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crowder 可笑しな青春のすゝめ  作者: 笹筒 木々
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crowder 可笑しな青春のすゝめ

校舎内





あれから私は先輩に拉致され校舎にいる。

玄関を出て右を向くと30メートルぐらい先に階段があり、その先も玄関になっている。

そこに先輩は向かっていった。

中に入るとスノコがあり無言で靴を脱げとアピールしていた。

先輩はさっさと靴を履き替えてスリッパをはいてしまう。

私は履き替えるものが無いので靴下のみ、なんとなく居心地の悪さを感じる。

きっとグレーだか黄緑だか分からないような汚い色のリノリウムがそうさせたのだろう。

数メートル先にある階段を登り、右手の奥の方にある廊下に入る。

廊下は薄暗く、涼しい風が吹いていた。

廊下を数歩行くと先輩が立ち止まり向きを変えた。

「ここが私の所属する部活の部室よ。」

そういう先輩の視線の先を見ると、教室とは違うドアノブのついたドアがあった。

中から蛍光灯独特の蛾などの虫を集めそうな白い光を発していた。

よくよく考えると私はまだ入学して日も浅い、というか時間が浅い。

そうなると部室には先輩達しかいないわけである。

フレンドリーな人達だといいのだが、そんな人は実際にはごく僅かな数しか存在しないのを私は経験から学んでいた。

私は普通に部室に入りたくないと思った。

「連れてきたぞー、部員を。掛けは私の勝ちだな。」

見学も仮入部もすっ飛ばして私は既に部員という認知らしいです。

ってゆうか、掛けしてたんかい。

という言葉を飲み込んで、

「失礼しまぁす。」

と言って来た道を引き返した。




































しかしまわりこまれた。











ガチャッ

部室に連行され、逃げ道も絶たれてしまった私は仕方なく目の前に広がる現実を眺める。

部室内は思っより広く、白い長机が長い辺同士を合わせて置いてある。

長机の周りには四脚のパイプ椅子が置いてあり、どれもなかなか年季が入っていそうだ。

そのうちの二脚には男子が座っていた。

奥の方の椅子には黒髪で眼鏡のいかにも知性を持て余している風なのが腰掛けている。

付け加えるとするならば、運動神経が悪そうだ。

偏見かもしれないが。

手前の方にいる人は茶髪っぽい感じで癖毛を拗らせたような前髪になってしまっているが、顔面偏差値が高いお陰で全然そんなことは気にならない。

格好はブレザーの下に着るやつを着て萌え袖をしていた。

( ブレザーの下に着るやつの名前なんだっけ?なんでもいいか。)

指は細く長くで綺麗だと思うが、少しだけ色白でそこはかとなくチャラさがにじみ出ている。

きっとカラオケの十八番はドラゴンボールのオープニングの曲だろう。

偏見かもしれないが。

首を右に向けると理科室によく置いてある丸椅子に腰をかけ本を読んでいる女生徒がいた。

こちらには興味はないようで眼鏡のレンズに文字列が写っている(ように見える)。

少し気難しい印象を受けざるを得ない。

笑ったらきっと可愛いのに勿体ない。

今度は左に向けると、本当に可愛い子がいた。

背は高くても150いかないくらいで綺麗な黒髪ロング。

カチューシャも印象的で梨ジュースのパッケージみたいな色で黒髪にとても映えていた。

もしかして私と同じように連れ込まれたのだろうか?




最初に話し掛けてきたのはインテリ眼鏡だった。

「本当にこの子は部に入ってくれるのか?」

と思ったが、ただ私のことをガン見し背後にいる先輩に話し掛けただけらしい。

「もちろん!そうよね新入生?」

そう言って私に無言のプレッシャーをかけてくる。

押せばなんとかなるとでも思っているのだろうか?

「いいえ、見学に来ただけです。」

「やっぱりな。残念ながら掛けは俺の勝ちのようだ。さっさと70円をよこせ。」

70円を受け取ったインテリ眼鏡はそのまま部室を出て行った。

「どんな掛けをしていたんですか?」

「部員を捕まえられるか、られないかでパックジュースをねぇ。」

気楽な調子で答えてはいるが目の奥にはチラチラと炎が燃えていた。

「まったく、そんなことで拗ねてるんじゃないわよ。」

そう言って会話に参加したのは本を読んでいた女生徒だ。

そちらに目を向けると依然として本を読んでいた。

〈自分はまだ本気出してないだけ~社会不適合者の戯言〉

表紙にはそんなことが書いてあった。

自己啓発本だろうか。

「あなたのことだから、何をする部活か教えてないんでしょ。」

「さっすがぁ、わかってるねぇ。」

「適当過ぎるでしょ、それでも部長なの?」

衝撃の事実。

「部長だからってなんでも押し付けられるのって理不尽だと思いまーす。」

ガチャッ

ジュースを買いに行っていたインテリ眼鏡が帰ってきた。

「ドアの前にいるとかなり邪魔なんだが。」

それを先輩は無視して

「全員揃ったことだし、これから自己紹介でもするかね。」

自己紹介を始めるそうだ。










「じゃあまずは私かね。」

そう言ったのは私をこの部室に強制連行したせんぱいだ。

「私は白樺 蓮華、cvは佐倉綾音よろしくね新入生。いや、新入部員。」

このギャルっぽい部長はそんな名前らしい。

似合う似合わないは別として。

cvって何?

「次は俺か。俺は矢葱 聡一郎という。よろしくな後輩。cvは小野大輔だ。」

矢にねぎと書いてヤギと読むらしい。

また出たよcv。

「私は田所 裕佳梨、宜しく。」

そう名乗った彼女はまだ本を読んでいた。

ノールックで話すなよ。

お母さんに人の目を見て話しなさいと言われなかったのだろうか?

そう思っていると彼女はおもむろに眼鏡を外しこちらを見る。

「心外だわ、母は私にしっかり教えてくれたわよ。cvは坂本 真綾だから。」

そう言って眼鏡をかけ直し、また本の虫になった。

「ごめんね、言ってなかったね。ゆかりん心が読めるんだわ。」

事前情報があってもどうにもならんわ。

ていうか、尋常じゃなくね?

「今度は私か、私は桜花 実乃李こう見えて先輩だ。よろしく後輩。cvは内田 真礼だ。」

そう自己紹介したのは唯一の同胞(はらから)だと思っていた女生徒だ。

よく見てみるとタイやスリッパの色が自分の色とは違う。

今日イチの驚きだ。

「同級生だと思ってました。」

「人を見た目で判断するとは感心しないな後輩。」

見た目がコンプレックスなのだろうか?

さっき自分から「こう見えて先輩」発言していたのに。

「最後は…僕か…、僕の名前はにっ『あの〜さっきから先輩方言っているcvって何ですか?』だよろしく。」











チャラ男先輩の自己紹介を聞く必要があるだろうか?

いや無い。




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