Secret6
暗ーい暗ーい闇の中…
「きゃーーー!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
「何なのーー!?」
三人の絶叫が延々とこだまするのであった…
* * *
さかのぼること一時間前…
だいたいの説明を聞き、ついに花憐ちゃん、光輝くん、私は異世界に行くエレベーター(?)の前に立った。
見た目は普通のエレベーターにしか見えないため、これで本当に違う世界に行けるのかなんて疑問に思ってしまう。
「いよいよね」
「ああ」
「緊張するなぁ…」
それぞれ思う事は多々あるみたいだけど、三人共通してひとつ言える事がある。それは、みんなわくわくしているということだ。現に、私も多少恐怖があるものの、どんな世界が待っているのか楽しみで仕方がない。
「沙羅さん、花憐さん、光輝さん。気をつけて下さいね。」
蘭ちゃんが心配してくれた。
「沙羅ちゃんにしばらく会えないの嫌や〜。今からうちも行っちゃダメなん!?」
と、茜先輩。
「ダーメ。茜は俺が側にいてやらないと、何するかわかったもんじゃないからな」
山久先輩がほっぺを膨らませている茜先輩に釘をさす。
…あれ?今何気なくすごい事言ったような…
「またまたぁ〜茜先輩にラブですね!山久先輩は!」
…ええ!!
「二人は付き合ってるんですか!?」
前も誰かに同じような事を言った気がするけど…
「まさか!なわけないやろ〜沙羅ちゃん!うちは山久なんかより沙羅ちゃんの方が100倍好きやで?」
「俺も同感。誰がこいつを好きなんて言った?」
花憐ちゃんがいきなり驚いた顔になった。
「そういう意味じゃないんですかぁ!?だっていっつも二人でいるじゃないですか!私はてっきり付き合っているのかと…!」
と花憐ちゃんが言う。
「…あ〜、それ間違い。っていうか、付き合えない。姉弟だし。」
『…ええ〜〜〜!!?』
これはみんなが目をまるくした。どうやら初耳だったみたい。
「ち、違うって!姉弟でも血が繋がってないんや!…もう、誰にも言わんて約束したやろ!?」
「とか言って茜もいま話したよな?誤解されるより良いだろ」
「それはそうかもしれんけど…」
「はい、ストップ!話しがかなりそれてるだろ。その話はあと。今は三人を送らないと!」
と言って止めたのは、龍先輩。
あ、たまには部長らしい所もあるんだ、とちょっぴり見直した。
「いいか、沙羅はこれが初めてなんだ。花憐と光輝がしっかりしないとだめなんだぞ。異世界に行くのはとても危険なんだから、気を引き締めて行けよ!」
龍先輩は、私達に喝をいれた。
蒼葉先輩が紙を持ってきた。
「それじゃあ、詳しい任務の説明をするわ。時代はこっちの世界でいう中世、絶対的な身分がある世界よ。三人が行く国は領土も経済的にも豊かで平和な国。でも、最近その国の王宮で何か異変が起きているらしいの。そこで、三人は何が起こっているのか、原因をつきとめて欲しいのよ。」
ああ、だから貴族なんだ。私は没頭貴族だけど…。
でも、頑張って調査しないと!
「連絡はなるべくこまめにしてね。」
『はい!!』
蒼葉先輩に促され、エレベーターの中に三人が入る。
扉が閉まり、ゆっくりと動き始めた。
「……」
沈黙が流れる。
すると、いきなりガガガ…という妙〜な音がした。
それを聞いた花憐ちゃんは、顔を青ざめた。
「!!すっかり忘れてたわ!このエレベーター、スピード調節ができないのよ〜!!」
−−その瞬間。
それは、人生で一番最悪な乗り物だった。
* * *
『沙羅!!起きなさい!』
花憐ちゃんの怒鳴り声と同時に頬に鈍い痛みを感じて私は意識を取り戻した。
「全く沙羅ってすぐ意識なくなるわね。」
「だからって頬つねることないんじゃないか。赤くなってるし。大丈夫か?沙羅。」
光輝くんは、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
わぁー、眩しい!!
顔が近いよ。美少年のドアップは心臓に悪いーーー。
「全然大丈夫!」
私は、その場から急いで立ち上がる。
辺りを見渡すとあの恐怖のエレベーターの中ではなかった。ヨーロッパ風の家々が建ち並んでいる路地裏のような場所。
ここって、もしかして…。
「異世界!?凄い本当に来たんだぁ!!でもあのエレベーターからどうやって…?」
意識がとんでたから覚えていない。
「あのエレベーターは、あれに繋がってたみたい。」
光輝くんが、指さしたのは大きな酒樽だ。酒樽の中を覗くとあるはずの底がなく何処までも続きそうな暗闇が広がっている。
「スピードの加減も出来ないし場所の指定も出来ないからやんなっちゃうわ。せっかくのドレスがぐちゃぐちゃじゃない。」
ドレスに付いた埃をはらいながら、花憐ちゃんが言う。
「じゃぁ、ここからはみんな1人で行動だからしっかりこの世界で何が起きてるか調べるわよ。」
えっ、1人で行動するの!?
「……沙羅、1人で大丈夫か?」
また、光輝くんが私の顔を覗き込んでくる。
光輝くんの顔が眩しすぎますーーー!!!
「だだだだ、大丈夫!!」
今、顔真っ赤だよ。
恥ずかしいーー/////
「光輝、沙羅から離れなさい。沙羅が困ってるでしょう。あんたの腹黒スマイルで沙羅が毒牙にかかったらどうしてくれるの。」
ど、毒牙!!?光輝くんって実は毒蛇!?ま、まさかそんなわけないかぁ。
「腹黒スマイルとは失礼だろ?花憐。」
光輝くんは、爽やかに微笑んでいる。
「沙羅。気を付けなさい。あの笑顔で何人の女性を泣かせてきたことか…。沙羅は、1人でも大丈夫よね?」
「もちろん、大丈夫!」
こんな美形の2人といたらいろんな意味で目立ちそうだもん…。
「それじゃぁ、夜の12時にまたここに集合ね。調査報告しましょう。あの時計台を見れば時間わかるから。」
時計台の針は午後3時を指していた。
「わぁーー!凄いーー!」
花憐ちゃんと光輝くんと別れた後、路地裏から出てみると広い広場につながっていた。広場には、たくさんの人が溢れ、とても活気づいている。
お城が見えるーー!!白いーー!絵本とかで見たことがあるお城だぁ。あの中に王子様とかいるのかなぁ?
「あ、しっかりこの世界の事調べなきゃ。」
まずは、話しかけやすい人に聞いてみよう。
「あの……。」
近くにいたお婆さんに話しかけようとした途端、広場の中心から騒ぎ声が聞こえた。
何だろう……。騒がしい声がする方向に行くと3〜4人の男が1人の少女に話し掛けて何処かに誘っているようだ。
あの女の子嫌がってるじゃん。これは、俗に言うナンパ!!助けなくちゃ!!
「ちょっと!お兄さん!!彼女嫌がってるじゃないですか。」
少女の前に立ち男達から離れさせた。
「はァ?あんたには関係ないだろ!!」
「痛い目見たくなきゃ、お嬢ちゃん帰んなっ!!」
男達は、指の骨を鳴らして威嚇してくる。
「痛い目あうのはどっちですかね。」
良い運動になるかなぁ〜。うーん、5秒で片付くな。
「この小娘が!」
男達は私に一斉に殴りかかってきた。
ボロボロになって逃げていく男達の背を見ながら私は後ろにいた女の子に話し掛けた。
「大丈夫?あいつらに何かされてない?」
女の子の顔をまじまじと見てしまった。金髪美少女!年は私よりも少し下かなぁ。わぁー、目が青い!服もかなり高そうな感じが…。何処かのご令嬢かな?
「あなたこそ、お怪我はしていませんか?1人で男の方達に立ち向かって…。」
声まで綺麗…。
「大丈夫だよ。私黒帯だから!」
柔道やってて良かったぁ。
「お怪我がなくて良かったです。あ、助けてもらいありがとうございます。私、エディと申します。あのー、お名前教えて頂けますか?」
「私は沙・・・じゃなくてサーラです。」
危ない、危ない。ここではサーラだった。
ゴーン ゴーン
時計台の針が6時をさし鐘が鳴り響いている。あと6時間・・・少し急いだ方がいいみたい。
「エディちゃん。私お城に行かなくちゃいけないから。」
「え、お城ですか?」
「う、うん。また、会えたら良いね。じゃぁー、バイバイ!」
私はお城に向かって走りだす。後ろで、エディちゃんが何か呟いた気がしたが、走る事に集中していた私には聞こえなかった。
「お城に行くのなら、また会えますよ…。…サーラ。」
エディは、お城に向かって走りゆく少女を見つめていた。
「エディ様!!!」
振り返ると身なりの良い長身の老人がいた。
「また、そのような格好で剣の練習から抜け出して…。捜しましたよ。自分の身分をわきまえて下さい。」
老人は、困り果てた顔をしている。
「あー、セバスチャン来たの?…剣の練習は、ロディの方が得意だもん。別に一日くらい出なくてもいいじゃん。それに…今日抜け出したおかげで面白い人に会ったんだ…。」
太陽は、ゆっくり沈みかけていた。