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伝説を結ぶ言葉として、吟遊詩人の多くが用いてきたのは「めでたし、めでたし。」という成句だろう。
かくいう自分も、勇者アルトールの物語は、それで完結するだろうと考えていた。ただの羊飼いにすぎなかった少年は、聖剣に選ばれたことによって王家だけではなく建国の祖・女神の血筋を引く人間だと証明された。
魔物の森の王を大樹に封印したのちに、彼は本来の第一王位継承者であった王子エクトーケから王位継承権を譲り受け、国王として即位した。
勇者としての功績を讃えて王都には彼の彫像が造られた。
伝説の剣エクサルーバを空に向けて構えた雄々しい姿は、国民の誇りとなった。
しかし、傍らで常に彼を守ってきた最強の盾アイハ・イギスは、そこにない。
今から語るのは、勇者アルトールの物語の、「めでたし、めでたし。」の続きである。
(続・勇者アルトールの伝記 序章/ディヒター・アイネ)