Secret3
「龍先輩、新入部員を連れてきましたわ。」
と、花憐ちゃんはいかにも俺が部長ですみたいな、筋肉質で背の高い人に話しかけた。
部室のような(それでいて高級感漂う)部屋を見渡すと、四人ソファーに座っている。
「おっ!めずらしな、新入部員なんて。君、名前は?」
うわー、社会研究部っぽくないなぁ!野球部にいそう。・・・てゆうか、見た目とかなりギャップがあるな、この先輩!
「乙宮沙羅です。」
「沙羅!よくきてくれたっ。いやぁ〜部員が少なくてさ、ちょっと困ってたんだ。俺は龍。まぁ、一応部長っていうことになってる。よろしくな!」
完全に入部することになっているらしい・・・。すると、龍先輩の隣に座っていた人が立ち上がった。
「こら、私達の紹介くらいしてくれたっていいじゃない。初めまして、沙羅さん。副部長の蒼葉です。分からないことがあったら遠慮なく言ってね。」
うっわぁ〜、これぞ大和撫子だ!と瞬時に思った。とにかく、超〜美人!!真っ直ぐで腰まで伸ばした黒髪。
すらっとした、モデルみたいな背。欠点が全く見当たらない。いや、欠点がない所が欠点なのかも・・・。
蒼葉先輩が立ち上がると、後の二人も立ち上がった。
「俺は、一年の金城京。」
「私も同じく一年の東堂蘭です。」
「あの、皆さん。よろしくお願いします!」
と言って私は頭を下げた。
「まぁ、座って座って。」
蒼葉先輩に促されて、ソファーに座る。ここで、私はさっきからずっと思っていた事を聞いてみた。
「あのー、社会研究部って何をするんですか?」
社会研究部と言う名前からして、正直オタクっぽいなぁと思ったしまった。
でも今ここにいる人は、全員そんな感じがしない。さっき、花憐ちゃんが社会が優秀ならオッケーみたいな事を言ってたし・・・何なんだろう?疑問を浮かべた顔をしていた私に、龍先輩が笑いながら答えた。
「きっと、最初オタクっぽいとか思っただろ。まぁ、仕方がないんだけどな。確かにここは、社会が優秀な生徒が入る部活だ。表向きはな。」
「・・・え?表向きって・・・。」
さっき花憐ちゃんが不気味な笑いをしたのはこの事なんだろうか?
「おっと、これ以上は言えないぜ。まだ沙羅は仮入部だからな!これからテストを受けてもらう。筆記テストだ。満点取れたら晴れて正式入部だから気合い入れてがんばれよ!」
「えっ・・・いきなりですか!?」
何も説明されずにテスト用紙を渡される。そして言われるがまま、問題を解き始めた。
「終わった〜。」
「おつかれさん。見事満点だから、沙羅は今から晴れて正式入部だ!」
「おめでとう、沙羅さん。」
と、蘭ちゃんが言ってくれた。私は凄く嬉しくなった。
『ようこそ、Top Secretへ!!』
――え?≪Top Secret≫って・・・ナニ??
* * *
「・・・。Top Secret?」
えっと・・・。つまり日本語に訳すと・・・トップは【最大】、シークレットは【秘密】だから・・・。
【最大の秘密】って事?
「大まかに言うとそうだなぁ。沙羅ってすぐ口に出るよな。」
龍先輩は、呆れた口調で言った。
私は、またしても口に出していたらしい。
「えーと、つまりどうゆうことですか?」
全く話の真相がつかめない。
「さっき、言ってた通りだけど・・・?」
「えっ?!」
もう少し何か詳しく教えてくれないかなぁ!!本当にこの人、部長なのっ!?
「こらっ!龍。もう少し詳しく説明してあげないと沙羅さんが可哀想でしょ。」
蒼葉先輩は、眉間にシワをよせて龍先輩をどついた。
「・・・すまん。説明するのは苦手で・・・。」
龍先輩は、みるみる小さくなっていく。
美人を怒らせちゃいけないなぁ・・・。
「全く。私が沙羅さんに説明します。えっと、何から聞きたいですか?」
「えっ・・・。」
聞きたいことは山積みだ。
「あの・・・。Top Secretって何ですか?」
【最大の秘密】っていったら何か凄そうな感じがする・・・。
「私達の部活は、表向きは地味な社会研究部だけれど裏は国家機密の組織です。通称、《Top Secret》。」
「へぇー。・・・って、えぇー!!本当ですかっ!?」
「本当です。」
蒼葉先輩の顔付きは、真剣だ。辺りを見渡すと、みんな静かに頷いている。
国家機密って何!?
政治の事とか・・・!?
「あの・・・。国家機密って・・・?」
私の顔は、多分かなりひきつっていたと思う。
ヤバい部活に入ってしまったのかも・・・。
「表ざたにされていない世界についての事よ。」
「表ざたにせれていない・・・世界?」
「そう。一般的には異世界と言うと思います。」
「い、・・・異世界!?」
異世界・・・。昔お父さんに異世界について尋ねたことがあった。
『ねぇねぇ、お父さん。この絵本みたいに魔法があったり、魔物がいる世界って何ていうの?』
『異世界っていうんだよ。沙羅。』
『へぇー、お父さん!私、異世界に行ってみたい。』
『・・・。そうだね。いつか行ける日が来るかもね。』
『うん!!』
それから私は、年を重ねるごとにこの世に異世界が存在しないことに気が付いた。
あの時、お父さんは何故、私の行ったことに対し否定しなかったんだろう・・・まだ私が幼かったので子供の夢を壊したくなかったからか・・・それとも、お父さんは異世界があることを信じていたのか・・・。
「沙羅さん?」
「えっ、はい!」
蒼葉先輩の声で、現実に引き戻された。
「沙羅さん、心ここにあらずでしたよ。」
「すみません。」
そういえば、さっき蒼葉先輩は異世界に行って調べるって・・・。
「異世界に行く・・・えぇっー、!!」
ありえないでしょ!!!!何なんだ、この部活は!?