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怨霊鏡ねこむすめ! 〜オカルト研究部へようこそ〜  作者: あいうえ
9 九頭龍神社の神器を捜せ!
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3

 そこへ、凜理がリビングに入ってきた。キャミソールに短パンというリラックスしたかっこうだ。


「あれ、満夜、どないしたん」

「今から図書館へ行って部会を開くぞ」

「今からかぁ? 暑いやん。なんでもっと早うこんかったん」

「グズグズするな! 図書館へ行けば再び涼しい思いができるぞ」

「白山さんも誘ったん?」


 満夜は竹子を見て、ここで話すべきことではないと判断した。


「それは道すがら報告する」

「ほな、ちょっと待っててな。着替えてくる」

「うむ」


 満夜はリビングのソファに竹子と並んで座り、お昼間の衛星テレビでやっている時代劇チャンネルを眺めた。


「ばっちゃんはいざなみ教というのを知っているか」


 唐突に質問されて竹子はきょとんとしたが、うんと頷く。


「しっとるよ。平坂山の麓で拝み屋をやっとる白山さんとこやろ。なんや、数年前から新興宗教興して、挨拶しにくくなったわ」

「知っているのか!」

「拝み屋さん、わたしと同級やったし、今教祖やっとる光子ちゃんは里海と同窓やなかったやろか」


 こんなに身近なところで関係者がいるとは思いもよらず、里海にも尋ねるべきだったと満夜は大げさに悶絶した。


「それで、いざなみ教というのはなんだ」

「よう知らんけど、いざなみ様を祀っとるていうてたわ」

「この神社とは反対だな! 黄泉の神とはまた物騒な」

「そやねぇ。でもいざなみ様は元々は優しい女神さんやったわけやし、どうなんやろ」


 いざなみ教に詳しいわけではない竹子は首をかしげた。




 パンツルックの凜理と、公園へ向かいながら、満夜は菊瑠に電話したときの話をした。


「お付きの人ぉ!?」


 案の定、凜理も驚いている。


「そうだ。白山くんは大学に行ったとき、やたらと否定していたが、我々に知られたくない秘密だったのだ」

「そうやろか。秘密なら電話番号を教えたりするやろか」

「イヤイヤ教えてくれた覚えがあるぞ。しかし、オレは気にしないのだ」


 凜理は横目で満夜を見た。満夜は確かに他人に対して細かいことを気にするタイプではない。どちらかというと気にしたほうがいいくらい大雑把な性格だ。でなければ、一年の廊下で部員勧誘するときにためらっているはずだから。


「ほなら、満夜は白山さんをどうしたいん?」

「もちろん我がオカルト研究部の部員だ。家庭の秘密など誰でも持っている」

「そっか」


 それを聞いて凜理も安心する。まだ五ヶ月だけだが、菊瑠のことを信用していた。話したくない秘密は誰にでもある、満夜の言うとおりだ。いずれ菊瑠の方から自分たちに話してくれるだろう。


「ん? こっちは公園の道やない?」

「白山くんを迎えに行くのだ。電話で伝えられなかったのだから、直接言いに行く」

「ちょ、待ちぃな。突然家に行ったら困るんやないのん?」

「電話で代わるのを断ったのは白山くん自身ではない。赤の他人が勝手に断ったのだ。オカルト研究部の一員であることを白山くんが嫌がるのではない限り、我々は白山くんを見捨てるべきではないのだ」

「まぁ、そうやけど……」


 かっこいいことを言っているけれど、満夜の肩に仁王立ちになっている鵺が視界に入るとかっこよさが半減するから不思議だ。


「それにしても、それ、重くないのん?」

「あ? ああ……もう背後霊と同じだと考えるようにしている。いくら体を揺らしてもびくともしない。オレは乗り物ではないのだが……」


 すると、鵺がフンスと鼻をならした。


「神輿がしゃべることを許しているのだ。感謝するがよい」

「こんなやつのことは放置していいぞ。さぁ! いざ、白山くん宅へ急ぐのだ」


 公園の周囲を五分歩いたところで、凜理がなんだかへんだという顔をして満夜に聞いた。


「満夜、まさかと思うねんけど、白山さんの住所しらんのやないのん?」

「ギクッ」

「ギクッじゃないわ! てっきり住所くらい調べ取ると思うてた」

「ふふ……仕方がない。ここは最終兵器、ねこむすめに探してもらうとしよう!」

「なんでうちが探さなアカンねん!」

「猫だけにはなくらいきくだろう!」

「犬ちゃうわ!」


 二人で言い合いをしていると満夜の肩に乗っかっている鵺が口を挟んだ。


「うるさいのう。先ほどから何を言い合いをしておるのだ。その白山という小娘の家を捜せばいいのだな?」

「なに!? キサマ、白山くんの家がわかるのか!?」

「わからぬが、この付近に怪しい雰囲気が漂っておる」

「せやけど、怪しい雰囲気が白山さんとは限らんのとちゃうのん?」


 それを満夜が制する。


「凜理、忘れたのか。白山くんには白山龍神王の娘という嫌疑がかかっている。新興宗教いざなみ教が必ずしも清い宗教とは限らないのではないのか?」

「そやけど、何も悪いほうに取らなくてもええんちゃうん」

「いいか、凜理。何事も良い悪い、普通の区別ではないのだ。黒白グレーなのだ。ここで言う、いざなみ教はいざなみを祀っているという時点で限りなく黒に近いグレーなのだ!」


 そんなこともわからないのか! と、凜理を満夜がビシッと指さした。

 その手を、凜理がパシッとはたく。


「それは満夜の偏見と思う。とりあえず、交番に行って聞くのが一番や」

「交番など行かずとも、呪符で占えば一発でわかるものを……」


 正攻法を提案した凜理に反対できず、ブツブツと言いながら二人は公園にほど近い駐在所に向かった。




 平坂町の駐在所は町の規模に比べて小さい。元々民家が少なかったからその時代からの名残なのだろう。


「こんにちはー」


 中に入り凜理が声を掛けると、ドアが開き、中から警察官のおじさんが出てきた。


「何のご用ですか?」

「あの道に迷ってしまったんですが、白山さんの家を教えてください」

「白山……」


 おじさんは何か思い当たるような顔をした。


「白山さんの家はこの辺じゃ一軒だけなんだけど、そこで良いのかな?」

「いざなみ教の本拠地だ!」


 おじさんは満夜の突然の言葉に驚いたが、否定はしなかった。


「そうだね、そこの家で間違いないなら、あそこら辺ですよ」


 と言って、詳しい住所と道順を教えてくれた。

 白山宅は平坂山の麓にある家だった。高校から身代わり観音堂に行く道のりの途中にある。しかも高校側にある平坂公園の入り口の近くだ。


「目と鼻の先にあるとは……不覚だった!」

「ところでその方に乗ってるのはレッサーパンダかい?」


 おじさんの急な質問に、とっさにでた満夜の言葉は、


「こいつは猫だ! ニャーンと鳴け!」


 と言うものだったが、鵺は口をへの字にしたままうんともすんとも言わない。しゃべらないだけましなのかもしれないが、ここで詰問されると後が面倒くさい。


「猫にはアライグマみたいなヤツもいる。こいつはレッサーパンダに似た猫なのだ。さらば!」

「ちょ、待ちぃ!」


 逃げるようにして二人は駐在所を後にした。

 その代わり、白山宅をしっかり暗記して山側の公園に向かったのだった。

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