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夜と夜の間・2
しばらく、沈黙が続いた。物語の中にいたときの熱さが、ゆっくりと冷めていった。本当に、夢を見ていたかの様だった。
パチパチと、もう、小さくなってしまった焚き火が爆ぜる小さな音が、その場に響く。
満天の星のした、旅芸人の少年は、ふと夜空を仰ぐ。それにつられて、何人かが空を見た。
少しだけ欠けている月。
「あと一日で、満月――」
そして、視線オレたちに戻して、音楽をやめた。
「今宵はもう遅い。皆様方、今宵はこれにて終わりにしましょう」
その旅芸人の少年は、立ち上がった。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇
満月の夜――
その物語は、最後の始まりを迎える。
「囚われし姫君 フィアナ
至上の歌い手 リッシュ
無垢なる幼子 アーサー
闇の申し子 カンサ
カンサの手を逃れた精霊の聖地を リッシュとアーサーは旅立つ――」
物語が、オレらを呑みこむ。