八話 朝ちゅんから始める魔法少女生活
女の子同士のお泊り会はすごく魅力的だと思う。間違いない。アニメで見たもん。〇〇〇見たもん! というかいたもん!
実際あたしだって魔法少女になる前は「おんなのこ」どーしでお泊り会してたんだぞ☆
朝からこのテンションきついからやめるけど(ならやるなよ)、ちょっと状況をお伝えしたい。聞きたくなくても伝える。聞け。聞くんだ。
あたしは布団で寝ている。目はまだ開けてない。隣にはなんか人がいて、なんか荒い息遣いが聞こえる。
(どしたらいいんや……)
あたしがね、もっと人生経験豊富でね、処女じゃなくてね(さすがに中三で経験があるのはヤバい。てか経験済みとかどういうこと? 家庭教師とやったの?)色々知っていたらあれだけのね。同級生の女の子に(ガチレズ一丁入ります!)髪の匂いをかがれながら、あんまり膨らみがない胸元をまさぐるのは――まぁ、あれだよね。ヤバいよね。助けて! ○○え○ん!
「はぁ……はぁ……可憐ちゃん……」
\(^o^)/オワタwww←いやまだ始まってない←冷静にツッコミ入れるな←てへっ(∀`*ゞ)テヘッ
「っ……! ンッ!」
ウワー……ドシヨ……ヤバイヨー……顔文字使って茶番劇やってる場合じゃなくなってきた……
これは……あれだ。素直に起きよう。いや、現在進行形で起きてはいるんだけど、体面的には寝ているので。
「……澪?」
「あっ! か、か、かかかかかか可憐ちゃん!?」
はーい。かかかかかか可憐ちゃんでーす。澪さんのレズ行為にちょっとヤバみを感じたので起きてみましたー。
「おはよう。どうしてあたしの部屋にいるの?」
寝ていてどうしてあたしの部屋に澪がいるのかわからないー。まだ寝起きだしー。という感じで訊いてみる。
「お、起こしに来たんだよ?」
「そうなんだー」
「そうなのですっ」
「まだ外暗いけど?」
時計がないのでわからないけど、体感的には午前四時、五時といった時間である。華の中学三年生が起きる時間ではない。あっ、洟が――ティッシュ、ティッシュ(意味深ではない)
「わ、わわ私さ、朝は早く起きて勉強するのが習慣で――可憐ちゃんもどうかなーって……」
うん、結構苦しい言い訳。それなら前日のうちには言っておこうね。って話になる。
「うーん……あたしは眠いからいいや……」
「そっか……」
「うん、おやすみ……」
「おやすみ……」
目をつぶって寝息を立てる振りをする。しばらくして、澪の恐ろしく低い声が聞こえてきた。
「おかしいな……○フー知恵袋では寝てから五時間くらいが一番眠りが深いって聞いたんだけどな……回答者殺さないと、殺さないと、殺す殺す殺す殺す――」
ひぃいいいいいいいいい!!!!!!
そんなわけで可憐と澪の朝でした☆
九月四日水曜日。天気:灼熱。
こうして汗だくになりながら登校してると(あっ、隣には眠そうな澪がいるよ)魔法少女であることを忘れそうになる。というか、これ魔法少女ものなの? これ書き溜め分だからわからないけど、そろそろコメント欄荒れてるんじゃないの? 書籍化厳しいんじゃないの?
まぁ、そもそもあたしが主人公の時点で(メインヒロインは誰? お水博士?)書籍化無理だけど。だってイラストレーターさんにこんな肋骨浮き上がってる系女子描かせるわけにはいかないでしょ? マニアックなFA待ってるよ。あたし待ってる!
そんなわけで澪と他愛のない話をして(明朝のことは水に流した)学校について授業を聞き流し、放課後。あたしは久しぶりに魔法少女をやるために基地へやってきた。
「魔法少女になった。日本死ね」
「自分でなったのだろう……」
「それな」
お水博士は溜息をつく。
「国会が荒れそうな○行語大賞だな」
「へんっ! てかこれマジで○行語大賞選ばれたら誰が登壇するの? お金は魔法少女にこないの?」
「こないだろ……あの辺はあの辺とお金をぐるぐる回してるんだよ……」
「これがジャパンか……」
絶望しながら安っぽいソファに体を沈める。いや、あたし軽いからほとんど沈まないんだけど……とか、沈むほどソファが柔らかくない?
「で、今日は夕日が来るんだろ?」
「うん」
「魔法少女演武は勝てそうなのか?」
「それは練習次第でしょ?」
そう。ぶっちゃけ言うとあたしの今の実力では魔法少女演武の一次予選で勝ち上がれる可能性も三、四割。よくて五割といったところだ。
そして作戦を使うなら二次予選から。一次予選からゲス作戦をつかってしまうとインパクトが薄れる。となると、一次予選では実力で勝ち抜かなければならない。
一次予選は五十人の魔法少女の実力が均等になるようにリーグ分けされる。そしてあたしの序列は32位。仮に40位台から一桁台まで五人集まったリーグだとすると、勝ち上がるのはかなり厳しい。
なので、当面の目標は一次リーグで三勝できる実力を手に入れることだ。
「……まぁ、頑張れ……君が負けると私も終わりだ……」
「それな」
「危機感を持ってくれ……」
そんなわけで(どんなわけ?)基地にやってきた夕日先輩と練習を始めることになってます。
お水博士と意味のないやりとりをしながら(やりとりの語源は「槍取り」か「槍獲り」かどっち? みたいなくだらない話)をしいていると、夕日先輩がやってきた。
「おはようございます。ここは相変わらずですね」
「そうだな……といってもレイヴァテインが引退してからまだ半年だろう?」
「そうですね」
柔らかく微笑む夕日先輩は白のサマードレスも相まってとても大人っぽかった。これで高校一年生か……
「さて、可憐。魔法少女演武を戦い抜くために必要な戦法を教えるわ」
「……はい」
ぴりっと緊張感が走る。
「まず可憐に覚えてもらうのはフレア・バレッジよ」
「フレア・バレッジ?」
「簡単にいうと弾幕ね。可憐は前の魔法少女演武で中・長距離攻撃で負けたでしょ?」
「そうですね。近接に持ち込めませんでした」
私や夕日先輩は剣で戦う近距離攻撃型の魔法少女だ。近づかなければ攻撃もできない。
「だから、まず攻撃されないために弾幕を張るの。それじゃ、練習行こうか?」
ついに私の魔法少女としての戦いが始まる……!
あたしたちの戦いはこれからだ! ……てか、マジでこれからだな。この作品……