも…」
「普段の彼を知っています。それだけ娘を想ってくれているのでしょう。…エーヴィヒ」
「はい」
「改めて、娘を頼んだよ」
「はい。魂が有る限り、彼女を愛します」
「あら?命が尽きてもなの?」
母が嬉しそうに微笑む。
「現世だけでなく来世も。ずっと愛し守ります」
…その言葉は、転生している私にとって、とても重くて。だからこそ、嬉しい言葉だった。