2話 「病室の小山」
仲良しメンバーのカルマ、シユン、あんざいと
アホ男子タロウ、謎の少女カッピーの5人は
小山潤の見舞いにいくのであった…!
《結構略》
ピピッ
白い服を着た看護師が眠っている患者、小山少年の熱を測る。
その近くで知り合いとみられる4人の男と1人の女が小山を凝視していた。
否、4人が凝視していたのは小山ではなかった。小山のちぎり取られたような右手、右足を凝視していたのだ。
「シユン…先輩の手足は…」
5人は信じられないといった表情で小山少年を見ている。
うち、1人がこちらを見て言った。
「先輩は風邪じゃなかったんですか?」
どうやら私に聞いているようだ。
真実を伝えるか迷ったが、訳あって隠す事にした。
「事故だ…彼は交通事故にあったようだよ。」
心が痛んだが、仕方がなかった。
小山少年は出過ぎたんだ。
欲深いという罪の代償だ。
そう心の中で呟き、自分を落ち着かせたのち、病室を去った。
────────────────────
「小山先輩!……小山先輩!」
シユンが必死に小山先輩の名前を連呼している。
カルマらが病室に到着して、既に1時間が経過していた。
「もう帰ろうぜ!こんなことしても意味ねーよ。馬鹿みたいだし。」
タロウは空気を読めていないらしい。
そんなタロウにカルマは苛立ちをおぼえていた。
────────────────────
「……………………」
小山が目を覚ますと、そこには後半のシユンと、その連れが4人、計5人が立って自分の顔を覗き込んでいる。
「…起きた」
後輩のシユンだ。シユンは続ける。
「何があったのでしょうか?」
小山は少し躊躇したが、結局は話すことにした。
「旧市役所の近くに、第一研究所があるだろ?」
「はい…………?」
カルマは首をかしげた。あんざいや、タロウも同じような反応をしている。
たしかに旧市役所の近くに研究所はあるが、研究所には裏山の駐車場が使われている。
研究所には道路は通っていない筈だ。
事故では無かったのだろうか?
「そこの研究所では、つい1週間前までは人造人間の生成についての研究がされていた。」
小山が言うと、
「ハハハハハッ 厨二病乙www」
タロウが吹き出した。
しかし、それを無視して小山は続ける。
小山は真剣な顔をしている。
「そこで、時給1000万のバイトを雇っているんだ。」
一同の顔が曇る。否、カッピーは違った。聞こえていないかのようにそっぽを向いている。
「それってヤバイやつなんじゃ…」
あんざいが口を挟む。周りにいたカッピーを除く2人も同じ事を思ったようだ。
「あれっ!?」
小山の声が裏返った。よほど驚いているのだろう。
「カッピー……生きていたのか…」
カッピーが初めて口を開く。
「お前をこの病院まで担いで来たのは私だ。手足を食いちぎられ気を失ってはいたが、まだ生きていたからな。」
あんざいが何かに気づいたように言った。
「研究所に何か凶暴な動物でも侵入し、それを捕獲、又は殺すというバイトでしょうか?」
小山は少し考えて答えた。
「8割がた正解だ。ただ、違うところがある。」
「侵入したのではなく、生成 していた全てのホムンクルスが完成と同時に暴れ始めたんだよ。」
今度はシユンが口を挟む。
「では研究所は…?」
「万一の為にホムンクルスの研究がされていた地下3階より下は、各フロアごとにデカい防壁がされていてね。上は安全だよ。」
タロウは言った。
「お金貰えるならなんでもやります!!」
シユンは思った。
1000万…!音ゲーが好きな自分にとっては好都合だ…!!そんなに金があれば新しい音ゲーがどれだけ買うことが出来るだろうか。
『お金が欲しい。』
あんざいは思った。
1000万…!それだけあれば新作ゲームかいまくりじゃねーか!
本当か…
危なそうだな…
でも
『お金が欲しい。』
カルマは思った。
コイツら顔からして乗り気だな…
興味あるし…
ついでにお金も貰えるなら…
本当についでだろうか?
否、────
『お金が欲しい。』
「シユン、俺のポケットからカードを出してくれ。」
「はい。」
小山のポケットには青いカードが入っていた。
「それはIDだ。…それ…をけ…研究所に…持っていくと…いい……」
「小山先輩?!」
シユンは素早く小山の横にある機械を見た。
「大丈夫…少し…クラクラするだけだ………。た……ただの貧血だろう。」
どうやらそのようだ。機械を見てみると、心肺共に異常はなく、血圧も正常値だ。
「詳しいことはナオキに聞くといい。」
そう言って小山は深い眠りに落ちた。