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三賢候

「ちちうえ!」

「ロドルフッ!言葉を話せるようになったのか!」

ヴァレリーはたどたどしい足どりで歩いてくる次男のロドルフを抱き上げた。

「ちちうえ、おかえりなさいませ。」

「おお、ファブリス!大きくなった!」

長男のファブリスも右手で抱き上げた。

「陛下、お帰りなさいませ。」

「マルスリーヌ、今帰った!留守中ご苦労だった!ロドルフが話せるようになっていたか!驚いたぞ!」

「はい、真っ先に覚えたのが「ちちうえ」でしたよ。それからもう一つご報告が・・・」

そう言ってマルスリーヌはお腹を押さえて見せた。

「子が出来たのか?」

「はい。」

「目出度い!」

二人の王子を下し、ヴァレリーはマルスリーヌを抱き寄せキスをした。

「子は多い方が良い。しかし、嫁いできてから毎年苦労を掛けるな。」

「いえ、今度は女の子がよろしゅうございます。」

「そうか、しかし元気ならどちらでも良い!」

ヴァレリーは再び二人の王子を抱き上げた。



王城の中庭には、主だったブランシュ王族、貴族が参集していた。

その後ろには、バルドーの市民もいた。

ヴァレリーはその前に立った。

「ブランシュ万歳!ヴァレリー陛下万歳!」

怒濤の歓声が沸き上がった。

「凄いな。派手好きのヴァレリーらしい。」

レアンドルが隣に並ぶオーレリアンに話しかけた。

「ええ、城内に市民を入れるなど前例が有りませんからね。でもヴァレリー兄上らしいですよ。」

オーレリアンも拍手を続けながら応えた。

「まあ、ここ何十年、大なり小なり戦乱が続いていたのが、ようやく収まるのだ。このくらい派手でも良かろう?」

バンジャマンも目を細めて息子ヴァレリーを見上げ、拍手を続けた。

「父上!兄上!お上がりください!」

ヴァレリーはテラスから二人を呼んだ。

バンジャマンとレアンドルは顔を見合わせた。

「お二人とも!早く!」

ヴァレリーに促されバンジャマンとレアンドルはテラスに上がった。

一頻り大きな歓声と拍手が続いた。

「集まってくれた皆に、いや、ブランシュ国民全てに報告したい!

先のロジリアとの戦役に勝ち、クルメチアの独立を勝ち得たことで、北の憂いは取り除かれた!」

「おおっ!」

聴衆から歓声が上がった。

「既に知っているとおり、先先代国王、我が父バンジャマンは、長年海洋覇権を争うエーデランドとの和平を為し、弟オーレリアンと共に南の憂いを取り除いた。

そして先代国王、我が兄レアンドルは、これも長年の懸案であったダレツとの和平を為した。このお二人の功あってこそのロジリア戦役の勝利であった!」

ヴァレリーはそう言ってバンジャマンとレアンドルを導き、握手を交わした。

「改めてこの偉大な二人の先王に拍手をお願いしたい!」

大きな歓声と拍手が沸き上がった。

「今後、ブランシュはエーデランド、ダレツ、ナルウェラントといった周辺国家との協調によって、これまでにない平和的な繁栄を目指すこととなる!

西の海上貿易、北海条約による三国貿易、東のダレツ、セルデニアからは優良な鉄鋼資源の交易とダレツの海上貿易に対する協力事業など経済案件は山積みだ!

しかし全て大陸の平和のための事業ばかりだ!

未だロジリアに対する警戒は怠れないが、皆に宣言しよう!

戦争の時代は終わった!

平和と繁栄の時代が始まった!

国民よ!私と共に歩んでほしい!平和の道を!繁栄の道を!」

「おおっ!」と歓声が沸き上がった。

ヴァレリーの名を連呼する。

バンジャマンの名も叫ばれる。

レアンドルの名も。

「三賢候万歳!」

聴衆から発された「三賢候」という呼び名はあっという間に広がった。

「そうだ!ブランシュの三賢候万歳!」

「三賢候万歳!」

この時から、バンジャマン、レアンドル、ヴァレリーの三人を「三賢候」と呼ぶようになった。

ブランシュでもっとも波乱にとんだ時代の話である。


fine


「ブランシュ王国記」王弟ヴァレリー伝 完結しました。

読んでくださった皆様、ありがとうございます。

「ブランシュ王国記」は、また別の形で連載する予定です。

もっと魅力的なキャラクターを描けるよう頑張ります。


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