ガレア島の主
短いパートです。
ガレア島の洞窟通路の探索が開始された。
入り江からの通路は一つだったが、内部はいくつかの通路に分岐していた。
一つは、入り江の縦穴をぐるりと回るように上へ上へと続いていた。
途中には、縦穴に向かって掘られた明かり取りの小穴があり、階段状の通路に光を届けていた。
この回廊状の階段通路からいくつかの横道があり、一つ一つ調べていったが、特に問題となりそうな物はなく、そのほとんどが小部屋であったが、使用目的はハッキリしなかった。
しかしそのうちの一つは、大きな空間を擁しており、他の小部屋とは違い天然の洞窟らしかった。
そしてその洞窟からとんでもないものが発見された。
「オーレリアン殿下!こ、これをご覧になってください!」
探索の兵が血相を変えてオーレリアンを呼んだ。
「何事だ!」
兵が照らし出した洞窟の隅に、大量の布のような物が見えた。
「これは・・・」
オーレリアンは、ハッキリと理解した。
大量の布状の物体には、白く変色してはいるが、鱗状の紋様が見てとれた。
「蛇の脱け殻か・・・それにしてもこの大きさは何だ・・・」
優に15mは有るだろうか?
こんな大きさの蛇が存在するのだろうか?
その時オーレリアンは気付いた。
昨夜行方を眩ませた兵は、この巨大な蛇に襲われたのではないか?
一呑みに呑み込まれ、物音一つ発てずに去っていった。
喉がカラカラに渇いているのを感じた。
オーレリアンは、何か寒気がするような視線を感じた。
「皆!注意しろ!バラバラになるな!松明を!もっと灯りを!」
オーレリアンの声に兵達は洞窟の真ん中に集り円陣を組んだ。
どこからか「シュッ!シュッ!」と空気が勢い良く吐き出されるような音が聞こえた。
生臭い臭いも漂ってきた。
「う!上だ!何か居るぞ!」
兵が叫んだ。
その直後、頭上から巨大な何かが円陣の中心目掛けて落ちてきた。
「うわっ!」
「何だ!」
「ば!化け物だぁ!」
「フランツ!フランツが呑まれた!」
洞窟の天井から垂れ下がったのは、信じられないほどの長さと太さを持った大蛇だった。
フランツと呼ばれた兵は、上半身を呑まれ、その下半身は力無く大蛇の口から垂れ下がっていた。
大蛇は、黄色い目を松明に照らされながら、ゆっくりと天井へ戻ろうとしていた。
あまりの出来事にオーレリアンもウジェーヌも声が出なかった。
ヒュッと空気を切り裂く音がした。
矢が放たれ大蛇の体に当たったが、硬い鱗に弾かれた。
「矢を!矢を射よっ!」
オーレリアンの声で我に帰った兵が次々と矢を射始めた。
しかしその殆どが硬い鱗に弾かれた。
だが、いくつかは大蛇の腹面に突き刺さった。
「腹だ!腹を狙え!」
オーレリアンも弓を取り立て続けに射始めた。
大蛇は突き刺さった矢を意に介さず暗い天井へ姿を消した。
「ウジェーヌ・・・一度船に戻る・・・一筋縄では行くまい・・・」
人間相手ならやり様はある。
しかし化け物相手では勝手が違った。
オーレリアンは、当面港付近の蛇退治と森林の焼き打ちに専念することにして、ヴァレリーの指示を仰ごうとエーデランドに使者を差し向けた。