昔々あるところに_009
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
モグさんは黒猫堂という骨董品屋で、とある薬をみかけました。
透明な小瓶に入っており、一見すると塩のようでした。
<蛇口に振りかけると、水道からどんどんお金が出てくる魔法の薬(本物)>
とありました。
モグさんはそれを見たとたん、電撃に打たれたように飛びつきました。
カウンターに持って行って
「この、蛇口に振りかけると、水道からどんどんお金が出てくる魔法の薬(本物)というのは本当ですか?」
と店主に聞きました。
店主は黒猫でした。
「本当ダニャ、お金がどんどん出てくるニャ」黒猫は小瓶を手にしてそう言いました。
「出てくるのは本物のお金ですか?」
「本物だニャ。日本銀行の発行する貨幣と同じだニャ」黒猫はそう言いました。
「売ってください。買います」
もぐさんは10万円出してその薬を手に入れました。
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家に持って帰って流しの水道蛇口にぱらぱらと振りかけました。
すると蛇口はぶるぶる、ぶるぶると震えて……
にゅうううううううう
と曲がった何かが出てきました。
ぽとん。ちゃりん。それは、流しの底で開きました。
500円玉でした。本物でした。
次に
ぱさぱさぱさぱさ
と折りたたまれた何かが出てきました。
ぽとん。ぱさっ。
それは流しの底で広がりました。
一万円札でした。本物でした。
そのようにして次から次へと、コインやお札が出てきました。
モグさんは大喜びしました。
翌月の水道代の請求書に
【特別請求/現金支給額/123万、5千5百円】
と書いてありました。
ああああああああああああああああああああああああああああああああ