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1話、3000〜4000文字に編集しました。
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夕方近くなり、三人は四六時中鵺に噛みつかれて満身創痍の八橋と別れて、バスに乗って平坂町に戻った。
平坂大学のある山は日が暮れるのが早い。日が傾き薄暗くなった構内は一人で出歩くのがためらわれるほど不気味だったが、ここから離れるのだなと思うと……。
「ああ……名残惜しい。いかにも心霊現象の起きそうな場所だったのに……」
満夜だけが恨めしそうな顔で、背後に遠ざかっていく平坂大学を見つめた。
「やけど、満夜。鵺のことはどうするのん?」
「鵺か……動物を飼って良かっただろうか?」
「うちも一度聞かなわからへんし」
「わたしの家は無理です……」
三人の視線が椅子にちょこんと座るレッサーパンダに集中した。
「とりあえず、オレの家へ連れていくとしよう。ダメなら凜理が引き受けてくれるか」
「ええよ」
それを聞いてあからさまに菊瑠がほっとしている。
「白山くんは動物が苦手なのか?」
「いいえ、お母さんがあんまり動物を好きじゃなくて」
「ほう。それは仕方ない」
鵺は自由になった自分の体を前足で撫でつけては綺麗にしている。ちょうど赤ちゃんのように座っているので愛くるしい。うちでは飼えないと言っていた菊瑠が残念そうに鵺を見つめている。
そのうち、毛繕いに満足したのか、座っていた鵺が立ち上がると、嫌がる満夜の肩によじ登った。
「わしを飼うとかなんとかというておったが、そのようなことはわし自身が決めることだ」
「じゃあ、野良レッサーパンダにでもなるのか。と言うかキサマ重たいのだ!」
引き剥がそうともがく満夜の肩に張り付いたようにして離れない。
「不本意だが、わしの体と飛翔輪を見つけ出すまでは我慢しておいてやろう」
「我慢するのはこっちだ! 何を偉そうに命令をしている!?」
「それもこれもおまえの先祖がしたことゆえ、子孫のおまえが後始末するのが筋だろう」
「後始末だとぉ?」
「そうだ。おまえの先祖は功名心から侵略者一族の興を得るためにわしをバラバラにしてあまつさえ封印をした。今まで守られていた恩も忘れて、だ」
「オレの先祖が裏切ったとでもいうのか」
「おまえの先祖はわしの従者だったのだ」
「従者だっただとぉ!?」
「恩を仇で返しおった。そのことを水に流してやろうとしているのに、おまえはわざわざわしの怒りを買うことばかりしおる」
「先祖は先祖、オレはオレ。オレの知らぬことで恩を着せられても迷惑だ。それに、キサマ一人で何ができる。いまや、鵺の体などかわいいレッサーパンダではないかっ! 町中をその姿で歩き回ればテレビ局の格好の餌になるぞ! いいのか!?」
「てれびきょくというのはわからんが、確かに今のわしでは空も飛べず無力だな……よし、おまえをわしの従者とするゆえ、わしのいうとおりにするのだ」
それを横で聞いていた凜理はクロの言葉を思い出していた。クロは今までの行動を考えても鵺の味方をしているようだった。八束の剣を見つけようとしたりして、凜理たちを助けてきた。クロには鵺が自分たちの味方だとわかっているのだろうか……。凜理は心に決めた。
「うちは鵺を支持する。平坂町の守護神が鵺なら、うちのクロちゃんが反対するはずやもん」
「凜理はオレが鵺の奴隷になっていいというのか!?」
そういう満夜の首には居心地良さそうに鵺が丸まっているし、別に奴隷でもいいのではないかと凜理には思えた。
「奴隷やのうて従者や。もしかすると術とか念力とかなんか教えてもらえるんとちゃう?」
「ぬうう」
満夜が顔をしかめてうめいた。
「それに満夜は鵺のことをもっと知りたいんとちゃうのん? これがチャンスやのうてなんなん?」
凜理の言葉に満夜が苦悶し体をよじる。ひとしきりくねくねしていたかと思うと、人差し指を額に添えて顔を上げ、指の間から凜理を見上げながら低い声を出した。
「承知した。これも大儀。正式に鵺をオカルト研究部の研究対象とする!」
ふ、ははははははは——っ!!
他に乗客のいないバスの中に、不敵で迷惑な満夜の笑い声が響いた。
鵺
見た目レッサーパンダ、尾っぽが蛇。封じられていた銅鏡から勾玉を使って封印を解かれて自由になる。
銅鏡は実は飛翔輪という、車輪。鵺の前足の片方に取り付けられる。
もっふもふ。
八橋
平坂大学民俗学科助教授。イケメンメガネだが、変人。
白山龍神王
いざなみ教の教祖。謎人物。
菊瑠の姉
クッキーを焼くのが上手。今は謎人物。
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