№3
クリスと双子は一緒にベッドの上で丸まって寝ていた。
「クリス兄、今日は楽しかったね」と、玲がこそこそ話をするように喋ってきた。
「ああ、そうだね」
……あのベイビードールって奴は気に食わない。
「私たち、いつ元の世界に帰れるの?」
不安そうな顔でクリスを見つめる。
「明日には帰れるよ」
そんな保証はどこにもないけど……。
「でも俺、ここにずっと居てもいい気がする」と鈴が言った。
「スノーもコレスティーノって奴もおもしろいし、ベイビードールは趣味悪いけど嫌いじゃないな」
すると玲は「私も。ここに居ると幸せな気持ちになっていくわ」と笑う。
クリスは黙って双子の頭を撫でた。
その時。
「こんにちわ~」
「きゃあっ!!」
不気味な男の声に玲がびっくりして叫んだ。
クリスは暗闇の中、見事その男をとっ捕まえ、一発お見舞いしてやった。すると、男はうめき声を上げてその場に倒れ込む。
「痛っ!!何するんだよ、俺たち友達じゃないのか!!」
「その声は……コレスティーノ?」
クリスは殴ったことを詫びもせず、怖がる双子たちを背中に隠した。
「ここで何してんだ?」
コレスティーノに気付いた鈴が尋ねた。
「えっ? コレスティーノ?」
玲もコレスティーノと判り、おずおずとクリスの後ろから顔を出す。
「よっ、双子ちゃん。―――鼻血、出てるんだけど」
「まったく。こんな夜中になんだい?」クリスが呆れた口調で聞く。
「いや。でも、俺、あの時食堂にいなかったから……顔が見たいなと思って」
ああ、そういえばいなかったな。クリスはこの時初めて気付いた。
「じゃっ、明日海で遊ぼうな」
「海があるの!?」
玲と鈴が興味津々に聞いた。目が輝いている。二人は海というものを見たことがないのだ。
「ああ、とても綺麗だよ。ダイヤモンドの砂浜だ」
「ダイヤモンドの砂浜?」
「そうだよ。じゃ、明日。うきわを忘れんなよ」
コレスティーノは帰りざまにウィンクした。
「なっ……!! うきわ無しでも泳げるよっ!!」
鈴が抗議した。
「本当かぁ~? 溺れても助けてやらないぞ?」
コレスティーノはにやにやと笑って言う。すると、玲が胸を張って宣言した。
「大丈夫よ。もしそうなった時は、私が助けるから」
「玲……」
鈴は項垂れる。普通はそれを言う立場が逆だろう、と思った。
そんなやりとりを見て、明日も忙しくなりそうだとクリスは大きなため息をついた―――。