第一話:それは突然に
俺は実家からかなり離れた場所にある高校に合格した。別に目的の学科があるのではなくただ地元から離れたかっただけなのかもしれない。
3月半ば。卒業式も終え俺は入学と同時に高校近くの小さな家で暮らすことになった。
高校近くに住んでいた親戚が数年転勤するので住んでいた家が空き家になるとの事。
家を売るのも勿体ないので住まわせてもらうことになった。
一応家電系は残してあるらしい。と言ってもその他の家具はほとんどないので買いなおさなければ。
そしてその家で一緒に暮らす予定のホームメイトも居る。
母親の友人の子がアパートを探していると聞いてその小さな家でルームメイトになる案が出たらし。
なんでも俺と同級生になるらしい。しかも相手の苗字も同じ春野。俺は「一人よりはいいだろう」と言って了解した。正直知らない地方で一人暮らしが不安だったのである。
しかし小さい家とはいえさすがに一軒家は広い。大人しい子だと聞いているがまだあったことがない。お互い同じ中学出身者が居ないのでもちろん高校には知り合いは居ない。その子と知り合うのは入学式の前日である。今から楽しみだ。
入学式の二日前、俺はこれから住む家に来ていた。すでに必要な家具などは運ばれていた。引越しも終わり近所の店などを覚えておこうと受験で一度来ただけの町を一人歩いていた。一通り必要なお店などの場所を覚え、後はホームメイトと入学式を待つだけだ。
そして入学式前日の午前、相手が来るのを待っていた。
静かに時間が流れていく。
「暇だし出かけるかな」
一応ルームメイトも合鍵を持っているらしいので俺は鍵をかけて家を出た。
近くのコンビニで飲み物とお菓子を買って帰っている時、家から数百メートルほどの場所で一人の少女と出会った。たぶん中学生だろう背は小さいが髪は長く肌が白い可愛い子だ。
すると少女は俺を見つけるなり声をかけてきた。
「あの、すみません」
「なに?」
「3丁目に行きたいのですがここが何丁目かもわからなくて」
「ここは2丁目で3丁目はすぐそこ。俺も今からそっち行くから案内するよ」
「ありがとうございます」
俺は少女と3丁目を目指して歩いた。といってすぐそこなので3分もかからない。
「ここ来るの初めて?」
「まだ3回来たくらいです。今度この近くで暮らすので」
「俺は今年から高校通うんだ。そんで今月から3丁目に住んでいる。まぁ地理覚えるのは得意だからすぐ覚えたけどな」
「偶然ですね」
「なにが?」
「私も今度から高校に通うんです」
「ってことは同級生か」
「そうなんですか。同じ高校かもしれませんね」
「そうだな」
話しているうちに俺は家に着いた。
「ここから向こうの信号あたりまでが3丁目だから」
「ありがとうございました」
少女は軽くお辞儀をした。
「いえいえ」
「あの……」
少女は何か不安そうな顔をした。
「なに?」
「春野さんと言う方の家知ってます? メモを無くしてしまったみたいで……」
「春野はここだけど?」
「ここにケイさんという人居ます?」
「俺が春野啓だけど?」
「えっ? もしかしてこの人が?」
少女はなにやら小言を言っていた。
「もしかして君、春野って苗字じゃ……?」
「あっはい、私の名前は春野茜って言います」
「!?」
俺は携帯電話を出すとすぐに母に電話をした。
「もしもし!?」
「あら啓、そんなに慌ててどうしたの?」
「俺のルームメイトって女子なのか!?」
「言ってなかった?」
「聞いてねぇよ!」
「言ったと思ってたわ」
電話の向こうで母が笑っていた。こっちはそれどことじゃないというのにあの人は……。
「ともかくあの子どうすんだ?」
「その子の親、今海外だから一年は一緒にすごしてね」
「一年って……」
「それじゃー」
「ちょっと!」
通話は切れてしまった。再び電話しようと思ったがそんな気力は無い。
「えーっと春野さん」
「茜でいいですよ。苗字同じですし」
「じゃぁ茜」
「はい、なんですか?」
「これでいいのか? アパート探すとかあるだろ?」
「しかたがないですよ。この高校1年生はアルバイト禁止ですし」
「……だよな」
もうなるようになれだ。
俺は茜を家に入れ部屋の場所などを説明した。俺と同じく部屋は2階だ。
その後、引越し業者が来て次々茜の部屋に家具や服などが入ってるだろうダンボールを持っていった。
その間俺は部屋に篭っていた。いても邪魔になるだろうし女の子の荷物整理を手伝うのはちょっと恥ずかしかったからだ。
引越しの荷物も終わった午後、お互い自分お部屋で静かに過ごしていた。
これからどうすればいいのか考えているうちに俺は寝てしまったみたいだ。
“こんこん”
部屋のドアをノックする音で目が覚めた。
夕日に照らされてる部屋が目に入った。
俺は起き上がりドアを開けた。
「なに?」
「あの、夕飯の買い物のをしようかと思うんだけど」
「もうそんな時間か。つうか俺昼食べてなかった……」
「それで啓君にも買い物に付いて来て欲しいんですが」
「俺が?」
「私、この辺り分からないので」
「今日来たばっかりだしな。わかったよ」
携帯電話と財布をポケットに入れ家を出た。
道中一言も話さずアパートから10分ほどのところにあるスーパーに着いた。ここは一階に食品売り場があり2階には服屋靴が売っている。
店内の食品売り場に着いたとき初めて茜が口を開いた。
「夕ご飯は何がいいですか?」
「俺は何でもいい……っていうか一緒に食うのか?」
「ルームメイトですし」
なんだこの状況は……
掲示板に書いたら絶対叩かれる状況だ。
茜は買い物カゴに次々商品を入れていった。
また無言が続いた。
この状況はやっぱり耐えられない。
「お、俺ちょっと他のところ行ってくるわ」
「はい」
きっと俺はこの状況から逃げ出したかったのだ。
適当な口実で茜のもとから離れた。
別に嫌なわけじゃないんだかなんか心の底から出てくるようなこの気持ちに耐えられなかっただけというか……
本屋で時間を潰して茜のもとへ戻った。
ちょうどレジで精算し終わった物を袋に入れているところだった。
「すまん遅くなった。袋持つよ」
「ありがとう」
俺は食品の入った買い物袋を持って店を出た。
辺りはすでに暗くなっていて街灯には明かりが灯っていた。
また無言は耐える自身はない。何か話さないと……
「あ、明日何時に学校だっけ?」
「8時半には学校の教室に居ないとですよ」
「8時半か……じゃぁ7時半には出たほうが良いな」
「そうですね」
はい、話し終了ー。
他に何か話題は無いのか?なにかなにか……
頭の中で話題を考えている間に家に着いてしまった。
鍵を開けて家に入った。
台所&リビングがある部屋に入ると茜は袋から食品を出し冷蔵庫に入れていった。
その間俺はというとそれをリビングにあるソファーに座って見てるだけだった。
「なにか手伝おうか?」
「じゃぁ食器並べてください そこの棚にしまってあるので」
「お、おう」
「今日はちょっと簡単なのですみません」
そう言って茜はフライパンに入ったパスタをお皿に盛りつけた。その上から鍋に入っているミートソースをかけて完成。
「食べましょう」
「そうだな」
『いただきます』
俺はスパゲティをフォークで食べた。口に入れた瞬間何かに気がついた。
「美味い!」
ただの市販ソースじゃなく何か加えた感じがした。
「このソースに何か入れたのか?」
「少しトマトケチャップを入れました。そうすると美味しいので」
あっという間に晩御飯を食べ終わった。
「お皿洗っちゃいますね」
「それくらい俺がやるよ。晩御飯作ってくれたし」
「そうですか? じゃぁ私はお先にお風呂入らせてもらいますね」
「ほい」
茜はリビングを出て2階に上がった。
「さっそく洗いますかな」
俺はすぐに洗い物を済まして部屋に戻った。
部屋で明日の準備をしているとドアをノックして茜が入ってきた。
「お風呂あがりました~」
パジャマ姿の茜を見て一瞬ドキッとした自分を誰か殴ってほしい。
「お、おう」
俺はすぐに風呂に入り明日は入学式だから早めに寝た。




