夜と夜の間
不意に音が止んだ。
ハッとして、オレは旅芸人を見る。
物語に引き込まれて、夢を見ていたかのようだ。彼の声は、物語を本物のように感じさせてしまう。本当に、その場で見てきたかのような気分だった。
「―――もう、月がこんなに高い」
その凛と澄んだ声は、物語の続きを思わせて、実はそうではないことを気づかせた。
「今宵は、これでお開きにしようか。皆さんの睡眠を邪魔しすぎるのは良くないしね」
歳相応の子供らしくそう言って、彼は立ち上がった。
「明日、同じ位の時間にまたここでお会いしましょう」
物語に出てきた旅芸人を思わせる仕草で、彼はお辞儀をした。それとも、物語の中の旅芸人たちが、彼に似ているのだろうか? それは、俺にはわからない。
次の夜を待とう。
オレは、明日が楽しみで仕方が無くなった。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇
再び夜が訪れた。
焚き火の爆ぜる音、人々の呼吸、虫達の声。昨日と同じく、その場所には、村人全員と、旅芸人の少年が集っていた。
弦を調節しながら、そのまま音楽へ入る。
昨日も聞いたはずなのに、その音は新鮮な気持ちにしてくれた。
「さて、昨日のあらましを少しお話させていただきましょう。
遥か遠くの国の建国祭 鍛冶屋の少年 世界を支配し得る力を持つ少女
二人は再会し 言葉を交わす
少年の名はアーサー 少女の名はフィアナ
フィアナは未来を視て その待ち受ける闇に恐れおののく
アーサーは旅芸人の少年 リッシュと出会い 友となる
祭は無事に始まり 運命の歯車は回り始めた――」
オレは、夢を見るかのように、その物語に引き込まれていった。