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怨霊鏡ねこむすめ! 〜オカルト研究部へようこそ〜  作者: あいうえ
15 千曳の岩を入手せよ!
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「これだけはいっておきたいんだけど、蛇塚を発掘するためには何か出土品が必要なんだよね」


 これまで満夜と凜理のやりとりを見ていた八橋が口を開いた。


「出土品?」

「うん。でないと国に申請できないよ」

「ううむ。大人の世界は面倒なものだ……致し方ない」


 満夜はうなるといったんポケットにしまった銅鏡を取りだして、八橋にかざした。


「これが出土したと言えばいい。掘り当てたのはオレということにするのはどうだ」

「誰が出土しても同じだけど、満夜くんが協力してくれるなら話が早いな。明日にでも市に申請を出してみよう」

「ではオレは適当な場所を見繕ってここから見つけたとでも言えばいいか」

「そうだね」


 そこまで話をしてから本日の部会は解散した。

 三人と一匹が公園に向かっている途中、満夜が他の二人に言った。


「公園で別れよう」

「なんで?」

「蛇塚を見に行くんですか?」

「うむ。蛇塚の下見に行ってくる。やはり用意周到なほうが良いだろう」

「それやったら、うちも行く」

「わたしもお付き合いします」


 先ほどの満夜のテンションを知っている二人は、満夜が無茶をしないように見張ることにしたようだ。


「せやけど、戦前辺りで一度発掘された蛇塚に今更新しい発見があるて、みんな信じてくれるんやろか」

「凜理、むしろ、何も発掘できないのに発掘したというほうが名誉に関わるのだ」

「せやったら、八橋先生はヤバいんとちゃうん?」

「そうですよ。虚偽の発掘をしたなんてばれたら、先生は民俗学界から追放されちゃうかも!」


 凜理と菊瑠が慌てて言った。


「だからオレが発掘して見つけたことにするのだ。あくまで先生はオレの言動にだまされたことにすれば良い」

「それはそれで問題やないの。あんたが嘘ついて大人を振り回したことになったら、内申にも響くで?」


「ふふふ」と満夜が顔を伏せて笑った。


「内申など小義! 千曳の岩発見のほうが大義だ! もう一度発掘することで、必ず何らかの手がかりがわかるはずだ!」

「根拠があっていってるん?」

「ない!」

「はぁ〜」


 凜理は呆れてしまって手で顔を覆った。


「でも薙野先輩、最初に芦屋先輩が言い出したことよりもましだと思います!」

「それはそうやけど……ベクトルは変わっとらん気がする」

「それで、今から公園にいき、さも発掘したかのように見せかけるのだ」

「怪しすぎるわ……」

「勝算はある」

「それはなんですか?」

「凜理が襲われて、オレが蛇塚に引き込まれたとき、警察が中に入っていじくり回した。それを利用するのだ。いじくり回したことで、新たな発見があったとか言うのだ。しかもオレはあの中に入ったことがあるのだからな! 入ったときに見つけたのだと言えばいいだろう」

「そんなにうまくいくやろか……」

「迷いに迷った末に告白したということにすれば良いのだ」

「ううーん」


 凜理も満夜の言うことにそれほど違和感を感じなかったし、つじつまは合う。狂言だと言うことを、ここにいる三人と八橋がばらさなければ、誰にも知られることはない。


「わかった……協力する。せやけど、アカンときはアカンていうで?」

「おう、よくわかっている。しかし、オレのこの銅鏡は確かに古代の遺物であることに変わりはない。どこで見つかっても八橋先生の出番になるだろう!」


 確かに八橋は平坂町のフォークロアをしている。いろいろな伝承を聞き取りして、古墳を発掘し、古代信仰を調査しているとも言っていた。

 鵺のことをレッサーパンダちゃんなどといって、メロメロになっているけど、実際には違うかもしれない。なぜなら鵺こそ八橋が知りたい古代信仰の偶像なのだから。


「ただし、鵺が正直に情報をこちらに渡せば、だが」

「わしが知っていることは全て話したぞ」

「やっとさっきいざなぎの話をしたではないか! もっといろいろなことを隠しているに違いない。それに自分の体のありかすらわからんへっぽこ神だしな」

「生意気な、わっぱだ! 完全なる体になりしときは覚えておれ!」


 そんな言い合いをしつつ、三人と一匹は公園の蛇塚の前に出た。

 人気がなくしんとしていて、ジーッと鳴っているナトリウム灯の頼りない光以外、何もない。木陰もベンチも夕暮れの中に黒く浮き出して薄気味悪い雰囲気を醸している。

 そんな中、丸い蛇塚の周りには以前より厳重に白い鉄柵が張り巡らされて、簡単には近づけなくなっていた。


「こないになってるのに、見つけた言うのは無理があるんちゃうのん?」

「うーむ。蛇塚と柵の間が一メートルも開いているな……だが、斜面に面している部分には鉄柵がない」


 満夜は薄暗い斜面を見上げてみた。


「ん? 今まで気にしてなかったが、あれは観音堂辺りではないか?」

「そういえばそうですね」


 菊瑠が顔を上げていった。


「身代わり観音堂の真下に、蛇塚があるていうの?」

「もしかするともしかするのだが……」

「どないしたん、満夜」

「この蛇塚と観音堂、切っても切り離せないものがあるかもしれん」

「へ?」

「どういうことですか?」

「考えてもみろ。我らオカルト研究部員増員のために、オレと凜理は観音像に願いを打ち付けたことがある。そしてその後、凜理が蛇塚から出てきた白い蛇と戦ったではないか。しかも、オレを掴むようにして引きずり込んだ白蛇は、蛇ではなく白い五本の得体の知れない何かだった。しかるに、身代わり観音にまた願い事をすれば、あの蛇塚の中に入られると言うことだ!」


 それを聞いて、凜理は呆れて口が塞がらなくなった。


「何言うてんの?」

「だから、もう一度願い事をするのだ」

「あのとき助かったからいうて、今度もまた助かるとは限らんのやで」

「なので、鵺を連れていく」

「勝手に決めるな!」


 鵺が可愛い口を開けて犬歯を満夜の頭皮に突き立てた。


「痛い痛い。でだ、もちろん鵺も中に入られるように、今回は鵺と連名にする。いたた。願い事はズバリ! 千曳の岩を手に入れたい、だ!」

「まんまやな……そやけど、鵺も一緒やったらあの白いヤツには負けん気はする。うち一人では無理やったけど」

「では、凜理も連名にするか!?」

「アホか! あんとき、勝手に連名にされて大迷惑したんは忘れてないんやからね!」

「それは残念だ」

「あのー……」


 菊瑠が恐る恐る手を上げた。


「なんだ、白山くん」

「わたしはどうしたら良いですか?」

「ふむ……白山くんはただの凡人だからな……特別に助けを呼ぶ係を申しつけるぞ」

「良かったです。わたしだけ仲間はずれかと思いました」


 ほっとした様子で菊瑠はにっこりと笑ったけれど、よく考えると満夜や鵺が白いものと戦っているのを引きずり込まれるまで身近で見届けるわけだから、危ないことには変わりない。


「うちは?」

「凜理は戦闘部員だ。自分の身を守るついでに白山くんも助けてやれ」

「なんや……もうやるて決まってるんやな」

「他に方法が思いつくのか?」

「うーん」


 凜理も満夜が蛇塚の中に入って銅鏡を持って来るという別の方法が思い当たらないし、もしそこら辺を掘って銅鏡を見つけたと言っても、発掘する価値がなければ、市の許可が下りない可能性もある。ましてや、あの日以降ずっと満夜が隠し持っていたと思われたら、学校に呼び出しだけでは済まないかもしれない。盗掘と言う不名誉な言いがかりを付けられてしまう。こんな世の中だからこそ、慎重にしても損はない。

 ただ、周囲に心配させてしまうことは変わりない。


「それにしても、願い事をしてすぐに蛇塚に引きずり込まれるんですか?」


 菊瑠が満夜も考えてなかったことを聞いてきた。


「すぐに……ではないな……願い事をしたのは新学期が始まってまもなくだった。そこから少なくとも一週間は経っていたと思う。ただ予兆はあったぞ。黒い人影に付け狙われていたのだ」

「そ、そんな怖いことがあったんですね……じゃあ、黒い人影が出た辺りで芦屋先輩が……」

「連名されたうちが狙われたけどな」

「今回は鵺とオレの連名だ。もし助けが遅れたとしても、なんとかなる。なぁ、鵺」

「わしは一人で逃げるぞ」

「バカめ。引きずり込まれるのは一緒だ。あの鉄柵をかみなりで折れるとでも思っているのか」

「こんな塚など(いかずち)で真っ二つだ」

「と言うわけで、全く心配ない」


 満夜は凜理と菊瑠にそう言って安心させた。


「ほんまかいな……」


 いまいち、満夜と鵺のチームワークを信じられない凜理であった。

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