6話 悪役令嬢は国王陛下に感謝を捧げる
夜に最終話投稿します。
ここまで付き合って下さった読者の皆様本当にありがとうございます。
ー謁見の間にて ー
「ツッ!…それは…!」(おい!ローズ⁉)
「いかがしたアーレスバッハ公爵?」
「い、いえ何でもございません。ところで陛下、そちらの殿下とどこかの娘との話は私にはまったく関係の無い話。後程いくらでもお話されるのがよろしいかと。それよりは我が娘の件を先に話して頂きたい」
「公爵!その言い方はあまりに無礼であろう‼」
「やかましい!私の娘を卑劣だの、悪辣だの、好き放題言いおって!たとえ王太子と言えども私はあれの父親として黙っていられるものか!私は娘の涙を見たのは初めてだ。あの気の強いローズマリーが泣いて走り去ったのを見て私は覚悟を決めた。この婚約、喜んでこちらから破棄させて貰おう。不服とあらばアーレスバッハ公爵とその一族が全力で抗わせて頂く!陛下、陛下は英明なれど跡取りの教育を間違えましたな」
(ローズめ…しっかりヤツの手綱を握っておれよ!ヤツが出て来ては今までの苦労が水の泡になってしまうではないか!本音を言えばこんなバカ共の事などヤツの好きにさせたいがそうもいかん。貴様らの命を守る為にこんな小芝居をせねばならんとは!)
「……アーレスバッハよ、もう無理なのか?何をしても変わらぬか?」
「父上!何故こんな無礼を許しているのですか⁉いったい何が無理なのですか⁉王太子である私に向かっての暴言許しが「黙れっ‼」ヒッ」
「……わしが甘かった様だな。わしはアーレスバッハが必要であった。だからこの婚約によって契約の存続を望んだのだが、もう1つ、そちの娘ならばこのバカを何とかしてくれると思うた故だったのだが…思わぬ伏兵がおったわ。まさかこんな小娘に邪魔されるとは…」
「…残念です」
「……ダリウスよ」
「は、はい」
「貴様はその娘がそんなに大切か?」
「っ!はい何よりも大切です!私はミシェルの他に何も「わかった」」
「娘よ、ミシェルと言ったか、お前はこのダリウスをどう思っておるのだ?ああ、今さら無礼などとは言わぬ故正直に答えよ」
「は、はい陛下…私もあの、本当はダリウス様の事をお慕いしておりました。ローズマリー様には申し訳も「わかった」」
「宰相よ、貴様の思う通りになりそうだな…仕方ない。そちらを進めておけ」
「御意…」
「さて王太子ダリウスよ。貴様の望み通りアーレスバッハ公爵令嬢との婚約を破棄する事を認めてやろう」
「父上本当ですか⁉ありがとうございます!これでミ「そして新たに発布する事がある」」
「ダリウスよお前はそのミシェルという娘を伴侶にするのだな?」
「は、はいもちろんです!彼女以上に相応しい女性はいません!」
「ダリウス様!嬉しいです!本当に私をダリウス様の妻にして下さるのですね!ああ、ミシェルは世界一の幸せ者でございます!」
(やったー!やっとここまで来たわ。一時は反逆罪なんて言われて怖かったけど、これで私はダリウスとハッピーエンドが決まったわ!次は…そうね彼かしら)
「あの女との婚約が破棄された以上、何の憂いも無くミシェルを妻に出来ます。ミシェルの身分が低いのはどこかの高位貴族、そうだアーレスバッハ家以外の公爵家の養女とすればもん「その必要は無い」」
「は?それはどういう事ですか父上?さすがに男爵のままでは不味いのでは?」
「ベルナルドよ、今からわしが言う言葉を宰相としてしかと記録せよ」
「…かしこまりました。宰相として責任を持って記録致します」
「では…」
ーとある衣装部屋で ー
(ちょ、ちょっと何処を触ってますの⁉や、やめてっジル!ジルベルト!)
(あいつらの末路など、何の興味も無い。それよりも俺はローズに興味が尽きないんだ。ローズの全てを知りたいと思うのはいけない事か?)
(それは嬉しいですけれどっ!時と場所を考えて下さいませっ アッンンッ)
(そうか場所を変えれば良いのか?では今から俺の国に行こうか?)
(だから!【場所】の前に【時】と言いましたわよ!今はそれどころじゃ…あ、ほら、いよいよですわよ。陛下はどのような裁定を下すのかしらね?)
(チッ さっさとこの茶番の幕を引けよ!)
(ジル!)
(はいはい【お嬢様】の仰せの通りに)
ー謁見の間ー宣告
「では…我が息子ダリウスとアーレスバッハ公爵家令嬢ローズマリーとの婚約は正式に破棄された事を認める。そして新たにダリウスとアグーテ男爵家の娘ミシェルとの婚姻を認める」
「陛下、婚約では無く婚姻ですか?」
「そうだ。今ここでこの二人を夫婦とする。後ろの壁と同化しているバカ者の中に教会の者がおるらしいからの。婚約破棄の証人署名もしているのだ。婚姻の証人署名もしてもらえば良いではないか。宰相その者を前へ」
「…はい。ヘスティア教会教皇様御次男カール・クルージェ殿、こちらへどうぞ」
「え、えっ?ぼ、僕…私ですか?」
「お早く。貴方はこれから教会の神官として、ここでダリウス様とミシェル嬢の婚姻を承認して頂きます。正式な式は改めてお二人で教会に行って頂ければ良いでしょう。今は陛下の言う通りに」
「は、はい。ではお二人の署名が必要なので、略式ですが王家使用の羊皮紙に署名して頂ければ僕、私の承認でも大丈夫だと思います」
「そうか、だが今手元に羊皮紙は無い故、国王と宰相の署名があれば良いだろう。ベルナルド二人に適当な紙を渡して署名させよ」
「ち、父上良いのですか?そんなに急がなくとも婚姻の儀はまた改めてで良いのでは?」
「かまわぬ。早く署名せぬか!」
「は、はい。ミシェルもここに署名を。ミシェル、何だか慌ただしいが後日必ず盛大な式を挙げるから許してくれ」
「い、いえ私はダリウス様とこんなに早く結婚出来るなんて夢の様で……」
(おかしな空気ね。みんな何だかピリピリして…仕方ないか、公爵令嬢捨てて男爵家との婚姻だものね。まあ良いわ結婚してしまえば勝ちよ。いくらでも好きな事が出来るわ)
「…はい。全ての署名が揃いましたので、ヘスティア教神官カール・クルージェがお二人の結婚を認め祝福致します」
「成ったか」
「成りましたな」
「それでは宰相、もう1つの宣告を致す。『王太子ダリウスとミシェル・アグーテの婚姻をもって、ダリウスを廃嫡とする』以上だ」