4話 「情報屋のナオキ」
────キーンコーンカーンコーン
遠方から遅刻五分前を告げる予鈴が響く。
…最悪だ────!
昨日、同級生シユンの先輩、小山の見舞いから帰ったのち、カルマはシユンとインターネットで深夜2時までオンラインゲームをやっていた。
そのせいで寝過ごしてしまったのだ…
「クッソ!」
いつもはシユンと一緒に歩いて登校するのだが、流石に今朝は…
「おっ!?」
────シユンだ!
「おはようございます!」
「おお、おは」
シユンも同じ日に寝坊か…
なんか親近感わくな。
そんなどうでもいいことを考えながらも2人は全力で走る。
うちの学校は、遅刻への処罰が厳しく、8時35分には校門が閉められる。
それに間に合わなかった場合、裏口から入って生徒指導だ。
カルマとシユンは走る…!
アーケードを走り抜け、門を曲がると…
50m程先に校門が見える。
「うおおおおおおおおおおおおおおお」
カルマは全速力で走る…!
その数センチ後ろをほぼ同じスピードでシユンが追いかける。
キーンコーンカーンコーン
まずい…!
チャイムがなった。
ガラガラガラガラガラガラガラ…
校門が徐々に閉まっていく。
ガタンッ!
「うっしゃー」
カルマは歓喜の雄叫びをあげる。
しかし、そこにシユンの姿は無かった。
振り返るとシユンは残り10mという所でうつ伏せに倒れていた。
「シユン…!おいシユン!」
ガシャンッ
カルマは慌てて引き返そうとしたが、無情にも校門は閉まってしまった。
「痛いですよ」
シユンはそう言って立ち上がった。
どうやらコケただけのようだ。
心配した自分が馬鹿だった。
「酷いもんです。自分だけ先に行くなんて…」
膝から少し血がでているシユンは)やれやれといった表情でこちらを見ている。
カルマは明るく答えた。
「おつデース」
シユンは1人、とぼとぼと生徒指導室へと繋がる裏口へ歩いて行った。
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昼休み。
カルマ、あんざい、シユンの3人はいつものように大きな桜の木の下にあるベンチで弁当を食べている。
「あっ!」
ふいにカルマが声をあげる。あんざいがカルマの目線のほうを見てみると────
「ナオキくんじゃないですか。」
先に言ったのはシユンだった。
「ちょいーっす~」
ナオキはいつものウザいテンションで左右にぴょんぴょん跳ねながらこちらに向かってくる。
「なんかようかい?」
ナオキはキメ顔で答えた。
流石のウザさにあんざいは若干ひきつつも、ホムンクルスについてナオキに聞くことにした。
「旧市役所の近くの研究所についてだけどさ。」
あんざいがそこまで言った途端、ナオキの表情は一変した。
「ほう…」
ナオキは意味深な顔をした。
「詳しく教えてくれよ。」
あんざいがそういった途端、
「いいです…ヨッ!っと…」
ナオキはあんざいの弁当にあった馬鹿デカい唐揚げを1つヒョイとつまみあげるとパクりと食べてしまった。
「テメェ…!」
あんざいはブチぎれた。
ナオキは涼しい顔で、
「等価交換ってやつさ。1000万だぞ。」
そう聞いてあんざいは黙り込んだ。
「さあ…教えてくれ…」
ナオキは話し始めた。
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「つまり、研究所側は政府からの信頼を失いたくない。だから、研究の失敗を隠蔽しようとしているんだ。」
「だから警察とかじゃないのか…」
「研究所は政府からの厚い信頼を受けている。だから莫大な研究費用が送られている…」
「何故、政府はそこまで研究所を信頼しているのでしょうか…」
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「なるほど。」
正直あまり為になる収穫はなかったが、凄い量の情報が分かりやすく頭に入ってきた。
「おーっと、あとコレ。」
ナオキは自身のポケットから青いカードを取り出してあんざいに渡した。
「これは……」
シユンはポケットに入れていた財布の中から、同じカードを取り出して真横のカルマに渡した。
「お前も"会員"だったのか?」
ナオキはカードを持ったシユンを凝視した。
「へ?」
シユンは首をかしげた。
「これは小山先輩から預かったもので…」
カルマが上手くフォローする。
「……そうか。小山とは知り合いなのか…」
「なんかあったんですか?」
あんざいが聞く。
なにか気がかりな事があるのだろうか。
「いや。何でもないさ。」
ナオキは下を向いている。
あんざいは感づいた。
『何かあったんだ』そう思ったあんざいはシユンに悟らせるまいと話題を変えた。
「おいナオキ。」
「なんスか?」
「そのカードってなんだよ。」
「招待コードさ。」
「は?」
あんざいやカルマ、シユンにはピンとこない。
「ゲームとかでよくあるだろう?友達を誘ったら双方がボーナス貰えるってやつさ。このカードで50万貰えるんだ。」
流石情報屋だ。例えが分かりやすい。
「おっと、時間だ。昼休みがもう終わっちまうよ。」
ナオキはそう言って座っていたベンチから立ち上がり、
「まあ、研究所に行くといいよ。」
といって去っていった────────