君の異世界転生に巻き込まれた件
オギャーオギャーと大きな声で泣く君は膨大な魔力を持って産まれました。
「ハァ……ハァ……あなた」
「よくやったぞエリザ! 体は大丈夫か?」
「私は大丈夫よ。それよりも赤ちゃんを見せてくださらない?」
お父さんは産婆から君を抱かせて貰い、君はお母さんに見せられました。
「あら。とっても可愛いわ。お母さんですよぉ。わかりまちゅかぁ?」
「お前も良く頑張ったな! お前の名前はミラだ! 分かるか? ミラ」
君の名前を呼ぶのはお父さんです。君はお父さんの言葉を理解していないでしょうけど君はお父さんの子供なんです。
君が産まれてから五年が経ちました。君は人の見ていない場所で魔法の勉強を始めます。君はとても才能に溢れていて、たまに人を小馬鹿にするように笑っているような子供でしたね。今では立派になって、言葉もきちんと話せるようになりました。
「お前はブリジスティン家を背負う逸材だ。魔法のセンスもある。お父さんは期待しているからな」
「はい。僕に任せて下さい。お父様」
君はすごく賢い子供です。お父さんの言う事をしっかり聞くし、聞き分けも良い。ワガママも言いません。
君は変わらず魔法の勉強をしていましたが魔力が暴走してしまいました。屋敷の庭を破壊してしまう程の威力です。
「お父様、お母様。ごめんなさい」
君は誰にも教わる事無く人に謝罪する事を知っているとても賢い子供です。
「勝手に魔法の練習をしていたのか? 誰に教わった?」
「お父様の書斎にあった本を読んで練習していました」
「なんだと?」
「あなた! この子は天才よ!」
お父様とお母様も君の才能に驚いています。これはすごく喜ばしい事だとはしゃぎ回る程でした。
君が七歳になった時、王女様のお披露目会という事でブリジスティン家もパーティーへ招かれました。ブリジスティン家は上級貴族でしたのでパーティーに招かれて当然です。
パーティーでは君と王女様が良い関係を築きましたが、ここで事件が起こりました。王女様が攫われたのです。
君は七歳にして魔法の実力と知略によって王女様を救い出します。この時から君は千年に一人の天才と呼ばれるようになります。
君は十歳になりました。この国では十歳から十六歳まで全寮制の学園に行かなければなりません。
君が入学するとき、お父様とお母様はすごく悲しそうな顔をしていましたが君は学園で楽しく過ごせるんじゃないかとワクワクしていました。
君が入学してから君よりも位が上の貴族の子から決闘を受けました。君は嫌々ながらもそれを受けて、圧倒的な力を見せつけます。それを見た女の子達からは憧れの目で男の子達からは妬まれてしまいます。
学園祭の決闘大会で君は優勝しました。この学園には君に勝てる人は教師も含めていないでしょう。
君は学園を卒業します。君は世界を見たいと思っていました。
「お父様。私は世界を見て、世界を知り、その知識を領地の為に使いたいのです。私が冒険者として世界を旅する事を許しては頂けないでしょうか」
「そういう事か。それならば行くが良い」
お父さんをなんとか説得して君は冒険者として旅に出る事を許されました。
君は冒険者ギルドへ登録に行きます。そこで酔っ払いに絡まれましたが、君は殺気のみで酔っ払いを撃退しました。
君は有名だったから偽名を使います。
「冒険者として登録したいんだが?」
「お名前は……」
「シンだ……」
君は表の世界ではミラと、冒険者の世界ではシンと名乗る事に決めます。
君は冒険者ギルドに登録してから数々の依頼を成功させSランクとなります。そんなある日、君が街を歩いていると奴隷市場を発見しました。
奴隷市場では色々な場所から攫われた人達が魔力封じの首輪を付けられていました。
君は覚悟を決めて奴隷市場を壊滅させようと動きます。見事奴隷市場を壊滅させた君は奴隷にされた人達を故郷へと帰す働きをしました。ですが一人だけ帰りたがらない獣人の少女がいました。
「どうしたんだ? お前は帰らないのか?」
「……ない」
「よく聞こえないんだが」
「あたしに帰る場所なんてない! 人間がパパやママを殺しちゃったから……」
少女の話によると、奴隷商人と関係のある盗賊団が少女の里を襲い、子供以外は全て殺されたと言います。少女の名前はクゥという名前です。
君は正義感が強かったので、クゥから家族を奪った盗賊団を壊滅させました。クゥには何やら特別な力があるようだと君は悟ります。
君とクゥは旅先のギルドでとある女性騎士と知り合います。女性騎士の家は没落した貴族でした。家が没落したことによって騎士職を奪われて冒険者として再出発を果たそうと奮起していました。冒険者は貴族を嫌いますので女性騎士が誰もパーティを組んでくれないと嘆いていました。
「俺と一緒に旅をしないか?」
「良いのか?」
「もちろんさ」
君の誘いに女性騎士が乗ります。女性騎士の名前はアイラという名前でした。
君とクゥとアイラは旅を続けます。旅先で困っていたハーフエルフの女の子を見つけました。女の子は言います。
「私はハーフエルフなの。エルフの里でも嫌われて、今は人攫いから逃げている途中なの」
君は決意をしました。差別の無い平和な世界を作るんだと。
「俺と一緒に来ないか?」
「私はハーフエルフなの。それでもいいの?」
「もちろんさ」
君は笑顔でハーフエルフの女の子をパーティに加えました。ハーフエルフの女の子の名前はアルルと言うようです。
君は旅先で困った人を見つけては助けていきました。魔物に襲われる村。詐欺にあった商人。色んな人を助けました。
そんなある日、君は不吉な噂を聞きます。
故郷の国が魔族に襲われているそうなのです。君は覚えたばかりの転移魔法を使って故郷の国へと帰りました。
故郷の国へ帰った君は愕然とします。お城が火の海になっているのです。
君はすぐにお城へ向かいますが駆け付けるのが遅れ、城が陥落してしまいます。王女様だけは助ける事は出来ましたが、国の王族を含め、君のお父さんやお母さん。親しかった人まで死んでいました。
君は王女様に言います。
「君には力が無い。俺が守るからついて来いよ」
「私は……私はどうしようもできません」
「俺が君を守るよ」
君は王女様と夜を共にしました。それを知った他のパーティメンバー達は王女様に嫉妬し君はクゥ、アイラ、アルルを慰めました。
君は城で殺した魔族から魔王の存在を知ります。
「復活していたのか……」
君は打倒魔族。いや打倒魔王を目指しました。
君とそのパーティメンバは魔族領への侵入を果たしました。魔族領は瘴気に満ち溢れていましたが、クゥの不思議な力によって君達は瘴気から守られます。
魔族領で多くの強敵を打ち倒し魔王の元へと辿り着いた君達は全員の力を合わせて魔王を打ち破りました。
「これで世界が平和になるのね」
王女様が言いますが君は良い顔をしていませんでした。
「俺はもう一人始末しなければならない奴がいる」
君はそう言うと体内に魔力を集めはじめました。君の魔力は凝縮されていきます。
「くそ……厄介な奴だ」
君は額に大粒の汗をかいています。君は強い力を持っています。その力に溺れる事も無く君は世界の為に生きて来ました。
『君が君であるように君の中にいる君を殺すのかい? 君には君の中にいる君は邪魔だと思う。君が殺すと言うのなら君に変わって言ってあげるよ。君に全てを奪われた僕を消そうとするなんて酷い奴だな』
こうして僕は君に殺されてしまいました。